新世紀エヴァンゲリオン-if-

 第十四部 Aパート


 ある平凡な日曜日、珍しくミサトが早く起きてきたので、
 シンジ、レイ、アスカ、ミサトの四人は朝食を取っていた。

 と、その時、ミサトの携帯に連絡が入る。

 「はい、葛城です。……え? 何ですって!? それって……ええ、
 分かった。すぐ行くわ」

 「どうしたんですか、ミサトさん?」

 「シンジ君、レイ、アスカ、すぐに本部に行くわよ

 「え?」

 「まさか、使徒?

 「まだ来るの?」

 シンジ達に緊張が走る。

 「違うわ、使徒じゃないわ。でも、大事件が発生したらしいの。とにかく
 急いで」

 シンジ達は、何だろうと思い顔を見合わせたが、ミサトの様子からただならぬもの
 を感じて、慌ててミサトの後を追い、車に乗り込む。ちなみに、シンジが助手席で、
 レイとアスカが後ろである。最も問題の無い配置と言える。

 そして、かなり乱暴な運転でカートレインに乗り込み、ジオフロントへ下る。

 視界が開けてくると、そこは一面の銀世界だった。

 「な……何ですかミサトさん、あの白いの? まさか、ってやつですか?」

 「あんたバカぁ!? 何でジオフロントに雪が降るのよ! そもそも、
 日本には冬は無いはずでしょ」

 「アスカ、ここは地下よ。季節は関係無いわ。それに、私も見た事は無いけど、
 碇くんの言うように、これは雪というものだと思う」

 「……確かに雪に見えるわね……」

 「ええ、これは確かに本物の雪だって連絡があったわ。間違いなく雪よ。
 そう言えば、シンジ君もレイも雪を見るのは初めてだったかしらね」

 「はい、TVや写真以外で実際に見るのは初めてです」

 「私もそうです。でも、綺麗なものですね」

 「ドイツにはちゃんと冬があるから私は見た事あるけどね。それじゃあミサト、
 本物の雪だって言うのなら、何でジオフロントの中に雪が積もってんのよ?
 いくら何でも非常識よ。こんな事あるはずないのに……」

 「いるでしょ一人、非常識な事をするヤツが

 「……なるほど」

 ミサトの一言で、アスカを始めシンジ、レイも納得し、この騒ぎの元凶と思える
 人物の研究室へ向かった。


 「リツコ!!」

 「わ、私じゃないわよ」

 「嘘おっしゃい! こんな非常識な事をする人間がリツコ以外にいるはずない
 でしょ。素直に吐けば楽になれるわよ」

 「……あのねミサト、人を犯罪者みたいに扱うのはやめてちょうだい。今日の事、
 本当に私じゃないんだから」

 「本当に~~~?」

 ミサトやアスカは、思いっきり疑わしそうにリツコを睨む。

 「ほ、ん、と、う、に、よ!」

 「じゃあ一体、誰がこんな事を……」

 「下っぱーズの連中の仕業よ」

 「下っぱーズ?」×4

 「そ、私直属の科学者集団の事よ。私はそう呼んでるの」

 「ああ、あのリツコ予備軍」

 「失礼ね、私の若い頃……って今でも十分若いけど……あんな下っぱーズの連中
 よりよっぽど優秀だったわよ。全員合わせてやっと私の足元に及ぶくらいよ」

 「はいはい、リツコの自慢はいいわ。じゃあ、あのマッドサイエンティストの集団
 が何でこんな事したのよ? そもそも、リツコの直轄でしょ?」

 「ちょっと色々あって、反乱起こしたのよ」

 「反乱? また穏やかじゃないわね、一体どういう事?」

 「私の方針についてちょっとね……そう、あれは三日前の事……」

 ・
 ・
 ・

 「赤木博士、一体どうしたのですか? ここの所、やけにおとなしいじゃ
 ありませんか」

 「以前、メノレモB10を作ってから、これと言った人体実験をしていない」

 「一体どうしてしまったのですか!? 元の赤木博士に戻って
 下さい!」

 「何かあっても『科学の発展のための尊い犠牲』とか『あなたの
 死は決して無駄にはしない』の一言で済ませていたあの頃の博士に
 戻って下さい。お願いします」

 「お願いします!!」

 「……あなた達の言いたい事は分かるわ。……でもね、いつかあなた達にも
 分かる時が来るわ。人は科学だけでは生きていけないという事が……」

 「堕落だ!!」

 「人は科学力を極め、さらに先に進まねばならない!」

 「それを一番分かっているはずの博士が何て事を!」

 「……いくら話し合っても無駄のようですね。我々は、独自の道を進みます」

 「それでは、失礼します!!」

 ・
 ・
 ・

 「……てな事があったのよ。まったくあいつら、私だってあんな事やこんな事を
 やりたいのを我慢してるってーのに。あー腹立つわねー!

 「リツコ、落ち着きなさい。しかしあんた、そんな事言ってたの……。一体、
 どんな実験してきたんだか……」

 ちなみに、ミサトの言う そんな事とは、『科学の発展のための尊い犠牲』
 『あなたの死は決して無駄にはしない』という事です。

 「大丈夫よ、ちゃんと供養してるから」

 「それならいいんだけど……ってちょっとリツコ、あんた今、サラっととんでも
 ない事言わなかった?」

 「気のせいよ」

 「そうかしら……何か恐ろしい事聞いたような気がしたんだけど……」

 「ねぇミサト、そんな事より、リツコってこれでおとなしくなってるの? 私達、
 十分被害受けてるんだけど……。一体、今までどんな暴れぶりだったのか、想像も
 つかないわね」

 「確かにそうね、いっその事、リツコをどこかの寺にでも放り込んで、一生仏に
 仕えさせるのが世の中のためかもね」

 「あ、それいい、早速実行に移しましょ」

 「そうね、でもその前に、リツコの下っぱーズを何とかしないといけないわね。
 こんな事繰り返されたんじゃたまんないもの。早速保安部に行って捕まえなきゃ」

 「ちょっとミサト、アスカ、何勝手に話進めてんのよ。だいたい、下っぱーズの
 連中なら、探さなくても隣の部屋にいるわよ」

 「な、何でそれを早く言わないのよ! 早速とっ捕まえなくちゃ」

 「無駄よ、凍ってるもの

 「こ、凍ってる!?


 <つづく>


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