新世紀エヴァンゲリオン-if- 他所投稿作品集 壱

 カヲルのカタチ シトのカタチ

 - Bパート -


 うるさーーーい!!! 人の病室で何ゴチャ
 ゴチャ騒いでるのよ!!」

 「あ、ご、ごめんよアスカ! ……え? アスカ気が付いたの? 僕が分かるの?」

 「これだけ大声で部屋ん中でケンカされちゃ、ゆっくり寝てらんないわよ。
 ……それより、誰よあんた。見ない顔ね」

 「やあ、これは失礼、自己紹介が遅れたね。僕はフィフスチルドレン、渚カヲル。
 シンジ君のパートナーとなる者さ」

 『メシッ!』

 レイの肘が見事にカヲルの頬に入っていた。

 「痛たたた。つまり、君の代わりに弐号機に乗るって訳さ」

 「何ですって!? 弐号機は私のよ! あんたみたいな変態になんか触らせない
 わ!」

 「何を言ってるんだい。君は弐号機とシンクロできなくなったから僕が来たんじゃ
 ないか。つまり、君はもう『用無し』って事さ」

 「用無し…………私が…………」

 「カヲル君! 今のは言い過ぎだよ! アスカが可哀相だよ。アスカは今ちょっと
 調子が悪いだけだよ。すぐに前のように動かせるようになるよ! ね、アスカ」

 「シンジ……」

 「シンジ君、君は本当に優しいんだね。好意に値するよ。好きって事さ」

 「うるさい! この変態! 洋梨だかメロンだかスウィーティーだか知らないけど、
 弐号機は私のよ! それとシンジは私のもんなんだから触らないで!」

 「えっ!? アスカ……」

 「…………」

 「やれやれ。君もシンジ君の事が好きなのかい? もてるね、シンジ君は。さすがは
 僕が好きになった人だ」

 「ばっ、ばか言わないでよ! わ、私はただ、同居人のシンジが変態になったら家を
 追い出さなきゃいけないでしょ。そ、そしたら誰が私のご飯作るのよ? だから、
 あんたにシンジを変態にされたら困るのよ」

 「なるほど、それはつまり『シンジ君へのプロポーズ』って事だね」

 「な、な、な、何でそうなるのよ!!」

 アスカは怒っているのか恥ずかしいのか、真っ赤になっていた。

 「だってそうだろ? 『自分のご飯をずっと作ってくれ』と言うのは、プロポーズの
 中でも比較的メジャーな方だと思うよ。もっとも、普通は男が女に対して使うんだ
 けどね」

 「う~~~~~~」

 「アスカ、だめよ。碇君は私のよ。だって、碇君は私の裸を見て、胸を触ったのよ。
 二人はもう結婚するしかないの

 「あんたいつの時代の人間よ? それに、どうせ事故でしょ。シンジにそんな度胸
 なんか、ある訳ないもの」

 恐るべきアスカの洞察力。きっちり見破っている。

 「その点、私達はお互いの同意の上でキスしたのよ。私の方が勝って
 るわ。どう、ファースト。参ったかしら? ほほほほほ!

 アスカは勝ち誇ったように笑った。

 「どうせアスカが、碇君が逃げられないように追い込んだんでしょ?」

 「うっ!」

 レイも負けてはいない。なかなか鋭いツッコミだ。

 「ああっ! 何て事だ! シンジ君が既に別々の女性とそんな関係になっていた
 なんて……。このままでは、いずれどちらかの毒牙にかかってしまう。よーし、
 その前に僕がシンジ君をもらおう。さあ、シンジ君。ちょうどここにはベッドも
 ある事だし、僕と、ひと……」

 『バキッ!!!』×2

 アスカとレイのストレートが、絶妙なタイミングでカヲルの左右の頬を貫いた。
 カヲルは、二つの拳に挟まるようにして崩れ落ちていった。

 「あら、ファースト。やるわね」

 「アスカこそ」

 「じゃあファースト、その変態、どこかに捨ててきて」

 「ええ。じゃあ碇君、行きましょ」

 「ちょっと待った! シンジは置いていきなさい」

 「……どうして?」

 「だって、シンジは『私のお見舞い』に来たのよ。気を利か
 せて二人っきりにしなさいよ」

 「そうはいかないね」

 「ゲッ!? もう復活した」

 「……変態な上に、化け物だったのね」

 その指摘は、あながち間違ってはいない……。


 一方、四人が騒いでいる時、ゼーレは大騒ぎになっていた。

 「えーい! なぜタブリスはセントラルドグマに侵入しない!? そのためのエサも
 用意したというのに……」

 「まさか、アダムが偽物だと勘づいたのではあるまいな」

 「タブリスが消滅する事で、我等の計画が発動するのがばれたのでは?」

 「いや、それはあるまい。我等の計画は完璧なはずだ」

 「では、なぜ奴はセントラルドグマに向かわん? これまでの使徒は皆、そこに
 アダムがあると思って集まったではないか」

 「うーん……。気まぐれな奴だったからな。何か面白いものでも見つけたのかも
 知れん」

 「バカな!? 使徒にとってアダムより大事な物など、あるはずがない」

 「分からんぞ。所詮、我々人間には、使徒の考える事など理解できんのだからな」

 「左様。奴が何を考えてるかなど、我々には分からんよ」

 「ん? ……諸君、今、ネルフに潜入させている者から連絡が入った」

 「それで、タブリスは今何を?」

 「…………サードチルドレンを巡って、ファーストチルドレン、セカンド
 チルドレンと痴話ゲンカをしているそうだ」

 「…………どういう事だ? 確かサードチルドレンはだと思ったのだが」

 「ああ、サードチルドレンは碇の息子だ」

 「すると、これは碇の嫌がらせか?」

 「あの男は最近、我等に楯突いてばかりだな」

 「左様。何を考えているのか、さっぱり分からん」

 「まぁ待て。碇はタブリスの事は知らないはずだ。この件に関しては、碇の仕業
 とは思えん」

 「では、タブリスの意思だと?」

 「…………そうなるな」

 「あいつは、そういう所があったからな」

 「ああ。怪しいとは思っていたが……」

 「しかし、どうするのだ? あいつを消さない限り、我等の計画は……」

 「だが、あいつが使徒として動かん限り、エヴァとの戦いはない」

 「ならば、我等の手の者を使って消せばどうだ?」

 「馬鹿な! いくら人間の姿をしているとはいっても、奴は使徒だぞ。エヴァ以外
 での消滅はあり得ん」

 「それでは、我々には何も出来んと言う事か」

 「どうするのだ……このままでは……」

 「我々の計画が……」

 「だからこうして議論しているのだ。我々にはもう時間が無いのだ」

 ゼーレがこうして大騒ぎをしている時、ゲンドウも焦っていた。

 「ぬう! 最後の使徒はまだ来んのか!? それを消さぬ限り、私の望みが……。
 一体、どこで遊んでいるんだ最後の使徒は!?」

 さすがのゲンドウも、まさか最後の使徒が自分の息子に言い寄っているとは、知る
 はずもなかった。


 「さぁシンジ君。二人で愛の世界へ旅立とう……」

 「変態は引っ込んでなさい。シンジ、私とキスしたのを忘れた訳じゃないでしょう
 ね?」

 「碇君。私が一番、碇君の事が好きなの。分かってくれるわよね?」

 「さぁ、シンジ君……」

 「シンジ……」

 「碇君……」

 『ああっ僕はどうすれば! どうすればいいんだ!? こんな事、今までなかった
 し、僕がこんなにもてるなんて思わなかったし……ど、どうすれば……』

 シンジの頭の中は、すっかりパニックになっていた……。

 ・
 ・
 ・

 ハッ!

 「……知らない天井だ」


 えっ、ひょっとしてこれは……ま、まさか夢オチ!?


 <つづく>


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