新世紀エヴァンゲリオン-if-

 第十五部 Kパート (最終回)


 「こんなの皆に見られたらどう言い訳しても信じてくれないだろうし……。ミサト
 さんにちゃんと言っとかないと」

 「甘い!! そんな事であのミサトが懲りるはずないでしょ!
 ここは一つ、徹底的に思い知らせてやる!」

 「待って、アスカ。その前に写真返して

 「え?」

 「私、三人で寝てる写真、宝物にするから返して」

 「そ、そうね、そういう約束だものね。でもレイ、絶対他の人に見せちゃ駄目よ。
 いいわね?」

 『私は机の奥に厳重に隠す事にしよう』

 アスカも捨てるつもりはないらしい。

 「うん、大事にしまっておく」

 「じゃあ、改めてミサトの処分についてだけど……まったくあの女、いったい
 何考えてんのよ! あんな写真見られたらどんな言い訳も
 できないじゃないのよ!!

 「そうだね、ほんとミサトさんにも困ったもんだよ」

 「いつ撮られたのかしら? 全然気付かなかった」

 「二度とこんな事しないように体に覚えさせるしかないわね。この前リツコが
 作ったクスリあったでしょ。あれをミサトに飲ませるってのはどうかしら?」

 「クスリって……あの十歳ほど一気に成長するやつ?

 「そ。あれを二~三個食べさせればミサトもおとなしくなるんじゃないの?」

 「でも、それやっちゃうと僕たちきっとミサトさんに殺されるよ

 「私もそう思う」

 「う~ん、そうね……じゃあ、ミサトの食事に猛毒を混ぜるってのはどう
 かな? リツコならきっと持ってるわよ」

 「多分リツコさんなら持ってるだろうけど……ミサトさん死んじゃうよ」

 「殺すのは良くないわ」

 「そうは言ってもね……あの味覚崩壊女には激辛料理食べさせるくらい
 じゃ全く効き目無いだろうし……。そうだ、ミサトのだらしない姿を写真
 に撮って加持さんに見せるってのはどう?」

 「加持さんとミサトさんって大学の頃から付き合ってるんだろ。それくらい
 知ってるんじゃないのかな」

 「じゃあ、ミサトの車の燃料タンクに砂糖入れるってのはどうかな。一発で
 エンジン壊れるわよ。ミサト、車好きだからダメージ大きいわよきっと」

 「でも、ミサトさんこの前、環境問題のテレビ見た後、随分と影響受けたみたいで、
 全部の車を電気自動車に改造してたわよ」

 「……似合わない事を……。しかし困ったわね……ビール隠した所で次々買って
 くるだろうし…………。あ、そうだ。いい事思いついたわ。ほら、最近ミサト、
 ウエスト気にしてるでしょ。だから、ミサトの料理にだけ砂糖を大量に
 入れるってのはどう? 一カ月もすればきっと太るわよ」

 「まぁ、クスリとか猛毒に比べれば平和的だね」

 「でもミサトさん、気が付くんじゃないの? 味の変化には敏感よ」

 「そこはシンジとレイの腕の見せ所よ。頑張ってね、二人とも」

 「しょうがないな……。確かにミサトさんの悪のりも少しは控えてもらいたいから
 ね……。綾波、色々研究してみようか」

 「うん、味を変えずにカロリーだけ増やせばいいのね。やってみましょう」

 「ようし、その意気よ、二人とも」


 こうしてシンジ達の作戦が始まった。一カ月後、ミサトは持っているスカートの
 殆どが履けなくなり、パニックに陥った事や、真相を知ったミサトとアスカの間で
 大ゲンカがあったりしたのだが、それはまた別の話なので話を元に戻そう。


 そして、いよいよ撮影大会の結果発表の日


 廊下の掲示板に優秀作品と撮影者の名前が貼りだされた。


 優秀作品 50音順

 相田ケンスケ
 碇シンジ
 鈴原トウジ
 綾波レイ
 惣流アスカラングレー
 洞木ヒカリ
 その他


 ……ぬわぜだぁぁぁ!!!

 「何やケンスケ、思惑通り入賞しとるやないか。何騒いどるんや?」

 「僕が入賞するのは太陽が東から登るように当たり前の事なんだ!
 なぜ僕とシンジとトウジが同じ扱いなんだ! 納得いかん!!

 「失礼なやっちゃな」

 「ははは、ケンスケが色々と教えてくれたからだよ。教えてくれなかったらこうは
 いかなかったよ」

 「ううう……それにしてもなぜ、この僕の写真のどこが劣っているというのだ?
 僕がトップのはずなのに……なぜだ……なぜだ……。はっ! 分かったぞ!
 これはきっと、作者の陰謀に違いない!! でなきゃ、この僕が負けるはずが
 ない」

 「あんたバカぁ!? そんな事も分かんないの? 相田の写真と私たちの写真の
 決定的な違い。それはカメラマンとモデルの関係よ」

 「か、関係って……お前らやっぱり……

 「ち、違うわよバカ! どうしてすぐそういった風に考えるのよ!?
 頭ん中、虫が湧いてんじゃないの! 私が言いたいのは、カメラマン
 とモデルの信頼関係って事よ!」

 「信頼関係?」

 「私、碇くんに写真撮ってもらうの、とても嬉しい。碇くんがモデルになって
 くれるの、とても嬉しい。碇くんにはもっともっとたくさん撮ってもらいたい」

 「レイの言った通りよ。撮影して欲しくて撮影されるのと、仕方なく撮られて
 やってるのでは そりゃあ天と地ほど差が出るわよ。相田は単に技術力だけで
 入賞できたようなもんね。あ、もちろんモデルがいいってのはあるけどね」

 「そんな……そんな……そんな…………」

 「二人ともありがとう、おかげで入賞できたよ、本当にありがとう」

 「ううん、お礼なんていいの。私だって碇くんがモデルになってくれたから入賞
 できたんだし、たくさん碇くんの写真が撮れて嬉しかったし。また一緒に撮ろう
 ね」

 「ま、この私がモデルやったんだから当然の結果ね。でも、私たち三人で校舎を
 バックに撮った写真、最優秀賞を獲ったみたいだけど……タイマーで撮ったから
 誰の作品ってわけでもないのよね……。名前書かずに提出しちゃったし……。
 ちょっと惜しかったわね」

 「いいじゃない別に。ちゃんと三人とも入賞したんだし」

 「そうだよ。それに、もし僕たちの名前で最優秀賞なんか獲ったらケンスケが……」

 「確かにそうね。これで良かったのよね」

 「ねぇ碇くん、三人で写ってる写真、学校紹介のパンフレットの表紙になるみたい。
 ……ちょっと恥ずかしいね」

 「う、うん、そうだね」

 「ふふン、これでまた私目当てに入学してくるやつが大勢出そうね。
 ああ、美しいって

 『新入生がシンジにちょっかい出さないようにレイと二人でガードしないといけない
 わね』

 (なお、アスカの危惧通りになる事は-if-の読者の方はご存じでしょう。そろそろ
 本編にも出そうかな……あの子……)

 「さてと、シンジ。撮影大会のドタバタも終わった事だし、今度の休み、遊びに
 行くわよ」

 「え? ああ、この前チケットもらったやつだね。うん、いいよ」

 「碇くん、私にお弁当作らせてね。あ、そうだ。カメラ持って行って、また一緒に
 撮ろうね」

 と、三人は休日の計画に花を咲かせている。


 「……はっ! 僕は何を呆然としてるんだ! シンジ一人いい目を見させて
 たまるものか。トウジ、今の話聞いただろ? 僕たちもネリマワールドに行って
 シンジ達の邪魔を……」

 「いや~イインチョ、ホンマ助かったわ。イインチョがモデル引き受けてくれへん
 かったらどないしよか思とったんや。ほんま、感謝しとるわ」

 「そ、そんな事……。スズハラ、綺麗に撮ってくれたし……私のモデルもしてくれた
 じゃない。私の写真が入賞したのだって、スズハラがモデル引き受けてくれたから
 だし……」

 「それやったらワシの写真が入賞したんはイインチョのおかげや。何ぞ礼をせんと
 いかんな」

 「そんな、お礼だなんて……」

 「いや、ここまま何もせんちゅうわけにはいかん。イインチョ、何でも言うてくれ」

 「へー、鈴原にしてはマシな意見ね。それじゃあヒカリ連れてネリマワールドにでも
 行ってきたら?」

 「ア、アスカ!?

 「ワ、ワシがか!? せ、せやけど……」

 「鈴原くん、洞木さんもきっと喜ぶと思うわ」

 「う……。せや、シンジ、ワシらも一緒に行ってええか?」

 「え?」

 「な、頼むわシンジ、ワシ、こういうの苦手なんや。な、な」

 「僕はいいけど……」

 シンジは心配そうにレイとアスカを見る。

 「まったく情けないわね。女の子一人誘えないわけ?」

 「でも、ワシ”ら”もって言ってたわよ。洞木さんを誘うって事でしょ」

 「れ、礼はせんといかんからな。ワシに異存は無い」

 「スズハラ……」

 「ま、ヒカリのためだし、しょうがないわね。一緒に来る事を特別に許可してあげる
 わ。ただし、ネリマの中では別行動よ! ヒカリだって二人きりの方がいい
 だろうしね」

 ア、アスカ、何言ってんのよ……」 真っ赤

 「いいじゃないヒカリ、照れない照れない。それじゃあ二人ともそれでいいわね?」

 「ワシはそれでええ、けど……イインチョ、ええんか? 勝手に決めてしもうて」

 「う、うん。別に何の予定も無いし……せっかく誘ってくれたんだし……。私も
 それでいいよ。私もお弁当作ってくね」

 「ス、スマンな」

 「良かったわね、洞木さん」

 「ヒカリ、頑張るのよ」

 「ありがとう、アスカ、綾波さん。ほんとにありがとう!

 「よし、そうと決まれば早速集合時間とか場所とか決めないといけないわね」

 やたら張り切っているアスカの指揮のもと、シンジ達は計画を練り始めた。


 ……ぽつん


 『……クッ!! トウジの裏切り者!! くそー!僕だけどうして
 いつも一人なんだ! 誰も、誰も僕の気持ちなんて分かっては
 くれないのかっ!!』

 「そんな事はないぞ!ケンスケ!!」

 「そうだ! お前の心の叫びは、俺達全員の魂の叫びなんだ!」

 「決してお前は一人じゃない! 一人なんかじゃない!! 俺達は
 仲間じゃないか!!」

 「お、お前たち……そうか、そうだったな。僕たちは一人じゃないんだ。こんなにも
 多く仲間がいたんだ……」

 「そうだ! 仲間だ! 仲間は絶対に仲間を見捨てない!!」

 「不幸は分かち合う! そして、一人だけ幸せになろうとするヤツ
 には、を!!」

 「抜け忍(?)のトウジにも制裁が必要だな!」

 「我々もネリマに乗り込むぞ!!」

 「ああ、他のクラスにも教えておこう。同志は山ほどいるからな」

 「クックックッ……。シンジ、トウジ、今のうちに幸せを味わっておくんだな。
 次の休みが君達の命日となるのだからね

 こうして、反シンジ連合は あっと言う間に一大勢力になり、大挙してネリマに
 押しかけた。しかし、それを察知したゲンドウが全保安部員を使い、妨害にあたった
 ために、この日のネリマワールド内は大騒ぎとなったが、ほのぼの空間を作り
 出しているシンジ達には全く関係の無い出来事だった。


 ああ、ケンスケに幸せあらん事を……。


 新世紀エヴァンゲリオン-if-

 第十五部 バトルすちゅーでんつ大撮影会 


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