「……シンジ……お前……まさか……」
「な、な、何だよケンスケ？」
「キスマークを隠してるんじゃないだろうな！？」
「な な なっ！？」
「何ぃーっ！ シンジお前……そ、そうなのか！？」
「て、てめーってやつぁー！」
「ち、違う！ 絶対違う！」
「そうよ相田！ 何考えてんのよ！ そんな事あるわけないでしょ！」
「では服を脱いで証明してもらおうか」
「う……。そ、それは……」
「シンジ、僕達は友達だよな。もちろん、僕はシンジを信頼している。そして
シンジ、友達なら友達の信頼に応えなくてはいけないよな。身の潔白を証明する
ためには脱ぐしかないよな」
「だ、だから……」
「もちろん、全て脱げなんて言わないさ。上着だけ脱いでくれればそれで十分なんだ
よ。さぁシンジ、脱いでもらおうか」
「う…………」
「シンジ、君に残された選択肢はそう多くないんだ。自分で脱ぐか、僕達に
脱がされるか、この二つしか無いんだよ。もちろん、僕はシンジの意志を
尊重したいから、無理やり脱がせたくはないんだけどね」
「あぅ……」
『そんなの……どっちにしたって大騒ぎになるじゃないか……。このまま隠し通せば
訳の分からない事言われるし……かと言って脱げば……あぅ～～～僕はどう
すればいいんだ～～～』
「……悲しいよシンジ……仕方ない……我々も決断せねばならないようだな。
……しかし……シンジがここまで強情だったとはな……意外だったよ。
……はっ！？ まさか…………」
「おい、どうしたケンスケ？」
「シンジを脱がすんだろ？」
「？ 何を考え込んでんだ？」
「……キスマーク以上に……強力な何かが……シンジの肌に……あると
したら……それは……
シンジ！！ お前まさか……背中に引っ掻きキズがあるん
じゃないだろうな！？」 クワッ！
「へ？」
「な、何ぃーーーっ！！ シンジ！ お前いつの間にそこまで……」
「そ、そんな……シンジが既に……」
「背中のキズ……それが意味するものは……」
「じゃあ、目が赤いのは……一晩中……だから寝不足……」
「二人と……」
「いやーーー！！ 碇君がーーー！！」
「アスカ！！ あんたとうとう碇君を襲ったのね！！」
「あぁ～～～ 碇君が汚されてしまった～～～（涙）」
「あんたらバカぁ！？ 何考えてんのよ！！ 頭腐ってんじゃ
ないの！？」
「だったらなぜそこまで肌を隠す？」
「そうよ。何も無いって言うんだったら、別に碇君の肌を隠す必要なんて無いじゃ
ないのよ」
「見られちゃまずい何かがあるって事だろ」
「見せてもらおうか、シンジ」
「さぁ」
「さぁ」
「さぁ さぁ さぁ……」
『な、何かネルフと同じ展開……』
絶体絶命のその時、シンジ達の携帯が非常召集の合図を告げる。
『た、助かった』
「シンジ、レイ、すぐにネルフに行くわよ！」
「うん」
「すぐ行きましょう」
そう言うと、三人は生徒の囲みを突破し、教室を出て行った。ケンスケ達もシンジの
携帯の音が何を意味するのかを知っているために、それ以上追求する事ができな
かった。
「……仕方無い。シンジの追求はまた今度だ。今はさっきの写真でも売るか……」
とケンスケが呟くと、既に女子の一部が列を作っていたという。困ったもんだ。
「ふー、やっと学校を抜けたか。ここまで来ればもう大丈夫だよね」
「そうね。しかし絶妙なタイミングだったわね。さすがにあれだけの人数に襲われ
ちゃあ防ぎようがないものね」
「うん。でも、何で呼び出されたんだろ？ 使徒なら避難警報が出るだろうし」
「薬が完成したから来いって事じゃないの？」
「でも、それならわざわざ非常召集を鳴らす事もないと思うけど……」
「あれ、私が鳴らしたの」
「え？ 綾波が？」
「うん、あのままじゃあどうしようもないと思って、みんなの後ろでこっそり
鳴らしたの」
「さっすがレイ、やるわね」
「ほんと助かったよ、ありがとう綾波」
『ナイフよりそっちの方が平和的だし』
「碇くんにほめてもらった……」 ぽっ
『ナイフよりこうする方がいいのね』
「う。えーーーと……」
「ま、とりあえず今日はやっぱり学校は休みましょ。テストの事はヒカリに聞けば
何とかなるだろうしね」
「じゃあネルフ本部に行きましょう。ひょっとするとリツコが薬を完成させてるかも
知れないから」
「ええ、そうね。あ、そうだアスカ、ちょっと聞きたい事があるんだけど」
「ん？ 何、レイ？」
「背中のひっかきキズってなに？」 きょとん
「う゛」
「あ、僕も良く分かんなかったんだ。アスカ分かるの？」
「うう……」
『まったく、このお子さまども……』
「い、いいのよあんた達は知らなくても。そのうち分かるわよ！
ほら、さっさと行くわよ！」
『……みんなの様子からして、やっぱりそういう方面の事なのかな……？
一体何だろう？』 （シンジ）
「……良く分からないけど……アスカは分かってるのね。でも教えてくれない。
……後でミサトさんに聞……」
「聞かなくていい！！」
「でも……」
「いいのよ！ レイは知らなくて！ だいいち、ミサトにそんな事
聞いたら絶対に有害な情報しか教えないに決まってるじゃないの！
とにかく、この話はおしまい！！ ネルフに行くの！！ いいわね、
二人とも！！」
「う、うん。分かったよ」
「碇くんがそれでいいなら、私もそれでいい」
こうして、三人はネルフ内のリツコの研究室に向かった。
「あらあなた達、学校はどうしたの？」 （ミサト）
「シンジがばれそうになったんで逃げて来たのよ。こんな状況で学校になんていられ
ないわよ」
「ま、確かにね。しょうがないか」
「で、薬はできたの？」
「今、リツコが隣で下っ端ーズの連中と最終調整に入ったとこよ。90％ほど
完成したらしいから、もう少しってとこね」
「はぁ～～～。やっと元に戻れるんですか」
「まだ気を抜いちゃ駄目よシンジ君。リツコの事だから、またとんでもない薬が
できあがるかも知れないんだから」
「そうよシンジ、薬ができてもすぐに飲んじゃだめよ。下っ端ーズの連中で人体実験
を繰り返して、安全が100％確認されてから飲むのよ」
「私もそれがいいと思う」
「……えらい言われようね」
「リツコ。反論できるの？」
「……分かったわよ。ところでシンジ君、ちょうどいい所に来てくれたわ。シンジ君
のデータが欲しかった所なのよ」
「え？ 僕ですか？」
「ちょっとリツコ、薬は90％以上できてるんでしょ。何で今更シンジ君のデータが
いるのよ？」
「そうよ！ どうせまたデータを取るとか何とか理由付けて、若い
シンジにいたずらするつもりなんでしょう！」
「碇くんは私が守る」
「……あのね、私は純粋にデータが欲しいだけなの。考えてみなさい。シンジ君
一人だけ未成年なのよ。他の人は治ってもシンジ君一人だけ治らないという事も
あり得るのよ。だからデータを取るの。問題あるかしら？」
「いや、そういう事なら構いません。どうすればいいんですか？」
「この改良型のヘッドディスプレイシステムを頭に付けてみて」
「……あの……これ……なんか……ネコミミが付いてるん
ですけど……」
「ああこれ、気にする事ないわ。センサーの一部だから。ま、ちょっと趣味が
入ってるけど」
「リツコ～～～」
「いいじゃないこれくらい。仕事は楽しくやるもんよ。で、これとこれとこれも
身に付けて」
「…………シンジ、これ何に見える？」
「…………ネコ手グローブに見える」
「よね。で、こっちは……ネコ足スリッパ？」
「だよね…………」
「碇くん、この白いの……しっぽかな？」
「…………あの……リツコさん……これ…………」
「もちろんセンサーよ。ま、ちょっと趣味が入ってるけど」
「…………身に付けないといけませんか？」
「そうねえ、そうしてくれると助かるんだけど。どうしても嫌だと言うのなら、隣の
部屋で裸になってもらうしかないわね」
「…………これでいいです…………」 はぁ～～～
と、こうしてネコ型美少女（？）が一人出来上がった……にょ。
＜つづく＞