新世紀エヴァンゲリオン-if-

 第十八部 Bパート


 シンジは大学生になっていた。


 Case 2 碇シンジの場合


 第三新東京市立大学、この世界で最も新しく作られたこの大学は、実はネルフ職員と
 してのエリートを養成するという目的があるため、大学とは思えないほどの高価な
 最新鋭の設備が整い、一流の講師が揃っていた。そのため、日本はおろか世界中から
 優秀な生徒が入学を希望した。その結果、倍率は凄まじく跳ね上がっていたが、それ
 でもシンジは無事に合格する事ができていた。

 ちなみに、例の親バカが何か手を回したのだろうと思う方もいるだろうが、

 「自分の実力以上の所に入っても本人のためにならん」

 という冬月のごくまともな意見により、ゲンドウは一切の手出しをしていなかった。

 ではなぜシンジが合格できたのかというと、それは優秀な教師のお蔭である。シンジ
 は本来頭は悪くないうえ、周りには優秀な女性がいっぱいおり、さらに朝から晩まで
 常に一緒にいるので、分からない所はいつでも質問ができ、またシンジが理解する
 まで根気良く教えていた。そのため、シンジの学力は実力で第三大学に入れるほどに
 上がっていた。誰にも恥じる事なく、堂々と大学の門をくぐる事ができたのである。

 ちなみに、シンジはアスカと違い、自分が初号機のパイロットである事を公開して
 いないので、ごく普通の大学生活を送って……はいなかった。

 シンジは幸運な事に母親の特徴を強くひいたため、一言で言うと美男子になって
 いた。おまけに父親譲りなのか随分と背も高くなっていた。しかも中学の頃から
 続けている陸上、ネルフで行われる科学的な運動などにより、非常に引き締まった
 身体になり、随分と男らしくなっていた。それでも線は細く、どこか中性的な雰囲気
 があり、誰にでも優しいので、とにかく女性に非常にもてていた。

 まさにアスカが危惧した通りになっており、毎日のようにシンジの周りには女性が
 集まってきていた。しかも、遠くから見る事しかできないという女性もその数倍は
 存在していると言われていた。

 だが、シンジはそれらの女性からの誘いを全て柔らかく断わり続けていた。それも
 そのハズ、シンジの心の中には常に最愛の女性が二人いる。どんなに積極的に迫って
 きても、シンジが他の女性になびく事はあり得なかった。おまけに、シンジの側には
 常に一人の女性が寄り添っている。シンジは何があってもその女性を悲しませる事は
 絶対にできないと心に決めていた。

 いうまでもないが、その女性の名は綾波レイ。

 彼女もまたシンジ同様、この第三大学に入学していた。元々レイは非常に成績が
 良く、望んだ大学に何の問題もなく入れるほどであった。だが、彼女の望む大学とは
 つまりシンジが進む大学であり、それ以外はあり得なかった。もしシンジが入学に
 失敗していれば、迷う事なく当然のようにシンジに付き合ったであろう。それを
 知っているシンジも、その為により一層真剣に勉強に取り組む事ができたのだった。

 ちなみに、シンジとレイの二人がこの大学を選んだ理由は簡単である。
 それはつまり、「近いから」であった。アスカが仕事をしているので同じ大学に行く
 事ができない、それならせめて食事だけは一緒に取りたい、少しでも一緒にいられる
 時間が欲しい、という三人の想いによって、一番近い所にある大学に進む事になった
 という訳である。

 なお、この事を見越して……というより三人を手元に置いておきたいがために
 わざわざ大学を作ったという噂があるが……恐らく事実だろう。とりあえず、
 ゲンドウの思惑通り、シンジとレイは第三大学に入学した、というわけである。


 Case 3 綾波レイの場合


 シンジ、アスカ同様、レイもまた大人へと成長を遂げていた。

 シンジと共に作る栄養バランスの取れた食事を毎日食べ続けた結果、やや痩せ気味
 だった身体も女性らしい丸みを帯びてきていた。着痩せするタイプのためあまり
 知られていないが、そのプロポーションはアスカに勝るとも劣らないものだった。
 また、常に最愛の男性の側に寄り添い、その男性から愛されている充実感から、常に
 朗らかな表情で、周りに柔らかい印象を与えていた。冷たい印象を周りに与えていた
 頃の彼女しか知らない人間にとっては同じ人間とは思えない程の変化であった。
 それほど今のレイは輝いていた。

 いつかミサトがレイとアスカを見比べて、こう言っていた。

 「う~ん、二人共ほんっっとに綺麗になったわね~。リツコに気を付けなさいよ。
 ま、シンちゃんが守ってるから大丈夫だと思うけどね。……しっかし、見事に
 両極端ね。美人でナイスバディでシンちゃんを愛してる以外、全く正反対ね。
 、静と動、月と太陽ってとこかしらね。それぞれの一番良い所を象徴してる
 みたいね」

 と。それを聞いていたシンジは妙に納得した顔をしていた。

 随分と成長し、大人っぽくなったレイだが、シンジと暮らすようになった頃から全く
 変わってない所も幾つかあった。

 まず、シンジ一人を愛し続けている事。それは恐らくこれからも全く変わる事がない
 であろう。そして、もう一つ変わらない物として、その髪型が挙げられる。一度その
 事を疑問に思ったシンジが聞いてみた事がある。

 「綾波は髪型変えた事無いね。どうして?」

 「変えた方がいい?」

 「え? い、いやそういった意味で言ったんじゃないよ。ほら、アスカはしょっ
 ちゅう髪型変えてるだろ。なのに綾波は一度も変えないから、どうしてかなと思っ
 たんだ」

 「一番私らしいと思うから。でも、碇くんが変えた方がいいと思うのなら変えよう
 かな……。碇くんに気に入ってもらえないと意味が無いから」

 「え? ひょっとして僕のためにずっと同じ髪型なの?」

 「ふふ……他に誰のため?」

 そう言ってにっこり微笑むレイにシンジはクラクラしていた。ロングヘアーも良く
 似合うだろうとは思うが、ここまで言われてはそれを口にできるシンジではなく、
 レイの髪型は全く変わる事が無かったのである。

 そして最後に、その見た目である。少女の頃からその美しさは微塵も損なわれて
 いない。それどころか益々綺麗になっている。ただでさえ整った顔立ちに見事な
 スタイルなので人目を引き付けるのに、美しい青い髪、そして見る者を引き付けて
 やまない神秘的な赤い目なので一層目立っていた。普通、こういった特徴を備えた
 人物はどこか近寄り難い雰囲気を持っているのだが、レイには全くそれが無かった。
 それどころか時々強烈な天然ボケをする事があるため、美人なのにどこか温かみが
 あり、非常に身近で可愛い存在と思われていた。

 特に、常にシンジに向けられる極上の微笑みを見てしまった男達はことごとく魅了
 されていったので、第一回ミス第三大学にぶっちぎりの一位で選ばれるほどの絶大な
 人気を博していた。そのため、言い寄ってくる男は毎日軽く二桁は突破するという
 有り様だったが、

 「ありがとう、でもごめんなさい。私は碇くんが好きだから」

 の一言でことごとく玉砕していた。シンジは男から見ても結構いい男だったし、二人
 が愛し合っているのはひと目で分かる。決してベタベタするわけではないが、長年
 連れ添った夫婦のようにその絆は強い。そのため、悔しいが仕方が無い、が悔しい、
 が仕方無い。と、大学中で最も目立つ公認のカップルとなっていた。もっとも、
 微かな望みを持って声を掛けてくる男女も後を絶たないのだが。

 そしてもちろん、変な下心を持たない純粋な友人も多くできたため、シンジとレイの
 周りには常に多くの人数がおり、毎日楽しく学園生活を送っていた。

 次回、シンジとレイの大学生活編に


 <つづく>


 Cパートを読む

 [もどる]