新世紀エヴァンゲリオン-if-

 第十三部 Hパート (最終回)


 「問題解決よ」

 「へ?」

 「どういう事よ、リツコ?」

 「私がレイを引き取るわ。そうすれば全て解決よ」

 「却下!!」 (アスカ)

 「そうよリツコ、何考えてるのよ。犠牲者はマヤ一人で十分でしょ。
 レイまで毒牙に掛けるつもり?

 「何よそれ。どうも誤解があるようだけど、私は別にそんな趣味は無いわよ。ただ、
 今のレイがネコみたいで可愛いなぁと思って……。アスカは賛成よね。そうすれば
 シンジ君と二人でいられるわよ」

 「却下!! レイの人生潰すわけにはいかないの!
 だいいち、レイがシンジと離れて暮らす事を認めるわけないじゃないの」

 『私だったら絶対に嫌だもの、レイだってきっとそうに決まってるわ』

 「人生潰すって……えらい言われようね」

 「リツコ、バカな事言ってないで対策考えなさい」

 「…………」

 『私は本気なんだけどな……』

 「リツコ!!」×2

 「わ、分かったわよ。とりあえず、レイに布団掛けなさい」

 「え? あ、シンジの部屋の前で丸まって寝てる……

 「ますますネコね……リツコが欲しがるわけだわ。でも、部屋に連れて帰った方が
 いいんじゃないの?」

 「でも、またシンジ君の部屋まで来るかも知れないでしょ。だから今日の所は、
 この場で寝かすしかないわね」

 「なるほど、確かにそうね」

 その後、三人はレイに布団を掛け、今後の対策を練った。

 「で、どうするの、これから?」

 「シンジの部屋に鍵を掛けてるから、部屋に入られる事は無いけど、毎日これじゃ
 レイがカゼひいちゃうし、私たちが毎日布団掛けるわけにもいかないし……」

 「レイの部屋に外から鍵を掛けるのも人道上問題があるし……う~ん……ここは
 やっぱりレイの望み通り、最初からシンちゃんと一緒に寝かせるべき
 かしら……」

 「駄目に決まってるでしょ! それを何とかするためにこうして
 相談してんでしょ! バカな事言ってんじゃないわよ!」

 「分かってるわよ。冗談だってば。こんな夜中に大声出さないでよ」

 「それじゃあ、アスカがレイを見張ればいいじゃない」

 「え? 私に毎晩、こうしてレイに布団を掛けろって言うの?」

 「そうじゃないわ。アスカとレイが同じ部屋で寝るのよ。そうね……手首に軽く
 紐でも結んで繋いでおけば、レイが寝ぼけて歩き出してもすぐに分かるんじゃない
 かしら?」

 「あのね、私はリツコのような趣味は持ってないの!」

 「だから私もそんな趣味は持ってないってさっきから言ってる
 でしょ!!」

 「まーまー二人とも落ち着いて。じゃあアスカ、シンちゃんの部屋でレイを迎撃
 するというのはどう?」

 「はぁ?」

 「だ、か、ら。シンちゃんの布団に入ってこないように、アスカが先に入って
 おくの。どう、名案でしょ?」

 な、な、な、な、何言ってんのよ!! そんな事できるわけない
 でしょ! 常識ってもんが無いわけー!?

 「で~も~ レイばっかりシンちゃんと添い寝して、羨ましくないの
 かな~~~?」

 「う。そ、それは……」

 「ミサト、毎日こうして遊んでるの? なかなか面白そうね。退屈しないでしょ」

 「まーねー」

 「でも、今のミサトの計画じゃ、根本的な解決になってないわよ。レイがシンジ君の
 部屋に来る事に変わりないもの」

 「そうよ、リツコの言う通りよ。まったくミサトはバカなんだから」

 「だからねミサト、こうすればいいのよ。シンジ君を真ん中にして、レイとアスカが
 左右に川の字になって寝るの。そうすれば問題ないわ」

 「あ、その手があったか」

 問題あるわよ!! ミサトやリツコには倫理ってもんが
 無いの!?」

 「でもレイは反対しないんじゃないの?」

 「多分ね。でもシンちゃんが寝られなくなるわね」

 「じゃあミサトも入れて四人で寝れば? 前回そうしたんでしょ?」

 「却下! 却下! 却下! 却下!! まじめに考えなさいよ!
 どうしてそういう意見しか出てこないのよまったくもう!」

 「そう言ってもねぇ……具体的ないいアイデアが浮かばないのよ。こうしてふざけ
 てるしかないじゃないの」

 「しばらくすればレイも親(シンジ君)離れして、自分の部屋から出てこなくなる
 と思うけど……問題はそれまでどうするかね……」

 『もっとも、レイの場合、ず~~~っと親(シンジ君)離れしない可能性も高い
 けど……』

 「ところで、シンジ君って、レイが布団に入ってくるのに何で気が付かなかったの?
 それも二日続けてなのに?」

 「それは多分、シンジが疲れてるからよ。最近走る量を増やしたから随分疲れてる
 ようだったし、爆睡してるのよきっと」

 「それよ!!」

 「え?」

 「レイもシンジ君同様、爆睡するほど疲れてればいいのよ。身体を鍛えれば精神も
 鍛えられてシンクロ率が上がるのは実証済なんだから、これまで以上に運動メニュー
 を増やせばいいのよ。そうすればレイの夢遊病も消え、シンクロ率も上がる。まさに
 一石二鳥の作戦ね。やっぱり私って天才だわ」

 「ま、確かに、まっとうなアイデアね」

 『リツコにしては』

 「じゃ、話もまとまった事だし、私は寝るわ。おやすみ」

 「あらアスカ、なに逃げようとしてるの。当然、運動メニューの追加はアスカにも
 適応されるのよ」

 「ま、当然ね」

 「えーーーなんでーーー!? 今だって結構運動してるじゃない。これ以上、
 私に走れって言うわけーーー!?

 「別に、走れとは言ってないわ。運動メニューは色々あるんだし……。そうねえ、
 最も効果的に疲れる運動といえば……水泳かしらね」

 「水泳? あれって無茶苦茶疲れるじゃないのよー」

 「だって、疲れるのが目的だもの」

 「私はイヤ」

 「どうしても?」

 「どうしてもよ」

 「……しようがないわね……。アスカがどうしても嫌だと言うなら、もう一つの
 アイデアを実行するしかないわね」

 「何? 他のアイデアがあるの? じゃあそっちにしよう」

 『ほっ、良かった……』

 「どんなアイデアなの、リツコ?」

 「つまりね、レイの行動はシンジ君への信頼、そして、自分の前からいなくなる事
 への不安、少しでもそばにいたい、それらが色々と混ざり合っての行動なのよ。
 だから、レイの不安を取り除けばいいのよ

 「どうやって?」

 「ま、具体的には、おやすみのキス。これでバッチリ治ると思うわ」

 「よし、それ行こう!」

 「冗談じゃないわよ!! そんなのこの私が認めるわけないじゃ
 ないの!!」

 「だったら泳ぐ?」

 「ぐ……」

 「いいじゃないアスカ、毎日シンちゃんに水着姿を見せて悩殺しちゃえばいい
 のよ」

 「え…………」

 「それとも、シンジ君とレイの二人だけで泳いでもいいのかしら。レイばっかり
 シンジ君に水着姿を見せる事になるわよ」

 「どうするアスカ、リツコの言うように、運動始めてから三人ともシンクロ率が
 上がってるのよ。アスカ一人追加メニューをしないと、シンクロ率抜かれちゃう
 かもよ」

 「分かったわよ。やればいいんでしょやれば。……まったく何で私がこんな目に
 あわなきゃいけないのよ ぶつぶつぶつ……」

 「ぶつぶつ言わないの。自分のためでしょ」

 「それに、文句言いながらも、新しい水着買おうと思ってるでしょ」

 「う、うるさいわね」

 「ふふふ 前にレイにあげた水着、アスカにもあげましょうか?」

 「私はあんなヒモ付けて泳ぐ気は無いの!! それに、シンジにはああ
 いうのより中学生らしい水着の方がいいのよ。自分の水着は私がちゃんと選ぶわよ」

 「やっぱり見せつけるんだ」

 「楽しみね、アスカ」

 寝るっ!!

 そう言ってアスカは自分の部屋へ向かっていった。


 「真っ赤になっちゃって、可愛いわね」

 「ほんと、ミサトはいいわね。毎日これが見られるんだから……。さてと、レイは
 朝までこのまま起きないだろうし、アスカは部屋に引き込んだし、私達も寝ると
 しましょう。ミサト、布団あるでしょ?」

 「あるけど……襲わないでよ

 「あのね、何度も言うけど、私にはそういう趣味は無いの!! だいたい、
 ミサトは友達としてはいいけど、女としては私の好みじゃないわ

 「こ、好みって……やっぱりあんた……」 引き

 「や、やーねーミサト、今のは言葉のあやよ。気にしない気にしない。さ、寝る
 わよ」

 そう言ってリツコは、顔に縦線が入っているミサトを引っ張って、ミサトの部屋に
 入っていった。

 ちなみに、その晩ミサトは身の危険を感じて一睡もできなかったという。


 そして数日後、アスカはミサトのヒモ水着ほどではないが、中学生にしてはかなり
 過激なデザインの水着を身に着けてシンジの前に現れた。そして、当然のように、
 それに張り合ってレイもまた、結構過激な水着を身に着ける。

 その後、水泳で疲れたレイは、夜中にシンジの部屋に向かう事は無くなった。
 この作戦は一見成功したように見えた。

 しかし今度はシンジが寝ようとして目を閉じると、レイとアスカの水着姿が目に
 浮かび、全く眠れなくなり、不眠症に悩まされる事になるのであった。


 新世紀エヴァンゲリオン-if-

 第十三部 (今度こそ) <完>


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