そして、写真提出の朝がやってきた。
一人あたり三枚提出という規則になっているので、自分達が撮影し、現像してきた
写真の中からどれを提出しようかと、みんなワイワイと相談していた。
「よぉシンジ、どの写真出すか決まったのか?」
「いや、まだなんだ。どれを出していいか悩んじゃって……」
「シンジらしいな。しょうがない、僕がアドバイスしてやろうか? 写真撮影する
のも大事だけど、現像してみてその中からベストの写真を選び出すのもまた重要
なんだ。せっかく良く撮れてるのを選ばないと損だろ?」
「うん、そうだね。じゃあ色々アドバイスしてよ」
「ああ、任せておけって」
『よし、これでシンジの写真をチェックする事ができるな。ま、あれだけ釘を
刺したんだから、制服以外無いと思うけど、念のためにな』
「しかし、シンジも結構撮影したんだな。二人にせがまれたからか?
憎いねこの色男」 トゲトゲ
「……ケンスケ、目が恐いんだけど……。それより写真選んでくれるんだろ?」
「あ、そうだったな……。う~ん、そうだな。まず……この三人で写ってるやつ
結構完成度が高いからまずこれは決定だな……あとは…… なっ!?
シンジ、これは一体どういう事だ!!??」
「え?ど、どうしたのケンスケ?」
「何だ何だ どうした!?」
「シンジが約束破って私服の写真でも撮ってきたのか?」
「ひょっとしたら水着だったりしてな。どれどれ…… んなっ!?」
「ほ、ほんとに水着写真……」
「し、しかも思いっきり過激じゃないか……」
「前に見た水着の数段上を行ってる……」
「これは一体どういう事だシンジ!?」
「ど、どうって……。ぼ、僕知らないよ……」
「じゃあ、お前以外に誰がこんな写真撮れるって言うんだ!?」
「そんなのミサトに決まってるじゃないの!!」
「そうね。いつも碇くん、私たちと一緒に泳いでるもの。カメラなんか持って
なかった。こんな事できるのは、するのはミサトさんしかいない」
「シンジ、全ての写真を出せ! みんなでチェックする! 文句は
ないな!?」
有無を言わせずクラスの男達はシンジの写真をチェックし始める。すると、出てくる
出てくる。ミサトが隠し撮りしたと思える写真の数々。今朝、こっそりシンジの
写真に混ぜたようである。
「な、何だこの、いかにも 『今、風呂から出てきたところ』 といった感じの写真
は?」
「お、お前、毎日こんなの見てんのか?」
「みょ、妙に色っぽい……」
「こ、こら! 見るんじゃない! 見るなって言ってるでしょ!」
「碇君、家じゃこんな格好してるんだ……可愛い」
「きゃーっ! このペンギンと一緒にいるとこなんてサイコー!」
いつの間にか女子まで集まって来ている。
「何だよこのやたら身体のラインを強調した服は?」 (プラグスーツの事)
「身体の形そのままじゃないか。あ、鼻血が……」
「ダイバースーツ? 何だよこれ?」
「碇君、この服着てロボット乗ってるんだ。かっこい~!」
(……いいのかミサト? ネルフの機密なんじゃ……)
「ひ、ひ、膝枕で耳掃除だと!? き、貴様、じ、自分一人こんな
いい思いして許されると思ってるのか!?」
「いーや許さん! 神が許してもこの俺は絶対に許さん!」
「俺も許さん!」
「あーっ! アスカや綾波さんも碇君に耳掃除してもらってるー!」
「ずるいわよアスカ! 自分たちばっかり!」
「う、うるさいわね。話の流れで仕方なくこうなったのよ。私のせいじゃないわ」
「何言ってんのよ、嬉しそうにしてるじゃないの」
「だいたい、碇君がいるのにこんな風呂上がりの格好でうろうろ
してんじゃないわよ。何考えてんのよ!」
「おまけに何よこの水着。よくこんなの着れるわね。信じらんないわ」
「うるさいわね。私ぐらいスタイルがいいと何でも似合うのよ。ま、あんた達じゃ
着こなせないだろうけど」
「何ですってーーー!?」
「あ、アスカ、落ち着いて。みんなも落ち着いて、ね、ね」
「ヒカリ、このバカどもを何とかしてよ!」
「私だって何とかしたいけど……こんな写真見せられると……ちょっと……無理
かな……」
「う……。ま、確かに……」
「で、でもアスカ……その……こんな水着着てるの?」
「い、いいじゃない別に。ネルフ内のプールだし、他のやつに見られる事ないん
だし……」
『シンジ以外の男いないし』 (アスカ)
『碇君ならいいんだ……』 (ヒカリ+その他の女子)
「他のやつって……碇君がいるじゃないの」
「一緒に泳いでるんでしょ。こんな格好で碇君の目を汚染させないでよ」
「お、汚染ですってーーー!?」
「だ、だからケンカしないでってば……」 おろおろ
「あ、碇君の写真もある」
「え、どれどれ……へ~碇君って着やせするタイプなんだ……」
「ほんと、結構いい身体してる……」 ぽっ
「見るなーーーっ! 没収よ没収!!」
「いいじゃないの写真くらい」
「駄目!!」
写真を巡り、アスカvsその他の女子という構図が続いていた。ちなみにシンジはと
いうと、ひたすら頭を抱え、嵐が過ぎ去るの待っていた。
『ミサトさん……一体何考えてるんだよ……』
そして、レイはそんなシンジを守るように横に立っている。
「はぁ~ アスカも懲りないわね……。それにしても、アスカがこういう水着を
着るのは想像できても……綾波さんまでこういう水着着るとは思ってもみなかった
わね」
「そう?」
「でも意外……って言うと失礼かも知れないけど、綾波さんも良く似合ってるわ
ね。いいなぁ、アスカも綾波さんもスタイル良くて。何でも着れちゃうものねー。
はぁ~」
「大丈夫よ、洞木さんも似合うから」
「だといいんだけどね……。でもほんと、綾波さんて肌白くていいわね。シミ
どころかほくろ一つ無い。うらやましいな……。私もせめて、このそばかす
なくならないかしらねぇ……。はぁ~」
結構コンプレックスがあるらしく、ヒカリは大きくため息をつく。
「……ねぇ碇くん、私……」
「ストーーーップ!!!」
何やら凄まじい危機感を感じたらしく、アスカは女子たちとの口ゲンカを放り出し、
慌ててレイの口を塞ぐ。
「ん~ ん~ ぷはぁ…… 何、アスカ?」
「何? じゃないわよ! ちょっとこっち来なさい!」
「え?」
「いいから来るの!」
教室の隅にレイを連れてくると、アスカは小声で話しかける。
「あんたまさか、自分の身体にほくろがあるかどうかシンジに聞くつもりだったん
じゃないでしょうね?」
「そうだけど」
「あのねー! どうしてそういう危険な発言しようとするのよ!?
私がレイの発言のフォローにどれくらい苦労してるか知ってるの?」
「危険? なぜ?」
「なぜって……年頃の中学生がどういう想像すると思ってんのよ。それこそ大騒ぎ
になっちゃうわよ。とにかく、そういう事はこの私に聞きなさい。いいわね?」
「? ? ?」
「深く考えなくていいのよ。とにかく、何かを聞く時にはまず私に聞けばいいの。
分かった?」
「う、うん。分かった」
「そう。分かればいいのよ。あ、そうだ。ミサトの事だから、私たちの写真にも
何かしてる可能性が高いわ。レイ、早速調べるわよ」
「ええ、そうね」
慌てて二人は自分の写真のチェックを始める。すると、一番下に撮った覚えの
ない(撮られた覚えもない)写真が一枚入っていた。
「げ…………(思考停止)…………はっ! レ、レイはどうだった?」
「うん、一枚入ってた、これ」
「何考えてんのよあの女!!」
「いつの間に撮ったのかしら?」
「ま、まさかシンジの写真の中にもこれ入ってるの? ……それはないか。もし
入ってたら今頃こんな騒ぎじゃ済まないわね……。レイ、いい事? この写真は
トップシークレットよ。絶対に人に見せちゃ駄目。とりあえず私に預けなさい。
隠しておくから」
「え。でも私、この写真持っていたい……」
「借りるだけよ。後でちゃんと返すから。それならいいでしょ」
「ちゃんと返してね。はい」
レイから写真を受け取り、どう処分するか悩んでいた その時!
「……惣流、そっちの写真にも何かあるみたいだな」
「な、何言ってるのよ。何にもないわよ! う、疑うんなら私やレイ
の写真見ればいいじゃないの」
「いや、その手の中の写真が見たいんだ。当然見せてくれるよな、惣流?」
「だ、駄目よ。これだけは絶対に見せられないわ」
「そう言われるとますます見たいのが人間ってもんだ」
「その通り!」
「さぁ さぁ さぁ……」
「くっ…………」
まるでゾンビのように男子生徒が迫ってくる!
アスカ、連載始まって以来最大のピンチ!
さぁどうするアスカ!?
風雲急を告げる次回にご期待下さい。
<つづく>