新世紀エヴァンゲリオン-if-

 第十三部 Gパート


 次の日の朝。


 うわぁぁぁーーーっ!!!

 またもシンジの悲鳴がこだまする。

 「……あれ……私……また……?」

 「……どう思う、ミサト?」

 「どう思うって……嘘ついてるようには見えないし……」

 「そうよね、問題はそこなのよ。本人に自覚が無いんじゃ責めるわけにもいかない
 し……。でも、二日連続って事はちょっと異常だし……。このまま放置はできない
 わね」

 「う~ん……二度ある事は三度あるって言うしね……ひょっとして、本格的な
 夢遊病かしら……」

 「どうする?」

 「とりあえず、リツコにでも相談してみるわ」

 「リツコ~~~?」

 「そう露骨に嫌な顔しなくてもいいじゃない。あれで結構色々と訳わかんない知識
 持ってるから意外に役立つかもよ。とりあえず相談してみるから、あなた達は普通に
 学校に行ってなさい」

 ミサトはそう言ってアスカをなだめ、リツコに相談するために、ネルフ内のリツコの
 研究室に向かった。



 「と、いう訳なんだけど、どう思う?」

 「……あのねミサト、いきなり 『と、いう訳なんだけど』 って言われて分かる
 わけないでしょ。何があったのかちゃんと説明しなさいよ」

 「あれ? おかしいな。こういう事はカクカクシカジカで通じるはずなんだ
 けど……」

 「何訳の分かんない事言ってるのよ。相談したい事があるんだったら、ちゃんと
 状況を説明しなさい」

 「実はね、こんな事があったのよ」

 そう言って、ミサトは先日の出来事(第十三部Aパート~)をリツコに説明する。

 「……そう、そんな事があったの……。レイ……気にしてたのね……。やっぱり
 人の手でやっちゃいけない事ね……」

 「そうね、でも生まれて来て良かったと思ってくれてるのがせめてもの救いね。
 あの子たちのおかげで」

 「ええ、それにしてもシンジ君やアスカ、随分としっかりしてきたわね」

 「そりゃそうよ、この私が保護者だもの」

 「確かに。ミサトがだらしないから自分がしっかりしなきゃと思ってるのね。ミサト
 はいい反面教師ね」

 「……喧嘩売ってるわけ~?」

 「あら、反論できるの?」

 「うう、そう言われると……」

 「でしょ。面倒見てもらってるのは、どっちかと言うとミサトの方だものね」

 「ま、まぁその話はいいじゃない。今はレイの事が問題でしょ。ね、ね?」

 「はぁ~。ま、しょうがないわね。さっきのミサトの話からすると、レイの行動
 は……一言で言うと子供ね」

 「子供? そりゃま、十四歳は子供だけど……?」

 「私が言ってるのは、もっと小さい子供の事よ。親のそばにいないと不安になる
 っていうあれよ」

 「そっか。そうよね……この前の事もあるし。四人で一緒に寝た朝、レイってやたら
 機嫌が良かったのよ。ずっと一緒の部屋で眠りたいっていう思いが強いのかしらね」

 「多分そうね、もしくは、シンジ君がやっぱりレイを引き付けるフェロモン出してる
 か、ね」

 「あ、それ私も考えた。で、どうすればいいと思う?」

 「そうねぇ……とりあえずこの目で状況を確かめたいわね。明日日曜だし、今晩
 お邪魔させてもらうわね。久し振りにシンジ君の作る料理を食べてみたいし、だい
 いち、アスカの事だから今日辺りレイを見張るつもりなんでしょ?」

 「そのつもりみたいね。とりあえずシンジ君の部屋にを掛けるって言ってたわ」

 「鍵? でも確か、シンジ君の部屋ってふすまじゃなかった?」

 「ええ、そうよ。だから部屋の中からつっかえ棒をするのよ」

 「あ、そういう事」

 「アスカにとって死活問題だものね。シンちゃんの貞操の危機だもの」

 「ま、レイに限ってそれはないと思うけど。じゃあ今晩は三人でレイの行動を観察
 ね」



 そして、あっと言う間に深夜

 アスカ、ミサト、リツコの三人は、レイの部屋が見やすい位置でレイが出てくる
 のを待った。

 「ねーミサト。レイ、今日もシンジの部屋に行くと思う?」

 「二度ある事は三度あるって言うし、可能性は高いわね。レイが部屋から出て来な
 ければ問題解決で話は早いんだけどね」

 「だといいんだけどね」

 「二人とも静かにっ レイが出てきたわ」

 「はぁ~ 今日もか」

 「リツコ、どう?」

 「確かに、完全に寝てるようね」

 「私達の前を通っても全く気付いていないようだしね。やっぱり夢遊病かしらね」

 「やっぱりシンジの部屋に向かってる。ミサト、リツコ、つけるわよ」

 三人は一定の距離をおいてレイの後をつける。

 レイはシンジの部屋の前に来て、ふすまを開けようとする。しかし、内側から
 つっかえ棒で鍵をしているため、ふすまは開かなかった。

 『三日連続で添い寝なんてさせない……私だってそんなにしてないんだから……』

 アスカがそんな思いで見ていると、レイはふすまをカリカリと引っ掻き始めた。

 「何やってんのかしらレイのやつ?」

 「ふすまを掻いてるように見えるわね。まるでネコね」

 「ネコ!?」

 『か、可愛い……』

 「ねえ、ミサト」

 「ん? 何、リツコ?」

 「問題解決よ」


 <つづく>


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