新世紀エヴァンゲリオン-if-

 第十六部 Jパート


 うおおおおおおーーーっ!!
 ユイーーーーーーっ!!!

 ゲンドウはそう叫ぶと、一瞬で靴、ズボン、上着などを脱ぎ捨て、
 シンジに飛び掛かる。いわゆる『ルパン脱ぎ』である。
 当然、擬音は『ふ~じこちゅわ~~~ん!』である。

 「ええーーーい!! どいつもこいつも!!」

 スパーーーン!!

 ミサトはそう叫びながら、迷う事なくゲンドウをハリセンで打ち返す。

 「グフッッッ!!」

 バシッ!!

 そして、打ち返されたゲンドウを、これまた迷う事なく冬月が叩き落とす。

 「グワッッッ!!」

 「……まったく、お前というやつは……。しばらくそこで寝てろ

 ミサトと冬月の連続コンボで、ゲンドウは完全に気絶していた。

 「副司令、ちょうど良い所に。どうもリツコの様子がいつも以上におかしいんですが
 何かあったのですか?」

 「うむ。私もそう思ってな、赤木君の第一人者の伊吹君を連れて来た所だ」

 「あの……副司令。そういう言い方は誤解を招くのではないかと……」

 「そうかね? しかし職員の間ではもっぱらそういう噂だが……」

 「…………はぁ~……」

 「マヤ、溜め息ついてないで、リツコがいつも以上におかしい原因に心当たりが
 あるなら教えてよ」

 「はい。恐らく、昨日皆さんに殴られた時に打ち所が悪かったのではないかと思われ
 ます。その後の徹夜も結構影響しているのではないかと……。その、ネコ耳セット
 のセンサーなんて笑いながら作ってましたから……」

 「なるほどね~~~。それでキレてたわけか」

 「……しかし君達、その格好は何かね?」

 「こ、これはリツコさんがデータを取るために必要だって言うから……」

 「マヤ、このセンサー本当に使えるの? キレたリツコの作った物でしょ。趣味
 だけで作ったもんなんて信用できるの?」

 「あ、それは大丈夫だと思います。どんな状態でもセンパイは仕事だけはちゃんと
 やりますから」

 「だといいんだけどね。とりあえずマヤ、リツコはしばらく起きないだろうから、
 後はあなたが指揮して薬を完成させてくれるかしら。できるでしょ?」

 「ええ、殆ど完成してますし、マギを使えば私でも何とかなると思います」

 「では伊吹君、そうしてくれたまえ」

 「はい。じゃあシンジ君、ちょっとデータ取るからじっとしててね」

 「はい」



 ミサトは後をマヤに任せ、冬月の所に来ていた。

 「あの……碇司令も何かあったんですか? 初めて女になったシンジ君を見た時より
 今の反応の方が酷かったように思えるんですが……。まさか、碇司令もネコ耳
 フェチとか……」

 「いや、それはあるまい。恐らく髪型であろう」

 「髪型?」

 「ああ、昨日はシンジ君は長髪だったが、今日は短くしてるだろう。ユイ君は
 ショートカットの良く似合う女性だったからな。碇もユイ君とシンジ君がだぶって
 見えたんだろう」

 「なるほど……ではシンジ君はお母さん似なんですか?」

 「ああ、幸いな事に母親似だよ。恐らくユイ君の子供時代とそっくりだろう」

 「ますます碇司令の動きに注意が必要ですね」

 「ああ、私が見張っておこう」

 「お願いします」

 というような、まるで保護者の会話が行われていると、マヤの方から薬が完成したと
 連絡が入った。

 下っ端ーズの連中による人体実験で安全が確認された後、ついにシンジも男に
 戻る事ができた。

 ※ 作者補足 男に戻る描写は書きたくないので省略しました。


 そして、場所は変わってネルフ内の食堂。

 「ん……んん……ここは?

 「あ、リツコさん。目が覚めましたか?」

 「シンジ君? 良かった、男に戻ったのね。ほんとにごめんなさいね。悪気はなかっ
 たって事は信じてくれるわよね?」

 「ええ、もう済んだ事ですし、いいですよ」

 「そう言ってくれると助かるわ。ところで、私どうしたのかしら? 記憶の一部が
 無いわ。それに、何だか後頭部が痛いような……」

 「えっと……それは……リツコさん、徹夜で作業してたんでしょ。その疲れから
 倒れたんですよ。頭はその時に打ったんですよ」

 「そうだったの……。ところで、どうして私は食堂にいるの?」

 「倒れるほど真剣に働いてる赤木博士に栄養をとってもらおうと思って、来て頂き
 ました」

 「そ、優しい私たちに感謝してよね」

 「レイ、アスカ……」

 リツコが振り向くと、そこにはネコ耳美少女が二人立っていた。(レイとアスカは
 シンジに可愛いと言われたのがよほど嬉しかったのか、まだネコ耳セットを身に
 付けたままだった。もちろんシンジは外している)

 「あぁ~~~ 可愛いわ!

 リツコはそう叫び、レイとアスカに飛び掛かろうとしたが、体が椅子にくくり付け
 られているために動けなかった。そんなリツコを、シンジは 『やれやれ、全然
 変わんないな』 と呆れて見ていた。

 「な、何よこれ! どういう事よ!?」

 「リツコが私たちを襲わないようにするためよ」

 「それと、赤木博士が逃げないようにするためです」

 「逃げる? 私が? なぜ?」

 「そりゃあ決まってるじゃない」

 「今からミサトさんの手料理を食べてもらいます」

 「えっ!?」

 「おっ待たせー! 特製カレーができたわよ。リツコ、召し上がれ」

 「い、嫌ぁーーー!! 私を殺す気!?」

 「失礼ね! 人の料理を毒みたいに言わないでよ! 一所懸命に
 作ったんだから絶対美味しいに決まってるじゃないの!!」

 「ミサトが一所懸命に作れば作るほどそれは料理じゃなくなって
 いくのよ!! 一歩一歩、毒に変わっていくのよ! そんな物を私
 に食べろって言うの!? 私は絶対に嫌よ!!」

 「失礼ねー!」

 「ふふン、どうミサト。賭けは私の勝ちね」

 「ぐ……どうやらそのようね……」

 「な、何よ賭けって?」

 「赤木博士がミサトさんの……手料理を食べれば、この……手料理だけで終わり
 だったんです」

 「……何よレイ、今の”料理”の前のは?」

 「え? あ、あの……」  『だって、これ……』

 「まぁまぁいいじゃないミサト。で、リツコが嫌がれば一週間連続毒……あ、いや
 手料理を食べてもらう事になってたのよ。だからリツコには今から一週間、毎日
 ミサトの手料理を食べてもらう事が たった今決定したってわけ。
 分かったかしら、リツコ」 にや~~~

 「……一週間……ミサトの……毒を……毎日……。い、嫌よ!! 本当に
 死んでしまう! それだけは絶対に嫌よ!! もう二度とこんな事
 しないからそれだけは許して! お願い! それ以外なら何でも
 するから! ね、ね、お願い!

 「さすがにちょっと可哀相かな……」

 「……私の料理って一体……」

 「甘いわよシンジ! 二度と悪さしないように精神と肉体に深刻な
 ダメージを与えておくべきよ! 悪い事をすれば叱る、それが
 しつけの基本よ!!」

 「私は子供か小動物?」

 「子供や小動物の方が被害が無い分マシよ!!」

 「……赤木博士、そんなに嫌ですか?

 「ぜーーーったいに嫌!! 他の事ならまだしも、それだけは絶対に拒否
 するわ」

 「そうですか、他の事なら何でもいいんですね

 「ええ、もちろんよ」 

 『シンジ君の事になるとレイは怖いものね……』

 「レイ、何かいいアイデアでもあるの? これ以上の罰はこの世に存在しない
 と思うんだけど」

 「失礼ね、アスカ」

 「ま、まぁまぁミサトさん落ち着いて。それで綾波、何か考えがあるの?」

 「ええ」

 「何かしら……。レイ、お手柔らかにお願いね……」 ビクビク

 「赤木博士……」


 <つづく>


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