新世紀エヴァンゲリオン-if-

 第十六部 Kパート


 「赤木博士、碇くんが男に戻る時に使ったこの薬、飲んで下さい

 「え?」

 「うわっ! ……綾波、それってかなりきついんじゃあ……」

 「そう? 碇くんに酷い事をしたんだから当然だと思うけど……」

 「さすがはレイ、容赦ないわね。でも、ま、いいアイデアね。面白そうだし」

 「良かったわねリツコ、貴重なデータが手に入るわよ。何たってリツコ自身の身体で
 実験できるんだから、誰にも遠慮する事なく、好きな事できるわよ。
 ……男になったリツコ……楽しみだわ~~~!

 「そ、そ、そんな。よそんなの!」

 「それ以外はありません。どちらか一方選んで下さい、赤木博士

 「う、うう……

 「問題ない。赤木君、どちらかを選びたまえ」

 「い、碇司令!?

 「ああ、そうだな。それで赤木君の今回の件については不問としよう」

 「ふ、副司令まで……。あの……ひょっとして……怒ってます?

 「怒らん人間がいると思うかね?」

 「あ、あは、あははは……・」

 「まぁ、自業自得だな、リッちゃん」

 「そうですね」

 「仕方ないですよね」

 いつの間にか、リツコの薬で女にされた職員がリツコの周りを取り囲んでいた。

 「赤木君、これはネルフの正式な決定事項だ。どちらかを選びたまえ。どちらも
 選べんと言うのなら、二つとも無理やり口に入れる事になるが……いいのだな」

 「そ、そんな……この二つが融合したらどんな化学変化を起こすか見当もつかない
 のに……。で、でもどっちも嫌だし……。か、母さん私はどうすればいいの?」

 「ふむ。どうやら現実逃避をしてしまったようだな。仕方あるまい。君達、
 赤木君の口を開けさせたまえ

 「はい」×多数

 「え? ちょ、ちょっと何、何をするの!? ちょ、ちょっと!

 「悪いなリッちゃん、碇司令の命令には逆らえんからなー。いやー、俺も辛いよ」

 「そうですね」

 「仕方ないですよね」

 「観念したまえ、赤木君」 (ニヤリ)

 「い、い、嫌ぁぁぁぁぁぁーーーーーー!!!

 食堂にリツコの悲鳴が鳴り響き、ようやくこの事件は幕を下ろした。


 その後、一ヶ月もの間、リツコは面会謝絶になり、誰一人その姿を見た者は
 いなかった。

 噂によれば、研究室にこもり何やら作っているらしいとか、水をかぶると性別が
 変わる身体になったとか、ア○ュラ男爵のようになったとか色々囁かれているが、
 真相は定かではなかった。

 だが、気を付けなくてはいけない。
 リツコがこんな事で懲りるとは思えないからだ。

 今回の事件の、ミサトによる報告書の最後には、こう記入されている。

 「あれが最後のリツコとは思えない。第二、第三のリツコ
 現れるかも知れない」

 と。

 ……ほとんど怪獣扱いである。


 新世紀エヴァンゲリオン-if-

 第十六部 魔女からの贈り物 


 ・ ・ ・


 後日談

 シンジの写真を撮る事を諦めていないケンスケがシンジの家にまでやって来た時、
 ネコ耳のレイとアスカ(まだやっている)を見た瞬間、何かに取りつかれたように
 写真を撮りまくり、あっという間に家から出ていった。シンジ達はただ呆気に
 取られるだけだった。

 「クフフフフ……僕は何てツイてるんだ。こんないい物が手に入るなんて」

 ケンスケは不気味にそう笑うと、シンジ達、特にアスカの目につかないように、
 インターネット上で販売する事に決め、色々と深夜まで作業していた。

 「クックック……この画像、幾らで売れるかな……。家が買えるくらいは間違いなく
 利益が出るだろうし……あれが買える……あれも……あれも……ふふふ……
 ハーッハッハッハッハッハ!!

 不気味に笑いながら、全ての作業を終えたケンスケは、大金持ちになる夢を見ながら
 眠りに就いた。

 次の日の朝、深夜までの作業がたたったのか、寝坊をしたため、売り上げを確認する
 暇も無く学校へと向かう。

 『ま、学校で調べればいいや。惣流が文句言ってきてももう遅いしな』

 などと考えながら教室に入り、ニヤニヤしながらパソコンを起動する。

 『ふっふっふ……幾ら売れたかな~~~』

 莫大な利益を信じきっていたケンスケの手が瞬間的に固まる。

 「な、なぜだ!? なぜ注文が一件も来ないんだ!? そんなバカな事
 があるか! !? デ、データが全て消えている!? なぜだ!?

 「ふっ ふっ ふっ ふっ ふっ……」

 ギクッ

 「そ、惣流……」

 「フン、あんたの考えそうな事くらい分かるわよ。ネルフを甘く見ない事ね。マギを
 使えばあんたのパソコンのデータを消すくらい簡単なんだから」

 「くっ……そういう事か……」

 「だーいたい、人の写真で儲けようなんて発想がそもそもおかしい
 のよ!!」

 「私は碇くん以外の人に見て欲しくはないの。碇くんだけの私だもの」

 「あ、あははは……」

 『フン、インターネットが駄目なら写真として売ればいいさ。利益は下がるがかなり
 売れるはずだ』

 「あ、そうそう、気付いてないだろうけど、あんたが寝てる間に保安部の連中が
 全てのデータを回収してるから、写真も無理よ」

 「なっ!?」

 ケンスケは慌ててカメラを調べる。アスカの言うように、全てのデータが無くなって
 いた。

 「そ、そんな、そんな……。ひどいじゃないか惣流! 勝手に人の家に
 入ってデータを盗むなんて! プライバシーの侵害だ!!

 「よくあんたにそれが言えるわね!! 勝手に人の写真を売ろうと
 してたくせに!!」

 「でもここまでする事はないじゃないか! 酷いじゃないかシンジ!」

 「え? ぼ、僕は何もしてないよ」

 「本当か?」

 「本当だよ。昨日ケンスケが帰ったあと……」


 回想シーン

 「……はっ! 呆気に取られてる場合じゃないわ。追わなきゃ!

 「あ、そうね。あまりに速かったから、どう対応していいか分からなかった」

 「でも、こういう時のケンスケって人間離れした動きをするからね。今からじゃ
 きっと追いつけないと思うよ」

 「確かに……。それに、あのバカの事だから私たちの目に付くような所では売らない
 だろうし……。パソコンなんか使われたら発見はほとんど無理ね……うーん……。
 あ、そうだ。ミサト、ネルフの力で何とかなんない?」

 「ならない事もないけど……ちょっと民間人相手には動きにくいわよ。それに、
 たかが写真くらいじゃね……」

 「たかが? こんな格好、他のヤツに見せるのは嫌よ! レイ、あんた
 だってそうでしょ」

 「うん、碇くん一人にだけ見て欲しいもの」

 「でしょ。というわけでミサト、マギでも何でも使ってあのバカ阻止してよ」

 「だから無理だって。そんな事には使用許可絶対下りないわよ」

 「私、碇司令に頼んでみます

 「え? 父さんに?」

 「碇司令に?」

 「うん、碇くん以外の人に見られたくないから、協力してくれるよう頼んでみる」

 「よっし、レイ、早速電話するのよ」

 「うん」

 ・
 ・
 ・

 「で、どうだった、レイ?」

 「任せろって言ってた」

 「でも何か不安だな。父さん無茶苦茶する時あるから……」

 「そうねえ。でもま、副司令が付いてるし、そこまで心配する事もないわよ」

 「だといいんですけど……」

 「フン! あのバカにはいい薬よ」



 「……って事があったんだ。だからその程度で済んだんならいい方だと思うよ」

 「そ。生きてるだけでもありがたいと思う事ね」

 「く、くそー! 卑怯だぞネルフの力を使うなんて! 公私混同
 甚だしいじゃないか!!」

 「ほほー。この私にそんな口をきいていいのかしら?

 「な、何だよ。どういう意味だよ」

 「あんた、確かエヴァのパイロットになりたがってたわよね」

 「え? ならせてくれるの? 惣流様!」

 「……調子いいわね。あんたの心掛け次第ね」

 「二度と逆らったりしません! 毎日カバン持ちでも何でもやらさせて
 もらいます!!」

 「……現金ね。ま、いいわ。これ飲んでみなさい

 アスカはそう言って、謎の薬品を取り出した。


 <つづく>


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