新世紀エヴァンゲリオン-if-

 第十二部 Iパート


 「ふふ、アスカったらそんなに早く帰りたいだなんて、よっぽど早く人目につかない
 場所で、シンジ君に祝福のキスしてあげたいのね」

 「ち、違うわよ! 私はただ作者のやつがこういう大会の事何も
 知らなくて、細かい描写ができないって言うから話を進めて
 やってるだけよ!」

 「ブザマね。ゆさくに大運動会でも見せてもらって勉強すべきね」

 「あの……何の話なんですか?」

 「あ、シンジ君は気にしなくてもいいのよ。それよりシンジ君、マンションに帰るの
 楽しみね。照れてるようだけど嫌がってないし。シンジ君もやっぱり男の子ね」

 ぼ、僕はその……」 赤 赤 赤 赤

 「じゃあ碇くん、帰ろ」

 レイはそう言ってシンジの手を取る。つまり、レイとアスカに手を引かれている
 状態である。すると、そこに……。

 「シ~~~ン~~~ジ~~~ィ~~~」

 「え? あ、サブロー」

 「出たわね、変態夕焼け地平線男

 「碇くんに何の用?」

 『この子……やっぱりネルフで拘束して人体実験を……』

 『リツコ、その怪しい注射器、とりあえずしまいなさい。そういうのは保安部の
 連中に任せなさい』

 『……自分の手でやるのが面白いんだけど……』

 『……それ……単なる変態よ……。とにかく話を聞きましょ』

 「シンジ、お前ドーピングしただろ。いーや、したに決まってる。このオレが
 お前なんかに負けるはずがない」

 「ちょっとあんた、自分があっさり負けたからって何言いかがり
 つけてんのよ! シンジがそんな事するわけないじゃないのよ!!」

 「碇くんはそんな卑怯な事はしないわ。ちゃんと毎日練習してた。だから碇くんの
 実力よ。それに、ドーピングなんてするとあぁなるのよ」

 レイはリツコを指差し、そう言った。

 「ううっ……レイって冷たい」

 「ま、自業自得ね。諦めなさい、リツコ」

 「と、とにかく! シンジがこのオレよりも足が速いなどという
 怪奇現象、例え某プラズマの教授が認めても、オレは認めん!!
 しかも彼女がいるだと!? 二人も? このオレでさえいないのに……」

 「結局、もてない男のひがみじゃないの」

 「う、うるさい! とにかく……

 話の途中でサブローはいきなり倒れてしまった。

 「ちょ、ちょっとサブロー!?

 シンジが慌てて助け起こそうとした時、救急隊員が駆けつけてきた。

 「いかんな、日射病のようだ。冬……いや、医務室に運ぶぞ」

 「……あぁ、分かった」

 二人はそう言うと、あっと言う間にサブローを連れ去ってしまった。


 「……大丈夫かなサブローのやつ……でも、今日、日射病になるほど暑かった
 かな?」

 「単にあのバカが軟弱なだけでしょ。まぁ確かにさっきの救急隊員が暑苦しそうな
 格好してたのは認めるけどね。でも、帽子とマスクと白衣は分かるんだけど、何で
 あんなサングラスかけてたのかしら?」

 「そうね。それに……ねぇ碇くん、今の人たち、どこかで見た事ない?」

 「え? 綾波もそう思ったの? 僕もどこかで見た事あるような気がしてるんだ……
 マスクしてたから声も良く分からなかったけど……」

 「そんな事より、早く帰ってシンジの優勝パーティー始めましょうよ」

 「そうね、それが一番大事ね。碇くん、行こ」

 「うん、じゃあ帰りに何か材料買って帰らないとね」

 「あのねシンジ、今日はシンジが主役なんだから、たまにはのんびりしなさいよ。
 料理は私たちが作るから」

 「ほ~、私”たち”?」

 「何よミサト、その言い方は? 私はミサトと違って まともな料理を作る事くらい
 できるのよ。そりゃ……まだちょっとしか作れないけど……」

 「でも、ちゃんとした物を作れるだけミサトよりましね。ミサトもシンジ君に教わっ
 たら?……って、今更もう無理かしらね」

 「う、うっさいわねリツコ! 肩貸してあげないわよ!!

 「ふふ、ごめんなさい。……ところでミサト、気が付いた?」

 「何を?」

 リツコはシンジ達に気付かれないように、そっとミサトに耳打ちする。

 「今の二人、多分碇司令と副司令よ」

 「……やっぱり。私も、ひょっとしたらそうじゃないかとは思ってたんだけ
 ど……。う~ん……前にリツコが言ってた、碇司令はあれで結構親ばか
 だってーの、ようやく信じられそうだわ……しかし……あの碇司令がねぇ~」

 「ちなみに、さっきの子が急に倒れたのは、多分私の作った対人捕獲用
 ニードルガンを使ったんだわ」

 「対人捕獲用ニードルガン?」

 「そ。一瞬のうちに身体中の機能をマヒさせて意識を失わせるの。ま、強力な麻酔
 だと思えばまず間違いないわね」

 「……相変わらず危ないもん作ってるわね……。何に使うために作ったのかは
 あえて聞かないであげるわ。……あ、ちょっとシンちゃん達! 私達置いて帰ん
 ないでよ。もう、冷たいんだから」

 「え? でもミサトさん、ネルフ抜けて応援に来てくれたんでしょ。ネルフに戻る
 んじゃないんですか?」

 「ふふ~ん、言ったでしょ。日向君に任せてるから大丈夫だって。何かあったら
 すぐ連絡するように言ってあるから、連絡が来ないうちは平気なのよん」

 「私も同じく、マヤに任せてあるから問題ないわ」

 「はぁ……。でもいいんですか? ……その……父さんにばれたら怒られるんじゃ
 あ……」

 「あ、その事なら多分大丈夫だと思うから気にしなくていいと思うわ」

 『何たって、本人もこんな所で遊んでるんだし……』

 「しっかし呆れたもんね……それで良く作戦部長が務まるわね。責任者の自覚が
 全く無いわね」

 「あらアスカ、随分と絡むわね。そーんなに私達って邪魔かしら?」

 「早く帰って、誰にも邪魔されずにシンジ君にキスしてあげたいってー
 のが見え見えね」

 「ち、ち、ち、違うわよ! わ、私はただ……」

 「私はただ、な~に?」

 「真っ赤になってちゃ説得力無いわね」

 「う~~~!」

 「アスカ、違うの? 私は アスカも早く帰って碇くんにお祝いのキスしてあげ
 ようと思ってるんだと思ってたけど……私はここでもいいし……」

 「あぁ~~~もぉ~~~っっ!! あんたはどーしていつも
 そーなのよ!? もー少し恥じらい持ちなさいよ!! まったく
 もー!」

 『もう……いつもいつも言いにくい事、サラっと言っちゃうんだから……』

 「ふふふ、相変わらずアスカはからかいがいがあるわね」

 「でもミサト、あんまりお預けしてるとシンジ君に恨まれちゃうわよ」

 「それもそうね、シンジ君も待ちくたびれてるだろうし。じゃ、帰るとするか~。
 楽しみね、シンちゃん

 「ぼ……僕はその……あの……」

 「ふふ、照れない照れない。せっかくキスしてくれるって言ってくれてるんだから、
 喜んで受ければいいのよ」

 「しかも二人分だし、嬉しさも二倍ね」

 「は、はぁ……

 「…………碇くん、いや?

 「え?」

 「私に……キスされるの……いや……なの?

 レイは一気に表情が暗くなった……。


 <つづく>


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