新世紀エヴァンゲリオン-if-

 第十六部 Gパート


 「シンジ、お前、性転換したな

 ギ ク ゥ ゥ ! !

 「な、な、な、何言ってんだよケンスケ!」

 「そ、そうよ、バカじゃないの!? いーえ、バカだわ! 今確定した
 わ!」

 『やっぱりコイツは危ないわ』

 「それにしてもシンジ、ケンスケの戯言は置いといても、ほんま今日は何か雰囲気が
 違うな。何か痩せたんと違うか?」

 「そ、そんな事ないよ。気のせいだよ」

 「戯言とは酷いな。それよりシンジ、売れそうだからもっと写真撮らせてくれよ」

 「えー 嫌だよ」

 「あんた! 友達を金儲けの手段としてしか見てないわけ!?」

 「ちゃんと利益は還元するさ。今日帰りに何でも好きな物おごるさ。だからいいだろ
 シンジ。な、な?」

 「い、嫌だよそんなの」

 「まーまーそう言わずに。シンジは普段から線が細いし、どこか中性っぽいところが
 あったけど、今日はまた一段と男らしくないからね。間違いなく売れるよ。僕が保証
 するよ」

 「相田君、頑張ってね。私、全部買うから」

 「私も」

 「当然、私も」

 「パネル作ってくれる?」

 「引き延ばしてね」

 「あ、じゃあ俺も買おうかな……」

 「俺も」

 「ぼ、僕も……」

 「な、シンジ。僕の言った通りだろ。既にこれだけの注文が来てるんだ。今さら
 嫌だなんて言わないよな」

 い、や、だ!!

 「そうよ! 絶対にダメ!! 撮影禁止! 売るのも禁止!!」

 「碇くんはお金儲けの道具じゃないわ。何より、碇くんが嫌がって
 」 (←怒ってる)

 「う」

 『う~ん、綾波を怒らせると後が怖いか……しかし、こんな千載一遇のチャンス、
 そうやすやすと引き下がるわけにはいかん』

 「ま、まぁそう怒らなくてもいいじゃないか。別にを撮らせてくれって
 言ってるわけじゃないんだし」

 「嫌だ。絶対に嫌だ!

 「相田、よっぽど死にたいようね

 アスカはそう言ってケンスケを睨む。と、その後ろで何か物音が聞こえる。
 何だろうと思い、音のする方を見ると、レイがナイフを持っていた。

 「あ、あの……綾波……何、それ?

 「護身用携帯プログレッシブナイフのプロトタイプ。赤木博士が開発していた物。
 今度赤木博士が碇くんに酷い事をしたら使おうと思って、昨日博士の部屋に行った時
 持ってきたの。今使う事になるとは思わなかったけど」

 「…………あんた、目が怖いわよ……

 「あ、綾波、その……気持ちは嬉しいけど……危ないから早くそれしまって、
 ね、ね、ね。僕はその気持ちだけで十分だから、ね」

 「そう? 碇くんがそう言うのなら」

 「ふぅ~~~~~~」

 教室中の全員がため息をつく。

 「……相田、見たでしょ今の。ほんとに死ぬわよ。サイズは違ってても、
 あれって対使徒用の武器なんだから、人間なんて一発よ」

 「う。わ、分かったよ」

 「相田、何を弱気になってるんだ! お前らしくないぞ!」

 「そうよ相田君、逃げちゃダメよ!」

 「え? え? え?」

 「行け! ケンスケ! 骨は拾ってやる」

 「後の事は気にするな。心おきなく撮影しろ」

 「相田君はフィルム残してくれればいいから」

 「現像は我々に任せろ」

 「お前の尊い犠牲は決して無駄にはしないぞ」

 「お国のために死んで来い!」

 「い、だよそんなの」

 「あ、僕と同じセリフ……ケンスケにも僕の気持ちが分かったかな?」

 「シンジ、早くモデルになれ!」

 「モデルになれ!」 

 「 〃 」 「 〃 」 「 〃 」

 「え!? みんな、ど、どうしたの!?」 (シンジ)

 『う……集団心理ってやつか……このままじゃ暴動に発展する……。何より僕の
 身が危ない。何とか民衆をうまく先導しなきゃ……。どうしようか……。とりあえず
 何か話題を変えないと……』 (ケンスケ)

 ケンスケが悩んでいる時、アスカもこのままでは危ないと必死になっていた。

 「ヒカリ~、委員長でしょ、何とかしてよ。これじゃあまた知らないうちに先生が
 来てて思い出話に突入って事になるわよ」

 「そ、それがねアスカ、さっき職員室に行ったら、先生達の間で風邪が流行って
 て……私たちの担任の先生や、一時間目の理科の先生もお休みなのよ……」

 「ええーーーっ!? じゃあ、この状況のまま自習なわけーーー!?」

 「おっしゃーーーっ!!」 (ケンスケ)

 『よーし話題が逸れたぞ。綾波はナイフをしまったしチャーンス!

 「自習大歓迎!!」

 「ちょっとみんな静かにして! 自習だからって騒いでいいわけない
 でしょ!! それに、ちゃんと一時間目に何をするのかは聞いてきてるんだから。
 アスカ、安心して。一時間目は三組と合同で体育になったから」

 「そう、それならい……」

 「ええーーーっ!? 体育!? (シンジ)

 『まずい……体育だと着替えがある……』

 「 どうしたの碇君? 確か男子は水泳だけど」

 「しかも水泳!?」

 「なーんてお約束!」

 「よーし! なんて美味しい展開なんだ!!」 (ケンスケ)

 「まったくや。学校に来て弁当の次に楽しいんが水泳やからな」 (トウジ)

 「いや、僕が言いたいのはそうじゃなくて……」 (ケンスケ)

 「あの……委員長。僕、今日ちょっと具合が悪くて……見学にしたいん
 だけど……」

 「何を言ってるんだシンジ、そんなもんプールで泳げば吹き飛ぶさ」

 「そうそう。それに、目が赤いのは単なる寝不足だろ。どうせ遅くまでゲームでも
 やってたんだろ。作者なんてしょっちゅうだぜ。気にする事ないさ」

 「若いんだから全く問題ないさ」

 「いや……だから……その……あ、そうだ。僕、水着持って来てないんだ。この前
 家に持って帰ったままだから……」

 「ふッ……問題ない。水着なんて購買に行けば全サイズ揃ってるぞ」

 「そうそう高いもんじゃないしな」

 「金を忘れたのなら俺達が買ってやるぞ」

 「優しい俺達に感謝するんだな、碇」

 「だ……だから……その……」

 「碇くんは具合が悪くて休むの。今日は泳がないの

 「そうよ! あんた達なに勝手に話進めてんのよ!!」

 「さーさー、女子は出てってくれ。着替えるからな

 男子生徒はそう言ってシャツのボタンを外していく。

 『くっ……コイツらこんな時だけ完璧なチームワークを発揮するんだから……』

 「こら相田! あんた何注文取ってるのよ!! シンジは今日見学だって
 言ってるでしょうが!」

 アスカに怒鳴られてもケンスケは全く怯む事なく、怪しく眼鏡を光らせる。

 「……これまでの話を総合すると……どうもシンジに着替えさせたくない……
 いや、肌を見せたくないというふうに見えるんだが……」

 ギ ク ゥ ! !

 『くっ!さすが鋭い』

 「な、何の事よ。シンジの写真を撮らせたくなくて妨害してるのは
 いつもの事じゃないのよ」

 シンジに何か喋らすとボロが出そうなので、アスカは必死に弁解する。

 「いーや、今日は明らかにいつもと雰囲気が違うね。シンジもどこか
 態度がおかしいし……明らかに何かを……シンジの肌を隠そうと
 している……これは一体…… はっ!?

 ケンスケの眼鏡がさらに光る。

 「……シンジ……お前……まさか……」

 「な、な、何だよケンスケ?」


 <つづく>


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