新世紀エヴァンゲリオン-if- 他所投稿作品集 壱

 カヲルのカタチ シトのカタチ

 - Aパート -


 「やぁシンジ君、こんな所にいたんだね」

 「え? カヲル君。どうしてここに?」

 「君に会うためさ」

 「僕に?」

 「そう。今、シンジ君の心は悲しみに満ち溢れている。今にも魂が自分の殻の中に
 閉じこもってしまいそうだよ。だから、僕はシンジ君の魂を開放してあげようと
 思ってね」

 「魂の……開放?」

 「そう、魂の開放さ。でも、難しく考える事はないんだよ。シンジ君は体の力を
 抜いて、僕に全てを任せればいい。そうすれば……」

 ガシャン!!

 カヲルの言葉は、最後まで聞くことなく打ち消されてしまった。

 カヲルは前のめりに倒れている。カヲルの周りには、割れた花ビンのかけらが散乱
 していた。どうやら、カヲルの後頭部に花ビンが直撃したようである。

 「カ、カヲル君! 一体どうしてこんな物が……あ、綾波!?」

 「やれやれ……。痛いじゃないか、いきなり花ビンをぶつけるなんて。乱暴な挨拶
 だね、綾波レイ君」

 カヲルは後頭部に付いた花ビンのかけらを払いながらも、余裕の表情でレイを見て
 いる。

 「碇君に変な事しないで、変態

 「僕は変態じゃないよ。ただ、シンジ君の魂を開放してあげたくてね」

 「余計なお世話よ、変態。碇君は私が守るの。だから、変態は近づかないで」

 「……おかしいな。君は確か記憶をなくしてるんじゃなかったのかい?」

 『そ、そう言えば綾波は僕の事を知らないって言ってたのに、どうしたんだろう
 急に……』

 「思い出したのよ」

 「随分とあっさりと思い出すんだね」

 の力よ」

 『え? 綾波が僕の事を? ……でもなんか今までの綾波と違うような気がするな。
 いきなり後頭部に花ビンだもんな。なんか随分行動的になってるような……』

 愛する人を変態の手から救うため、レイは強気になっていた。

 「なるほど。やはり君は僕と同じだね。シンジ君の事が好きなんだね」

 「そうよ。私は碇君が好き。だけど、あなたと違って変態じゃないわ」

 「君もしつこいね。僕は変態じゃないよ」

 「男が男を好きになるのは変態でしょ。だけど、私は女、碇君は男。何も問題は
 無いわ」

 「ふっ……。些細な事さ。男と女は等価値なんだ、僕にとってはね。それに、男と
 女の間には超えられない溝があるけど、男同士には何も無いんだよ。真に男の事を
 知りえるのは、やはり男だけなんだよ。そうは思わないかい? シンジ君」

 「え? い、いや。いきなりそんな事を言われても、何て言ったらいいか……」

 「ふふふ。すぐに分かるよ」

 バキッ!!

 「痛いじゃないか」

 「碇君の手を触らないで」

 「何だい、やきもちかい? でももう遅いんだよ。僕とシンジ君は、裸で一緒に風呂
 に入ったんだよ」

 「男同士なら当たり前でしょ」

 「それだけじゃないよ。そこで手を握ったんだ。そして……」

 「そして?」

 「残念ながら時間が来てしまったので、それまでさ」

 「そう。良かった」

 「だけど、その後、僕の部屋で二人っきりで……」

 「二人っきりで?」

 「話をしたのさ」

 「良かった。碇君は、まだまともなのね」

 「時間の問題さ。シンジ君はもうすぐ僕のものさ」

 「あなたには渡さない」

 「それじゃあ、僕と君で、どちらがシンジ君を自分のものにするか、勝負だね。
 君のその華奢な身体で、シンジ君を繋ぎ止めておけるのかな?」

 「私は華奢じゃないわ。碇君は私の身体を見て、胸を触ったから、私の身体は華奢
 じゃないって知ってるわ」

 「あ、綾波。な、何言ってんだよ。あれは……その……ぐ、偶然だし……その……」

 「へー。これは驚いたな。君達はそこまで進んでいたのかい。少々意外だったね。
 仕方ない、二人がこれ以上進まないうちに、シンジ君を貰うとするよ」

 「あげない」

 「…………どうやら、決着をつけるしかないようだね」

 「そのようね」

 そう言って、二人の間に火花が散った。

 「ちょ、ちょっと止めてよ! こんな所で喧嘩なんて」

 「シンジ君、危ないから少し離れててくれないかい。この戦いには、君と僕の未来
 が懸かってるんだ」

 「碇君、少し離れてて。この変態を倒さない限り、碇君と私の明るい未来は来ない
 の」

 「だ、だから、喧嘩は止めようよ。お願いだから、僕の話を聞いてよ……」

 しかし、二人ともシンジの話を聞かず、まさに一触即発の状態だった。
 二人の激突は、今まさに始まろうとしていた。
 シンジはただ、オロオロと二人を止めようとするが、全く効果が無かった。

 と、その時!

 うるさーーーい!!!
 人の病室で何ゴチャゴチャ騒いでるのよ!!」


 アスカ、長い眠りから目覚める。


 <つづく>


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