新世紀エヴァンゲリオン-if-

 第十八部 Fパート


 「……あぁそうだ。すまんな、よろしく頼む」 ガチャ

 「どうだ?」

 「ああ、何とか上の騒ぎは治まったようだ」

 「そうか」

 「しかし……エヴァのパイロットであった事を公表すると大騒ぎになるのはアスカ
 の時に経験済だが……それが一度に二人となるとここまで騒ぎになるとはな……
 まぁ、三人一緒に暮らしている事の方が同級生には影響が大きかったようだがな。
 シンジ君もレイやアスカも随分と人気があるようだからな」

 「問題無い。いつかばれる事なら早い方が良い。周りの人々に認めてもらっている
 方が暮らしやすいからな。彼女の爆発がこの程度で済んだのなら安いものだ」

 「安いもの……か。まぁシンジ君達への直接的な被害は無いが……上の街、相当
 被害が出てるぞ。どうする気だ? ネルフの予算を使うのか?」

 「彼等はネルフ職員候補だからな、これ位の元気がある方が良いのだが……自らの
 行動の責任を取れんようではいかんからな。処分しない代わりに全員で割り勘、及び
 復旧活動の肉体労働をさせる事としよう」

 「そうだな、あれだけの事をやったのだから逮捕されてもおかしくはない。それ位は
 納得するだろうな。少なくともシンジ君達を逆恨みはせんだろう」

 「ああ、あれだけ暴れたんだ。胸の中もすっきりしただろう。シンジ達の明日からの
 学生生活も問題無かろう」

 冬月にしか分からない程だが、ゲンドウは微笑んでいるようだった。



 一方、少し時間を戻してシンジ達はというと……アスカの車の中にいた。

 「はぁ~。ところでアスカ、仕事の方はいいの? 怒られるんじゃないの?」

 「ああ、いいの。もうそろそろ辞めようと思ってた所だし、ちょうど良いきっかけに
 なったわ」

 「え? モデル辞めるの?」

 「どうして? アスカ楽しそうにしてたじゃない」

 「確かに楽しいわよ。でもね、それ以上に……ちょっと孤独なのよね。やっぱり
 シンジから離れてちゃダメね。それが良く分かったわ」

 「それでこれからどうするの?」

 「もっちろん、私もシンジやレイと同じ、大学生する事にするわ」

 「え? 大学生?」

 「そ、特例でテスト受けさせてもらったの。もちろん全科目満点よ。おまけに私は
 十四歳でドイツの大学を卒業した天才よ。こんな優秀な人材が入学してやるって
 言ってるのに断るようなバカな大学は無いわよ。ほんとはシンジとレイが大学院に
 進む時に一緒に入学しようと思ってたんだけど、明日から私も通う事にするわ。
 残念ね、レイ。これで明日からシンジと二人だけの時間は持てなくなるわよ」

 「別に構わないわ。アスカがいても碇くんと私のは変わらないもの」

 「……言うようになったわね」

 「間違いなくアスカの影響だね」

 「う~ん、否定できない……。ま、それはともかく、レイ、あんた確か第一回
 ミス第三大だったわよね」

 「ええ」

 「どんな事したの? やっぱり水着審査とか歌とかもあったの?」

 「どうしてそんな事聞くの?」

 「そりゃあ入学する以上、ミスを狙うのは女として当然じゃない。そう簡単にレイに
 二連覇はさせないわよ。何たって今回は世界一のスーパーモデルの私がいるんだ
 から。で、参考までにどんな事したのか知りたいわけよ。ね、教えてくれるんで
 しょ?」

 「私知らない」

 「へ? 知らないって何が?」

 「どういう基準で選ばれたのか知らないの。知らないうちになってたもの」

 「え? だってミスになったんでしょ……。シンジ、どういう事なの?」

 「それがね、アスカの言うように水着審査とか歌とか色々あったみたいなんだけど
 綾波はどれも参加してないんだよ」

 「は? 何で?」

 「だって海でもないのにどうして水着になる必要があるの? それに、碇くん以外の
 人にどう思われても私には関係の無い事だから、私は何もしてないわ。勝手に受賞者
 にされてたし……」

 「……何でそれでミスになれたの?」

 「さぁ?」

 「シンジ、どういう事なの?」

 「何だか、その奥ゆかしい所がますますいいとかで、更に人気が出たらしいんだ」

 「……ま、確かに男達の人気を取るためにハデで下品な水着を着るようなやつ
 ばかりだと、レイみたいなのが新鮮に映るのも無理ないわね。じゃあレイ、二連覇
 には特にこだわってないのね?」

 「ええ」

 「レイにその気が無いんじゃ張り合い無いけど、これで第二回ミス第三大には私が
 選ばれる事は決まったようなものね。いいんでしょレイ? 次のミス私が獲っても」

 「ええ、別に構わないわ。私は一度もらってるし。次はアスカがもらえばいい。
 それに……」

 「ん? それに?」

 「次のコンテストまでに……私……ミスじゃなくなってるかも知れない
 し……。、碇くん」 ぽっ

 「いや……その……ね、と言われても……」

 「……更に言うようになったわね」

 「アスカの影響だね……」

 「ま、いいわ。ところで、シンジやレイも大学院に進むんでしょ。その後どうする
 気?」

 「え、その後?」

 「だから、その後どういう仕事に就くかって事よ」

 「私は碇くんのお嫁さん

 「いーからあんたは黙ってなさい!!」

 「え、えーと仕事か……特に何も考えてないな……。ずっとネルフでパイロット
 してるのかな……」

 「私もそうかな……」

 「でも、今だってそんなに毎日ネルフに通ってるわけじゃないし、やっぱり何か仕事
 はしなきゃダメよ。私だって仕事する時間は十分取れたんだから」

 「そうかも知れないね。……でも、僕は何がやりたいんだろ……まだ良く分から
 ないよ」

 「私も……。碇くんと同じ仕事をしたいとは思うけど……」

 「だったら三人で一緒に出来る仕事を始めない?」

 「三人で?」

 「一緒に?」

 「そ。一人で仕事してみて良~~~く分かったわ。やっぱり離れてちゃダメなのよ。
 だから、三人いつも一緒にいられる仕事を何か考えましょ」

 「三人一緒にか……」

 「何かお店を出すって事?私は碇くんのお手伝いが出来るのなら何でもいいけど
 ……でも、私が手伝える事っていったら……いつも一緒に料理作る事くらい
 しか……」

 「あ、それいいわね。シンジとレイの作る料理はひいき目無しでとっても美味しい
 から、きっとうまくいくわ。じゃあ私はウェイトレスとして看板娘になってあげる
 わ」

 「看板娘? アスカ、それ何?」

 「文字通り、お店の看板として、その美貌でお客を集める事よ」

 「お客を集める……碇くんのためになるのなら私も看板娘やる」

 「看板娘は一人でいいのよ。それに、こういうもんにはハクが大事なのよ。私は
 世界一のスーパーモデルよ。これ以上の看板は無いわよ。ま、どうしてもやりたい
 って言うのならレイもモデルになってみる? レイだったらすぐに私と同じ所まで
 来れるわよ。頑張ってね」

 「でもアスカは碇くんと一緒にいられないからモデル辞めるんでしょ。私は碇くん
 と離れるのは嫌」

 「う~ん、やっぱり引っ掛からなかったか。ま、それじゃあ看板娘は私に任せて
 おきなさい。レイは料理でシンジを手伝えばいいじゃない。これで決まりね。シンジ
 と私とレイとでレストランの経営ね」

 「レストランか……」

 「シンジ、嫌なの?」

 「嫌ってわけじゃないけどさ、僕が作る料理で客なんて来るのかなと思って……」

 「だーいじょうぶだって。シンジの作る料理は間違いなく美味しいんだから、もっと
 自信を持てばいいのよ。そしてマスコミの目を覚まさせてやるのよ」

 「え? 何の事、アスカ?」

 「だって考えてもみなさいよ。エヴァのパイロットが三人揃って店を出すのよ。
 それだけでも話題性十分なのに、この私がウェイトレスするのよ。レイやシンジ
 だって結構人目を引くし、黙ってたって客が押し押しかけるわよ。そうなると、当然
 マスコミの連中はこう思うわよ。人気ばかりで味は大した事ないだろう、ってね。
 そんな連中の目からウロコをボロボロと落としてやるのよ。ああ、今からマスコミの
 連中の驚いた顔を見るのが楽しみだわ」

 「は、ははは……ま、努力するよ。調理師の免許を取らないといけないしね」

 「良し、その意気よ。それより、さっきからレイが静かね。レイ、どうしたの?」

 「……碇くんと二人でお料理を作って店を大きくしていくの。前に読んだマンガに
 あった……。やがて二人は結ばれて……幸せな家庭を築くの。……碇くんと
 私も……きっと……」

 「…………」

 「…………また自分の世界に突入したようね」

 「そうみたいだね」

 「ところでシンジ、今日のレイはいつもに増して夢見がちのようね。やたらと結婚
 とか夫婦とか言ってるし……。まさかとは思うけど、レイと何かあったわけ?」

 「何言ってんだよ。アスカがテレビであんな事言うから、綾波も張り合ってるん
 だよ」

 「ああ、結婚したいって話? だってあーでも言わないと、ほんっっっっっっとに
 周りの男どもがしつこいのよ。だからあれ位言わないと効き目ないのよ。
 ……それに……そろそろ考えてもいいんじゃない?」 赤


 <つづく>


 Gパートを読む

 [もどる]