新世紀エヴァンゲリオン-if-

 第十五部 Jパート


 「くっ……」

 男子生徒がゾンビのように迫ってくる中、アスカは写真を服の中、もっと
 詳しく言うなら下着の中に入れた。

 「ふっ! どう、これで手は出せないでしょ?」

 「し、しまった! これでは手が出せん……」

 「汚いぞ! 惣流!」

 「どうするケンスケ、このままでは……」

 「あぁ……。しかし、これであの写真は余程の内容だという事が分かった。ぜひ
 手に入れなくては……」

 「しかし、どうやって?」

 「う、うーむ……それが問題だ。あんな所に手が出せるのはシンジだけだから
 な……」

 「バ、バカな事言ってんじゃないわよ! シンジにだって 『まだ』
 触らせた事無いわよ!! 何考えてんのよ!」

 「私は……」

 「いいからあんたは黙ってなさい!!」

 「とにかく、下手に手ぇ出したら停学よ。分かってんでしょうね」

 『シンジにだって触らせた事無いのに他のやつに触られてたまるもんか』

 「く、くそーーーっ!

 「大丈夫よ相田君!」

 「え?」

 「私たち女子にはその手は通用しないわ。さーアスカ、観念してさっきの写真を
 おとなしく差し出す事ね」

 「あ、あんたらねー! 何で相田なんかに協力するのよ!?」

 「相田君、碇君のこの写真、コピーできるわよね?」

 そう言ってネルフ内でのシンジの水着写真を取り出す。

 「ああ、もちろん。朝飯前さ」

 「と、いうわけよ」

 「こらー! その写真いつの間に撮ったのよ!? 返しなさい!」

 「もちろん返してあげるわよ。コピー取った後でね」

 「アスカこそ早く写真出した方がいいわよ。みんなの前で脱がされたくないで
 しょう?

 「女子でもそういう事すれば停学もんよ!! だいたい、私にそう
 いう趣味はないわ!!」

 「あら、女の子どうしのコミニュケーションの一環よ」

 「そ、何の問題も無いわ。アスカが早く写真を出せばいいだけなんだから」

 『それはそれで面白そうだな。いい写真が撮れそうだし』 (ケンスケ+男子生徒)

 『くっ……さすがに数が多いわね。どうする……? 先手必勝で二、三人殴り
 倒そうかしら……。それともリツコ呼んできてこいつらを襲わせようかしら……』

 と、アスカがどこか暴走した考えをしていると……

 返して

 レイがすっとアスカと女子の間に入る。

 「う……」

 レイがシンジの事で怒るととても怖いという事は既に全校中に知れ渡っているので、
 このままシンジの写真を持っていてもいいのか? と女子達はたじろぐ。また、
 こっそりとレイやアスカの写真をポケットに隠していた男子達も怯えだす。

 「返して」

 「は、はい、ごめんなさい!

 「もうしません!」

 「か、返します!

 「そう、良かった」 にっこり

 信じられない事に、写真の回収率は100%だったという。

 『う~ん、さすがはレイ、無言のプレッシャーをかけさせたら右に出る者は
 いないわね。ま、おかげで写真の回収ができて助かったけど』

 「……こーなったらアスカの持ってる写真だけでも絶対に見てやる!

 「そうよ! そうでもしなきゃ気がおさまらないわ!」

 「さー、おとなしく出しなさい!」

 「嫌だって言ってるでしょ!!」

 「何でそんなに嫌がるのよ?」

 「やっぱり碇君と何かあったわね

 「その決定的瞬間が写ってるんでしょ?」

 「きっとあんな事こんな事や……」

 「な、何考えてんのよ!! だいたい分かるけど、そんな事ある
 わけないでしょ! 常識で考えなさいよ!!」

 「じゃあ、何でそこまで隠すのよ?」

 「そうよ。さっきの写真以上の事が写ってるからなんでしょ?」

 「う、うう……

 『そうだ、もう一度レイにこいつらを黙らせてもらおう』

 と思い、レイの方を見る。が、レイは先程取り返したシンジの写真を嬉しそうに
 見つめていた。もはや戦力外である。

 『…………駄目ね。あーなったレイを呼び戻すのは無理ね。シンジがピンチになる
 か、シンジに話しかけられないと戻ってこない……』

 「とにかく、この写真は私のプライバシーに関わるものだから見せるわけには
 いかないの」

 「国民には知る権利があるわ」

 「プライバシー優先よ! なに芸能レポーターみたいな事言ってんのよ。
 ヒカリ、委員長でしょ。何とか言ってやりなさいよ」

 「ヒカリ、アスカと友達だからってひいきしているようじゃ委員長とは言えない
 わよ」

 「そうよ、風紀の乱れを正すのが委員長の務めよね」

 「きっとあの写真、ヒカリが見たら『フケツよーーーっ!』とか言う内容
 なのよ」

 「違うって言ってるでしょーーーっ!!」

 『ヒカリにも見せられないのは確かだけど……』

 「わ、私は一体どうすれば……」 おろおろおろ

 「ん?  ヒ、ヒカリ、前見て、前!

 「え……   !?

 ヒカリはアスカに言われて前を見る。すると、そこにはいつの間に現れたのか、
 初老の教師がこの騒ぎをものともせず、セカンドインパクト時代の話を延々と
 話していた。

 「き、きりーーーつ!!

 教師の登場により、ようやくこの混乱は治まった。


 その後、シンジ、レイ、アスカの三人は、ネルフの呼び出しがあったと言って早退
 した。(もちろん呼び出しは嘘)

 なお、この事件で、ケンスケを中心に反シンジ連合が再結成されたのは
 言うまでもない。



 「……はぁ、一時はどうなるかと思ったよ」

 「まったく、あの女(ミサトの事) 何考えて生きてんのよ!?

 「騒ぎが大きくなるようにしてるのかもね」

 「かもね、じゃなく、その通りなのよ。ま、最低限の常識はあったみたいで、この
 写真はシンジの写真の中には入れてなかったようだけど」

 「そういえば僕 見てないんだ。どんな写真なの?」

 「…………こ、これよ」

 「ん?」

 「珍しく照れるアスカから写真を受け取ると、シンジは真っ赤になる。

 「こ、こ、こ、これって…………ご、ごめん!

 「なに謝ってんのよ。別にシンジが私たちの寝てる間に何かしたってわけじゃないん
 だし」

 「うん、碇くんが謝る事ないよ。私たちが寝てる間に自然にこうなっただけだから」

 「そ、そう? ありがとう。あ、でもひょっとして、またミサトさんが何かしたん
 じゃ……」

 「私もそう思ったけど、その可能性は低いわね。最近、私たち結構体力ついてきた
 し、前のように泥のように眠る事もないでしょ。身体に触られたら気付くわよ」

 「じゃあ……寝相って事?」

 「うん、多分そうだと思う」 にっこり

 『なんか、綾波嬉しそうだな……』

 「とにかく、もう過ぎた事だし、特に何も無かったんだからこの話はお終い。
 そんな事より、今はミサトの処分の方が先よ」

 『寝相とはいえ、あんな事になってたのは照れるし……これ以上話してると迂闊な
 事言っちゃうかも知れないし……さっさと終わらせよう』

 「そうだね、これはちょっと悪質だよね。こんなの皆に見られたらどう言い訳して
 も信じてくれないだろうし……。ミサトさんにちゃんと言っとかないと」

 「甘い!! そんな事であのミサトが懲りるはずないでしょ! ここ
 は一つ、徹底的に思い知らせてやる!」

 「待ってアスカ!」

 「ん? 何よレイ?」

 「残念だけど時間が無くなったの。この続きは来週にしましょう」

 「くっ! これからって時に……まぁいいわ。来週の今頃はミサトなんか
 こてんぱん(死語) にしてやるんだから!!

 という事で……


 <つづく>


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