新世紀エヴァンゲリオン-if-

 第十六部 Dパート


 「赤木博士万歳!!」

 下っ端ーズの喜びぶりを見て、ミサトは大きくため息をつく。

 『はぁ~~~ 親玉(リツコ)が親玉なら子分も子分か……。まぁ
 パニックにならなかっただけでもましか……』 とほほ……

 そう思っていると、残りの下っ端ーズの連中が部屋に入ってくる。

 「赤木博士、ありがとうございます!!」

 「こんなにも貴重な体験をさせて頂けるなんて、自分は……
 自分は……感動であります!!

 「さすがは赤木博士、世界一です!!」

 「あれ? 赤木博士はどうなされたのですか?」

 「あー その……つまり、リツコは疲れが溜まってるのよ。後の解析はあなた
 達に任せるって言ってたわよ。頑張ってね」

 「はい! こんな凄い薬の担当を引き継げるなんて光栄です!」

 「早速解明に入ります!」

 「さぁシンジ君、こっちに来たまえ

 「え、僕!?」

 下っ端ーズはそう言ってシンジの手を取る。しかし、レイとアスカが間に割って
 入る。

 「……何かね君達は? 我々の邪魔をするというのかね?」

 「何でシンジを連れて行くのよ!? あんた達だって女になったん
 でしょ! だったら自分の身体を使って実験すればいいじゃない
 のよ!!」

 「薬が完成して安全が確認されてから碇くんに飲ませればいいはず。なぜ碇くんを
 連れて行くの?」

 「はっはっは! なに、些細な事だよ。エヴァのパイロットであるシンジ君を
 優先しているだけだよ」

 「その通り。今のままだと初号機とシンクロできないかも知れないだろ?」

 「もしこんな時に使徒が来たら困るじゃないか。だからシンジ君を優先している
 だけだよ」

 「決して、この中で一番シンジ君が美人だからじゃないんだよ」

 「決して、どうせなら一番若いシンジ君がいいという理由じゃないんだよ」

 「決して、自分の身体より人の身体見る方が楽しいからじゃないんだよ」

 「決して、治療と称して色々しようなんて思ってるわけじゃないんだよ」

 「さぁ、シンジ君」

 「さぁ、さぁ……」

 「さぁさぁさぁ……」

 「な、なんか怖いんですけど……」

 「シンジに触るの禁止!! この変態ども!!」

 「碇くんは私が守るの。近づかないで」

 『まったくこのバカ共は……。ここは一つ、碇司令にビシッと言ってもらうしか
 ないわね』

 そう思ってミサトはゲンドウを見る。

 ……しかし……


 「落ち着け! 碇!!」

 「ええい! 放せ冬月!! こいつら私のユイを!!」

 「だからあれはシンジ君だと言っておろうが!」

 「ええい! 放せ放せ!!」 ジタバタ

 「いいからその銃をしまえ! 彼らを殺したら我々はどうなる!?
 元に戻れんかも知れんのだぞ!」

 「赤木君とマギがあれば何とかなる!! 私のユイに触るやつは
 一人残らず殺す!!

 「落ち着け碇!! ……君達も見とらんで碇を押さえるのを手伝いたまえ」

 「あ、は……はい……」 (加持&マコト&シゲル)


 こうして、四人掛かりでようやくゲンドウはおとなしくなった……というより、
 押さえつけられて身動きが取れなくなっているだけだが……。

 『……碇司令といいリツコといい……ネルフの上層部はこんなのばっかりね……。
 頭痛くなってくるわ……』

 「とにかく、あなた達、今の司令を見たでしょ。命が惜しかったらシンジ君には
 手を出さない事ね。いいわね?」

 「は、はい……」 ぞ~~~~~っ

 『碇司令ならやりかねんからな……』


 「では、シンジ君の身の安全のため、我々は帰宅します」

 「待て葛城君。シンジを保護するのなら司令室に連れてきたまえ。あそこが一番
 安全だ。そうしたまえ」

 『司令のそばに置いとくのが一番危険だっつーの』

 「ですが、シンジ君を落ち着かせるためにも、自宅でのんびりするのが一番いいと
 思われますが……。いかがでしょう副司令?」

 「そうだな。そうした方が良かろう。碇のそばに置いておくと何か間違いが起きる
 かも知れんからな。そうしたまえ」

 「冬月、勝手に決めるな! 司令は私だぞ!!」

 「お前が暴走した時に押さえるのが私の役目だ! 今のお前はただの
 危険人物に過ぎん! よって私が指示を出す。いいな碇?」

 「…………」

 「…………」

 「…………」

 「いいな碇!!」

 「…………好きにしろ」 フン

 「さてと、では我々も職務に戻るとするか。こんな格好で人前に出るのは嫌だが
 仕事だからな」

 「ですが副司令、他の男性職員も大部分は女になってるようですし……それほど
 目立つ事はないと思われますが……」

 「そうだな……まぁ……不幸中の幸いと言った所か。では君達も気を付けて帰り
 たまえ。こちらは解毒剤の制作を急がせよう」

 「はい、お願いします。それでは失礼します」

 ミサトは一礼すると、シンジ達を連れて部屋を出ていった。



 「……まったく、リツコはどうしてこう毎回私達を巻き込むのよ。いい加減にして
 欲しいわね」

 「私もそう思う」

 「まぁ、今回は悪気はなかったみたいだけどね」

 「存在自体が十分罪よ!」

 「私もそう思う」

 「は、ははは……」

 『今日の綾波、ちょっと怖い……ん?』

 「あの、ミサトさん、どこに行くんですか? 出口こっちですよ?」

 「施設内の散髪屋に行くのよ。前の薬(大人になるやつ)みたいに効果が切れれば
 元に戻れるんならいいけど、今度もそうとは限らないでしょ? だからよ。そんな頭
 じゃ学校行けないでしょ」

 「え? 学校行かないといけませんか? 出来れば休みたいんですけど……」

 「私も碇くんは家でゆっくり休んでいる方がいいと思います」

 「そうよ。こんな状態で学校なんか行ったらそれこそ大騒ぎになるわよ。相田なんて
 黙ってないだろうし、休むべきよ」

 「気持ちは分かるけど、あなた達そろそろテストでしょ。この時期休むのはまずいん
 じゃないの?」

 「……それは……そうです……けど……」

 「それに、話の展開上、学校行ってもらわないと困るのよ」

 「は?」

 「あ。いいのいいの気にしないで。こっちの事だから。……とりあえず、髪は
 いつものように切ればいいとして、問題はね。う~ん……ま、晒(さらし)
 でも巻くしかないか……。レイ、アスカ、二人とも学校ではシンジ君のフォロー
 よろしくね」

 「はい、分かりました」

 「ま、しょうがないわね。私たちがきっちりガードするわ」

 「二人とも、ごめんね」

 「いいの、碇くんは何も悪くないの。悪いのは赤木博士だから

 『……やっぱり今日の綾波、怖い……』

 「とりあえず、リツコにはそれ相応の罰を与えないといけないわね……。
 レイ、何がいいと思う?

 「私は……」


 <つづく>


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