新世紀エヴァンゲリオン-if-

 第十四部 Bパート


 「こ、凍ってる!?」

 「そ。あいつら、私が作った温度調整装置を勝手に作動させたのよ。この雪は
 その副作用ね。色々問題があって実用化を見送っていたのを無理に使うなんて……。
 やっぱり全員合わせても私に劣るとも勝らないわね、ふッ……」

 「問題って?」

 「スイッチを入れた瞬間に、周囲十メートル四方の生物が凍っちゃうの」

 「そんな危険なもん、何で置いとくのよ! さっさと分解しなさいよ!
 何考えてんのよまったく……」

 「私の作った物を勝手に触るのがいけないのよ。所詮、凡人には天才の作る物を
 理解する事はできなかったって事ね」

 「うわっ! ほんとだ。隣の部屋で人が凍ってる!」

 「もう止まってるんでしょうね、この機械。私達まで凍らないでしょうね?」

 「ええ、作動と同時に壊れたみたいだから、もう大丈夫よ」

 「あの……赤木博士……この人たち、死んでるんですか?」

 「いいえ、一気に凍ったから仮死状態になってるだけね。蘇生はできるわ。
 もっとも、今なら転がすだけで簡単に殺せるけどね。ふふふふふ……」

 ※ 危険なので絶対にマネしないように

 「相変わらず怖い女ね。でもリツコ、蘇生させるとしても、またこんな事繰り返すん
 じゃないの? 大丈夫なの?」

 「大丈夫よ。二度と反乱なんて起こさないようにするから」

 「どうやって?」

 「私の作った、この超小型爆弾を全員の体内に埋め込んでおくわ」

 そう言ってリツコは小さなカプセルを取り出し、うっとりと眺めている。

 「に、人間爆弾……」

 「ガイゾック……」

 「ふっふっふっ……二度とこの私に逆らえないようにしてあげるわ……。
 もし逆らったら……

 ボン……

 ふふふふふ……

 その後でサイボーグの実験のための材料になってもらおうかしらね……。

 ふふふ……ほーーーっほっほっほっ!!


 ボカッ!!


 「……いったーい。何するのよミサト?」

 「あんたね、そういうの やめたんじゃなかったの!?」

 「あ……そうね、つい……」

 「ついじゃないわよ。だいたい、いくら何でも人道上問題があるわよ」

 「大丈夫よミサト、爆弾と言ってもこんな小さなものだし。殺傷力なんて無いわ。
 せいぜい、死ぬほど痛くて のたうち回るだけよ。単なる脅しよ……って、
 な、何よその目は?

 ……いいわ、そんなに信用できないのなら試しに一つ爆発させてみるわ。それなら
 信じられるでしょ……って、何そんな所に隠れてるのよ? 大丈夫だって言ってる
 でしょ」

 「万が一のためよ」

 「そうよ。巻き添えで死にたくないもの」

 ミサト達は四人とも部屋の隅の物陰に入っている。

 「まったくもう……大丈夫だって言ってるのに……。ほら、手の上に乗せて爆発
 させても大丈夫なんだから」

 ぽちっ


 ちゅど~~~ん!!!


 辺りは爆煙につつまれた。

 「……やっぱり……」

 「こうなると思ったわ」

 「あんなのが体の中で爆発したら死んじゃうよね」

 「私もそう思う」


 「ケホッ! ……おかしいわねーたったあれだけの火薬でこんな爆発が起きる
 なんて……そっか、きっと私が天才だから、想定の倍以上の威力を引き出してしま
 ったのね」

 『普通、天才ならそんなミスなんてしないわよ……』 (全員の考え)

 「そんな事よりリツコ、大丈夫なの?」

 「ええ、もちろんよ。私は色々と危険な実験してるから、万一に備えて強化白衣
 を着てるから」

 「……また怪しいもんを……」

 「でも、さすがに今のはびっくりしたわね。もう少し爆発が近かったら危なかった
 かも知れないわね。何たって、私の作った爆弾だものね」

 「爆心地はリツコよ」

 「…………そんなに私の事いじめて楽しい?」

 「ええ、とっても! ……で、こいつらの処分は後で考えるとして、この雪
 どうするのよ?」

 「大丈夫よ、こんな事もあろうかと思って、ちゃんとウェアーとスキーセットを
 用意してあるわ」

 「そうじゃないでしょー!」

 「く、苦しいわよミサト、首絞めないでよ。ちゃんとミサトの分も用意してある
 から」

 「それならいいのよ」

 「え? いいんですかミサトさん、そんな事で……」

 「だって、起きちゃったものは仕方ないじゃない。機械が止まってるのならそのうち
 溶けるでしょ。だったら楽しまなきゃ損よ」

 「さっすがミサト、いい事言うわね。私も呼び出されただけで今日は休みだし、
 楽しまなきゃね」

 二人は嬉々としてスキーの準備を始めた。

 「……ねぇシンジ、あの二人が友達だってーの、良く分かるわね」

 「うん、類が友を呼んだんだね」

 「ほんとね。二人とも昔からこんなのだったのかな?」

 「ほらあなた達、ぶつぶつ言ってないで、外に行くわよ」

 「心配しなくてもちゃんとスキーは用意してあるわ。ウェアーは……そうね、プラグ
 スーツで代用できるわね。保温機能もあるし。さ、行くわよ」

 「はぁ~~~」×3

 ため息をつきながらも、仕方がないと思いながら、三人はミサトとリツコの後に
 ついていった。

 ・
 ・
 ・

 「碇くん、ミサトさんに教えてもらって作ったの、どうかな?」

 「あ、雪うさぎってやつ? うん、可愛いね」

 「ほんと? 良かった。碇くんのは雪だるま? 可愛い」

 「はは、そう? 本当はもっと大きいの作りたかったんだけど、雪って思ってたより
 重かったからこの大きさになったんだ」

 「そうね、私も雪って初めて触るから、なんだか戸惑っちゃう。でも、冷たいけど
 とっても綺麗ね」

 「うん、真っ白い雪って、なんだか綾波に良く似合ってるね」
 
 「い、碇くん……」 赤~

 あ、いや……その……つまり…… 赤

 二人が真っ赤になっていると、そこへアスカとミサトが滑ってくる。幸い、
 今の会話は聞かれていないらしい。

 「あら二人とも、相変わらず仲いいわね。どれどれ、うん、結構可愛く作れたわね。
 初めてにしちゃあ上出来ね」

 「何言ってんのよミサト、雪で人形作って遊ぶなんて子供のする事よ。やっぱり、
 雪と言えばスキーよ。ほら、シンジ、レイ、私が教えてあげるからさっさと板を
 履きなさいよ」

 「でもアスカ、僕、スキーってやった事無いし……」

 「私も……。さっきちょっと履いてみて転んじゃったし……痛いの嫌だし……」

 シンジとレイは、一度滑ろうとして転んでしまったので、とりあえず雪遊びをして
 いたのだった。アスカは久し振りのスキーで嬉しくて滑り回っていたが、やはり
 二人が気になるのか、戻ってきたところだった。

 「な~~~に言ってるのよ。そうやってうまくなってくんじゃないの。最初から
 うまいやつなんていやしないわよ。怖がってちゃ、何にもできないわよ」

 「そうよ、アスカの言う通りよ。シンジ君大丈夫よ、痛くないから。お姉さんが
 手取り足取り、教えて あ、げ、る

 「あ、あの……ミ、ミサトさん……」

 「ミサト!! 何かミサトが言うといやらしいのよ!!」

 「あら、そう? アスカの考えすぎじゃないの?」

 「そんな事無いわよ。見なさい、レイなんか過敏に防衛本能発揮して、シンジに
 くっついちゃったじゃないのよ」

 「あらほんと。シンちゃんの腕にしがみ付いてるわね……。大丈夫よレイ、取ったり
 しないから、そんな目で睨まないでよ。冗談なんだから」

 「やっぱりからかおうとしてたんじゃないの。とにかくレイ、離れなさい。いつまで
 もくっついてるんじゃないの」

 アスカが二人を(嫌がるレイを)引き離すと、そこにリツコがやってきた。

 「あらシンジ君、レイ、滑らないの?」

 「ちょ、ちょっとリツコ!?」

 リツコの身に何が!?


 <つづく>


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