新世紀エヴァンゲリオン-if-

 第十六部 Lパート (最終回)


 「これ飲んでみなさい」

  何だこれ?」

 「エヴァのパイロットにふさわしいかどうかを調べる薬品よ。開発されたばっかりの
 プロトタイプ。ちょっと苦いけど それを飲まないとパイロットになれるかどうかが
 分からないのよ。ネルフでも改めてパイロットを探すみたいだから、私たちにも
 手伝うよう、命令が出てるのよ」

 『大嘘だけど』

 「綾波、あれってひょっとして……」 ぼそぼそ

 「ええ、そうよ。あの薬よ」 ぼそぼそ

 「いいのかな、あんな嘘ついて飲ませて……」 ぼそぼそ

 「いいの、碇くんを追い詰めようとしたんだもの」 ぼそぼそ

 「う、う~ん……。まぁ、解毒剤もあるしいいか。ケンスケも僕の苦労が分かる
 だろうしね」 ぼそぼそ

 「うん」 ぼそぼそ

 「シンジ、お前もこれ飲んだのか?」

 「え? ぼ、僕? う、うん、飲んだよ。結構苦いけどね」

 「そうか……」

 『あーびっくりした。いきなりだもんな。でも、嘘はついてないよな。ほんとに
 飲んだし』

 『シンジも飲んだんなら惣流の罠って事はないか。シンジも嘘ついてるようには
 見えないし……』

 「相田、嫌なら別にいいのよ。それ返してくれる? 他の人に渡すから」

 「いーや、僕が飲む!!」

 グビ

 「うえ、苦い……」

 「やめる?」

 「パイロットになるためならこれくらい!」

 グビ グビ グビ  プハァー

 『ふッ……全部飲んだわね』

 「さー全部飲んだぞ! で、どうやってエヴァのパイロットにふさわしいか
 どうか分かるんだ?」

 「すぐ分かるわよ」

 「? うっ!? ぐっ…… か、体が……ぐあぁぁぁ!!

 ゴキ ゴキ ゴキ

 ケンスケはみるみる髪が伸び、女になってしまった。

 「な な な! 何だよこれ!?」

 「あら、残念ね相田。どうやらエヴァのパイロットには向いてないようね」

 「ど、どういう事だよ?」

 「つまりね~、エヴァのパイロットとしてふさわしければ何の変化も無いけど、
 ふさわしくない場合、性別が変わっちゃうのよ」

 「そ、そんな無茶苦茶な……」

 「ま、作ったやつが無茶苦茶なやつだからしょうがないわよ」

 「早く解毒剤くれよ!」

 「無いわ」 きっぱり

 「そ、そんな……じゃあ早く取ってきてくれよ」

 「だからそんな物存在しないのよ。さっき言ったでしょ、プロトタイプだって。まだ
 解毒剤なんて存在しないのよ。残念ね、相田ちゃん

 「そ、そ、そんな、そんな…… はっ!?

 ケンスケは、いつの間にか自分の周りに集まってきているクラスメートにやっと気が
 付いた。

 「な、な、何だよみんな?」

 「ケンスケ、本当に女になってしまったのか?」

 「確かに胸がある……」

 「しかし、不気味だな……」

 「放っとけ!!」

 「ケンスケ、早く病院行った方がいいんじゃないか?」

 「いや、そんな事より、まず今どういう状況になっているのを確かめるのが先だと
 思うぞ」

 「そうだな。今の状態が分からなきゃ医者に説明できないからな」

 「よし、ケンスケを調べるぞ

 「な、何言ってんだよお前ら!」

 「ケンスケ、男同士なんだから隠すな」

 「友達だろ」

 「せっかくのチャンス」

 「独り占めしないで見せろ」

 「う、うわっ! やめろ、お前ら!!」

 ケンスケは男どもの囲みを必死で破り、逃げ始めた。

 「逃がすかっ!」

 「みんな、追うぞ!」

 「おおおーーーっ!!」

 男子生徒は、逃げるケンスケを追って教室を出て行った。


 「ふふン、予定通りの展開ね。これに懲りて少しはおとなしくなるでしょう」

 「でも、アスカの言った通りの展開ね。男子生徒のセリフまで合ってる」

 「でしょう」

 「はぁーーー。僕ん時バレなくて良かったよ。絶対こうなってただろうしね。
 ま、ケンスケの事だから逃げきるだろうけどね」

 「うん。でもアスカ、この解毒剤、いつ渡すの?」

 「ん~そうね~~~。十分反省すれば渡す事にするけど、もうしばらくは今のまま
 追いかけられてもらうとするわ。結構面白いしね~~~」

 そう言って窓の外を見ると、ケンスケが校庭を逃げ回っていた。いつの間にか相手の
 男子の数が三倍ほどに増えている。

 「まぁ、いつも僕を追っかけ回してるし、たまにはいいよね

 「うん」

 「あいつには文字通り、いい薬よ

 「そうだね」

 シンジ達三人の見守る中、ケンスケの悲鳴だけが校舎中に響き渡っていた。


 「たーーーすけてーーーくれーーー!!」


 そんなケンスケと、平和そうなシンジ達を見て、トウジがぽつりと呟く。

 「へーわやなぁ~~~」

 第三新東京市は今日も平和だった。


 <後日談 終わり>


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