新世紀エヴァンゲリオン-if-

 第十八部 Cパート


 ある日、シンジとレイは揃って食堂に向かっていた。

 もちろん普段はお弁当を持ってきて、周りの人々の羨望の中、二人で仲良く食べて
 いる。中学の頃から朝食と昼のお弁当はシンジとレイの手作りであり、それは今も
 変わらない。アスカも仕事に行く時は必ずお弁当を持って行く。シンジとレイは大学
 で、アスカは職場で常に同じ物を食べていた。

 しかし、今日はアスカが初の海外での撮影で不在という事と、この大学の食堂は
 料理人も一流どころを揃えているため、学食とは思えないほどの豪華な食事が信じ
 られない位安く食べられ、しかも美味しいと評判なので、一度行ってみようという
 事になったのである。

 「うわー、さすが評判になるだけあって凄いな」

 「ほんと、メニューもこんなにたくさんある」

 「……でも、昼間からフルコース食べるやつなんかいるのかな……ま、いいか。
 ところで綾波、何にする?」

 「ん~~~ラーメン定食」

 「ははは。綾波はほんっとラーメン好きだね」

 「うん。でもお弁当には入れられないし……ここのラーメン定食食べてみたいの」

 「そうだね。じゃ僕も同じにするよ」

 「うん」

 二人はラーメン定食を受け取り、席に着く。レイはラーメンの上のチャーシューを
 シンジのラーメンの上に乗せる。レイはシンジの作った肉料理以外は口にしない。
 もちろん、シンジの作る肉料理は無理しているわけではなく、本当に美味しいと
 思って食べている。本人いわく”愛の差”だそうである。

 ともあれ、そんな二人の世界フィールドに妨げられ、近づく事ができない周りの学生
 達は、やや離れた所から二人を羨望の眼差しで見つめていた。

 そんな時、食堂の片隅がどよめき出す。何だろうと思い見てみると、そこに置いて
 あるテレビにアスカが映っていた。恐らく、ワイドショーか何かの芸能番組のよう
 である。

 「うを~~~っ!! アスカ様だ~~~っっっ!!」

 「我等の英雄!!」

 「いつも綺麗だな」

 「くそぅー! こんな事なら録画しておくんだった!!」

 「ふッ……甘いな、お前ら。俺は当然録画しているぞ。もちろん超高画質モード
 でだ」

 「何でお前、今日アスカ様がテレビに出るって知ってたんだよ?」

 「ふッ……俺は 『アスカ様ファンクラブ』 会員ナンバー一桁の大幹部だ。チミ達
 とは情報レベルが違う」

 「おお~っ! 後でダビングしてくれ!」

 「あ、オレも!」 「僕も!」

 「で、これはどこのスタジオだ? 近いのか? 近いんだったら今すぐ見に行くぞ」

 「超多忙なアスカ様が生でテレビになど出られるはずがないだろ。録画に決まって
 る。今は写真集の撮影で海外にいるはずだ」

 「何ッ!? 次の写真集が出るのか!!」

 「早速予約せねば!」

 「俺は三冊買うぞ!!」

 「甘い! オレは十冊!」 「僕は五十冊!」

 「いつだ!? いつ出る!?」

 「前の写真集は最高だったな」

 「ああ、実に素晴らしい出来だった」

 「でも、水着姿が一つもない写真集ってのも珍しいよな」

 「貴様!! アスカ様をその辺のアイドルと同じ扱いをするな!!
 そもそもアイドルではない! モデルだ!!」

 「わ、分かってるよ。でもモデルが写真集出すって珍しいよな」

 「それだけ人気があるという事だ。すぐ水着になるようなやつと一緒に
 するな!!

 「そう怒るな。で、どこで撮影してるんだ? 例え海外だろうと俺は見に行くぞ」

 「もちろんオレもだ」 「僕も!」

 「……」

 「どうした? 大幹部のお前なら知ってるんだろ? 勿体ぶらずに教えろよ」

 「……それが、俺でも分からんのだ」

 「何で?」

 「以前、撮影場所を公開したらファンが殺到して撮影どころじゃなくなっただろ。
 だからそれ以来撮影場所は極秘。大幹部といえども教えてくれないんだ」

 「ま、確かに……仕方なくはあるな」

 「見に行くやつは大勢いるだろうしな」

 「ああ、だから我々は写真集の完成まで邪魔をしてはいかんのだ」

 「そうだな。楽しみに待つとするか。例え録画でも、今はアスカ様の姿を見、声を
 聞くだけで満足だ」

 「その通りだ。いいかお前達、CMが明けたら決して声を出すなよ。耳を澄ませて
 インタビューを聞くのだ。分かったな!

 おおーーーっ!!」×多数

 (余談だが、アスカの若い頃の写真を大量に持っている人物が大儲けしているという
 噂である)

 ・
 ・
 ・

 「相変わらずアスカはすごい人気ね。それにモデルやり始めて生き生きしてる。
 ますます綺麗になったみたいね」

 「そうだね。アスカは人の目を意識して綺麗になるタイプだから、モデルという仕事
 はアスカにピッタリだね」

 「特に、碇くんの目を気にして、でしょ」

 「う。綾波も言うようになったね」

 「ふふ、きっとアスカの影響ね」

 「間違いなくそうだね。あ、インタビュー始まるみたいだね。僕達も静かにしてよう
 か」

 「うん、ファンの人に怒られちゃうし、アスカの話も聞いてみたいしね」

 こうして、殆ど全員が見守る中、アスカへのインタビューが始まった。

 「今日は世界を救った英雄、エヴァンゲリオン弐号機の専属パイロットにして
 スーパーモデルの惣流アスカラングレーさんの独占インタビューをお送りいたし
 ます」

 レポーターがそう告げ、アスカとの会話が始まる。二、三、仕事の話をした後、
 いきなり話が変わる。

 「アスカさんもお年頃、色々と有名人との噂が流れていますが、ほんとの所、どう
 なんですか?」

 ワイドショーというものは今も未来も変わっていないようである。

 だが、さすがにアスカはマスコミ慣れしているのか、余裕で返事をする。

 「ああ、あれ? 週刊誌で色々書かれてるみたいだけど、全部デタラメよ」

 「しかし、世界的な大金持ちや大物俳優からアタックされまくってるようですが?」

 「ま、言い寄ってくるやつが大勢いるのは認めるわ。でも、私はお金や地位に何の
 興味も無いの。私が好きなのはあんな連中じゃないわ。迷惑だからもう寄って来ない
 で欲しいわね」

 「ははは、相変わらず手厳しい。ですが、今の言い方からすると、誰か好きな人が
 いるようですが?」

 「ええ、いるわよ

 何ぃぃぃ!!! そ、そんな!?」

 「バ、バカなっ!! そんな事が!!」

 「う、嘘だ!! これはだぁぁぁ!!」

 「落ち着けお前ら!! とりあえずアスカ様の話を聞け!!」

 「おおっと、いきなり爆弾発言。で、どういった方なんですか?」

 「それは言えないわね。言えばマスコミが殺到して大騒ぎになるでしょ。静かな生活
 が好きな人だから迷惑かけたくないし」

 「そこを何とか、名前だけでも……」

 「絶対に駄目」

 「そうですか……残念ですね。では、どういったお付き合いなのですか? 将来的
 には結婚とかを意識しているのですか?」

 と、レポーターは軽く聞いたのだが、

 「ええ、私はいつでもいいんだけど、相手がなかなかうんと言わない
 のよね」

 バキッ!!

 ガシャ!!

 (この効果音の解説)
 バキッ:レイが割り箸をへし折った音。
 ガシャ:シンジが割り箸入れを派手に倒した音。

 「あ、あの綾波……はい、代わりの割り箸」

 「ありがと、碇くん」 にっコリ

 『こ、恐い……。それにしてもアスカ、一体何言い出すんだよ……』

 シンジは慌てて割り箸を拾い集めながら、途方に暮れていた。

 なお、シンジやレイの行動を不審に思った人物はいなかった。なぜなら、食堂は今の
 アスカの発言で大騒ぎになっていたので、シンジ達の行動など些細な事だったので
 ある。

 「そんな……そんな……」

 「結婚……誰が? ……アスカ様が……」

 「…………嘘だろ?」

 それぞれ、うわ言のように呟き呆然とする者、信じられずに暴れる者、中には泣き
 出す者までいた。

 「え、えーと……そこまで仲が進んでいるとは」

 いきなりの答えにレポーターも動揺していた。

 「しかし、相手の方は一体どうしてアスカさんほどの女性にここまで言われて、すぐ
 に結婚しないんでしょうか? 一体何の不満があるのでしょう。私には理解できません
 が?」

 「もちろん、私に不満なんて持ってないし、ちゃんと私の事を愛してくれてるわよ。
 それは私が一番良く知ってるわ」

 「それじゃあ、なぜ?」

 「それがね、そいつ、ふたまた掛けてんのよ

 「な、な、な……な゛っ!?( シンジ)


 <つづく>


 Dパートを読む

 [もどる]