新世紀エヴァンゲリオン-if-

 第十五部 Bパート


 「じゃあ話がまとまったところで、碇君、私達のモデルやってくれない?」

 「え、え!? ぼ、僕が!?」

 今度は女子の方がシンジに言い寄ってきた。今まで男子生徒に囲まれていたので
 静観していたが、話がまとまったようなので、女子も行動を開始する。

 「ちょっと待ちなさいよ! 何でそうなるのよ!?」

 「だって、公平にするんでしょ?」

 「うるさいわね。もうその手はくわないわよ。とにかく、ダメなものは
 ダメ!!」

 「何よ、独占欲丸出し

 「一緒に住んでんだから少しくらい譲りなさいよ」

 「そうよ。別に撮らせてくれって言ってるわけじゃないんだし」

 「何でそんなもん撮らせてやんなきゃなんないのよ!! 私だって
 見た事無いんだから!!」

 「私は見……むぐ

 「いいからあんたは黙ってなさい! とにかくダメ!!

 「……まぁいいわ。でもアスカ、今から校内では プライバシーを侵すような写真
 以外は撮り放題よ。私達が碇君を撮影するのに、何の問題も無いって事知ってる?」

 「くっ……」

 「カメラを意識してない時の方が自然な表情が撮れるしね」

 「そういうのを隠し撮りって言うのよ!!」

 「別に隠れるつもりはないわ。堂々と撮るもの。じゃあ相田君、カメラの事教えて
 ね」

 「ケンスケ、俺達にもちゃんと教えろよ」

 「はいはい、並んで並んで」

 「ちょっと! シンジが一番に決まってるでしょ!」

 「相田くん、約束守って」

 「ああ、分かってる。みんな同時に教えられるさ。とりあえず今は僕のカメラで
 教えるけど、基本はみんな同じだから、学校のカメラを使っても大丈夫なはずだよ。
 後は本人のセンスの問題だけど、それもある程度は技術力でカバーできるさ」

 「せやからそれを教えてくれ言うとるんや。前置きはええから早よ教えてくれ」

 「ああ、分かってるよ。まず……」


 こうして、ケンスケのカメラ講座が始まった。まさに、ケンスケにとって至福の
 瞬間だった。

 『ああ、今日は何ていい一日なんだ。校内撮影大会、一年中やってくれればいい
 のに……。ああ、僕は世界一の幸せ者だぁ~~~っ!!


 しばらくして、ケンスケのカメラ講座も終わり、クラス内はケンスケとトウジの二人
 だけが残っていた。

 「……しっかしケンスケ、ほんま嬉しそうやな」

 「ふっ、当たり前じゃないか。ようやく僕の時代がやって来たんだ。こんな喜ばしい
 事はない。僕はきっと、今日のために生まれて来たんだよ」

 「さよか。しかしええんか? ワシらに色んな技術を教えて」

 「何で?」

 「黙っとったらケンスケが一番になるんは確実やったんと違うか? それをあんなに
 熱心に教えるとは意外やったわ」

 「何だ、その事か。さっきも言ったように、カメラに関して僕は一切の妥協は
 しない。教えられる事は全て教えるさ」

 「ほぉ~、見直したわ」

 「それに、何も知らない素人相手に勝つのは当たり前だろ。少しはライバルのレベル
 を上げとかないとつまらないじゃないか。そして、その上で、圧倒的実力差を見せ
 つけて、完膚なまでに叩き潰す。それがってもんさ。そうだろ、トウジ?」

 「……前言撤回……。しかし、えらい自信やな」

 「ふっ、当たり前じゃないか。カメラ道は奥が深いんだ。いくら僕が指導したって、
 付け焼き刃じゃ何もできないさ。烏合の衆が何人集まろうと僕の敵じゃないね。
 あえて言おう! カスであると!!

 「ま、確かにケンスケは毎日カメラいじっとるし、これまでにも綾波や惣流の写真を
 山ほど撮影しとるからな。どんな構図がええのかよう分かっとるんやったな。
 それに、今までの写真の中からも選べるさかい、えらい有利な訳か」

 「ふっふっふっ……続々と現像されるケンスケ驚異の写真集……。
 ふっ、全校トップは間違いないな。ふっふっふっ……」

 「しかし、ま、しばらく商売はできんな

 「へ、何で?」

 「クラス中の男どもがみんな綾波や惣流を好きなだけ写真に撮るんや。ワシらから
 買う必要なくなるやろ。おまけに女子もシンジ狙ろとるやろうし、しばらく売り上げ
 はゼロやな」

 「し、しまったぁぁぁ!! あまりに嬉しくてそこまで考えてなかった……」

 「はぁ? ケンスケも抜け目ないようでどこか抜けとるな」

 「くぅ~~~。こうなったら絶対に校内トップになって、僕の実力を
 全校生徒に思い知らせてやる!そして、僕の撮る写真がその他の
 連中の写真とは次元が違う事を知らしめ、再び芸術品として
 売り出してやる!!

 「おおっ!ケ ンスケが燃えている!!」

 「ふふふふふ……くっくっくっくっく……あーーーっはっはっはっは!!

 ケンスケの不気味な笑い声は、校舎中に響き渡ったという。

 ・
 ・
 ・

 「へー今度学校でそんな事があるんだ。なかなか面白くなりそうね。じゃあ、シン
 ちゃんは当然レイとアスカを撮るんでしょ」

 「はい、二人ともモデルになってくれますから」

 「ふふふ、楽しみね~。どっちを撮った写真が上位に入るか競争ね、二人とも」

 「……レイ、勝負よ……ってな訳にはいかないのよね、これが」

 「そうね」

 「へ? 何で?」

 「だって、そうすると碇くん、悩んでどっちも撮ってくれなくなりますから」

 「そ。だから二人セットでモデルになってもらう事にしたの」

 「ほー、随分とまた仲のいい事で。じゃあ勝負はなしって事?」

 「まさか。それじゃ面白くないじゃないの。レイとの勝負は、シンジの写真を撮って
 どっちが上位に入るかで競う事にしてるの」

 「ふ~ん、シンちゃんがモデルか。もてるわね~コノコノ!

 「か、からかわないで下さいよミサトさん!

 「で、ここはやっぱり、色っぽくセミヌードあたりを狙うんでしょ? あ、ひょっと
 して全部脱いじゃうのかなぁ~?

 「……ミサトって相田と同じレベルね。まったく、いい加減大人になったら?
 学校で制服着て撮るのに決まってんじゃないのよ」

 「何だ、そうなの? 単なる制服か~。つまんないわね。じゃあ、レイが撮影する
 時はシンちゃんとアスカのツーショット、アスカが撮影する時はシンちゃんとレイの
 ツーショットって事になるのね」

 「え?」×3

 「あら、だって学校紹介のパンフレット用の写真でしょ。だったら男女ペア
 方がいいんじゃないの? 写真としてもそっちの方が完成度高いわよきっと」

 「私は別に構いませんけど」

 「レイがいいんなら私もいいけど……。でもそれだとレイとの勝負の行方が
 ややこしくなるんじゃないのかな……シンジ一人ならともかく」

 「別にいいじゃない。そんなに深く考える事じゃないわよ。じゃ、勝った方が
 シンちゃんとデートって事で決まりね」

 「ミ、ミサトさん!」

 「いいじゃないデートくらい。それとも、嫌なのかなぁ~~~?

 「そ、そんな事は……ないん……です……けど……」

 レイとアスカの視線を感じつつ、シンジは赤くなり、うつむきながもそう答える。

 「じゃあ決まりね。レイとアスカもそれでいいかしら?」

 「問題ありません」

 「ま、張り合いが出るってもんね。ところでレイ、念のため言っとくけど、あくまで
 ツーショットって事だから、抱きついたり腕組んだりするの禁止よ、いいわね?」

 「……手繋ぐくらいいいよね?」

 「う。ま、まぁ、そのくらいなら中学生らしいと言えなくもないか……」

 (……そうか?)

 『……相変わらず僕の意見て……。それにしても、二人とも気合入ってるな。
 ……でも、僕とデートなんかしたって嬉しいのかな? ……良く分かんないや。
 そりゃあ、二人と一緒にいると楽しいけど……。二人ともそう思ってくれてるん
 だとしたら……嬉しいな……』

 『碇くんとデート……碇くんとデート……碇くんとデート…………』

 『さーて、シンジにどこ連れてってもらおうかなぁ~?』

 シンジ、レイ、アスカ、三人それぞれの思いを見透かしているように、ミサトは
 三人を見守っていた。

 『ふふふ、面白くなりそうね。明日からが楽しみだわ』

 ……いや、単に面白がってるだけのようであった。


 そして翌日。いよいよ全校生徒による撮影大会が始まった!


 <つづく>


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