新世紀エヴァンゲリオン-if-

 第十部 Bパート


 「ところでシンジ、このプレゼントってお菓子かな?」

 「そうだね、多分お菓子だと思うけど……それがどうかしたの?」

 「んふふふふふ……。せっかくお茶飲んでるんだし、ちょっとだけ食べてみない?」

 「駄目だよアスカ。これはミサトさんへのプレゼントなんだから、僕たちが食べる
 わけにはいかないよ」

 「そうよアスカ、人の物を勝手に食べるのはいけない事なんでしょ」

 「ちょっとくらいいいじゃない。ミサトだって一人で食べるわけじゃないし、絶対
 私たちにくれるって」

 「でも、開けてもいない物を僕たちが開けるわけにも……」

 「私もそう思う」

 「もー! レイはいつもシンジの味方するんだから~! 二人ともそんな堅い事
 言ってると老けるわよ。いいわよ、私一人で食べるから

 アスカはそう言うと、シンジやレイが止めるのも聞かずに包装を取り、箱を開けた。

 「へー、青いお菓子か~珍しいわね。でも美味しそうね」

 「ほんとだ、珍しいね」

 「ほんと……美味しそう……」

 「ふふ~ん、二人とも本当は食べたいんでしょ。無理しなくてもいいじゃない」

 そう言って、アスカは一つ取り出し、口に入れる。

 「ん~~~結構変わった味ね。初めて食べる味だわ……。ま、美味しいけどね」

 あまりに美味しそうに食べるアスカに、シンジとレイも欲しくなってしまった。

 「アスカ、美味しい?

 「ええ、変わった味だけど美味しいわよ。食べてみたら?」

 そう言って、アスカは少し意地の悪い笑みを浮かべて、シンジとレイに一つずつ
 手渡した。

 「う…………。じゃあ、一つだけ……」

 「碇くんが食べるのなら、私も……」

 『ふふふふふ。これで私一人が怒られる事はないわね」

 二人が食べるのを見て、アスカはこんな事を思っていたりする。

 「どう、二人とも? 結構美味しいでしょ」

 「うん、でも変わった味だね」

 「ほんと、初めて食べる味ね」

 「じゃあ、もう一つ頂こうかな~」

 アスカはそう言って、更にお菓子に手を伸ばそうとした時……

 あぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!

 「うわっ!」

 「きゃっ!」

 「な、なに!?」

 シンジ達は何事かと思い、声の方を向くと、ミサトが驚いた顔でこちらを見ていた。

 あ、あんた達!? まさか、それ食べたの!?」

 「あ、あの……す、すいませんミサトさん、美味しいそうだったのでつい……。
 すいません」

 「ごめんなさい。ミサトさんへのプレゼントだったのに……本当にごめんなさい」

 「そんなに怒らなくてもいいじゃない。ほら、まだこんなにあるんだし……。三十に
 なったんだからもっと大人になって、ケチくさい事言わないでよ」

 「そうじゃないのよ。それ、リツコからもらったんだけど、どうも態度おかしかった
 から、捨てようと思ってた物なのよ」

 「ぶっ!? な、なんでそんなもんこんなとこに置いとくのよ!?
 さっさと捨てりゃあいいじゃないのよ。ネルフにだってゴミ捨ては幾らでもあるん
 だから」

 「だって、証拠もないし、万が一にもリツコの目に入るかも知れない所には捨てらん
 ないじゃないの。だから家に帰ってから捨てようと思ってたんだけど、疲れてたから
 そのままにしてたのよ。まさか食べるなんて思ってもみなかったし……。
 あなた達、大丈夫なの? どこか痛い所とか無い? 病院に行って精密検査した
 方がいいかしら…………」

 ミサトはシンジ達を驚かそうとしているわけではなく、本気でオロオロしていた。

 「ミサトさん、いくら何でも考えすぎじゃないですか? いくらリツコさんでも、
 まさかそこまでは……」

 「私もそう思いますけど……」

 「そーよミサト、いくらあのマッドサイエンティストが危ない性格してるといって
 も、人を実験台にはしないわよ

 「本当にそう思う? 心からリツコの事を信用できる?

 「…………。そう言われれば……不安になってきた……」

 「私も……」

 シンジやレイは、色々と身に覚えがあるので、一気に不安になってくる。

 「ミサト……病院行った方がいいかな? なんだか不安になってきたわ」

 「ええ、それがいいわね。じゃあ早速……

 ミサトが病院行きの準備を始めようとした時、急にアスカが苦しみ始めた

 う……! な、何よ、これ……か、身体が……熱い……」

 「ちょ、ちょっとアスカどうしたの!? 大丈夫!?」

 「アスカ大丈夫? いったい……う! く、苦しい……

 「碇くん!?  い、痛い! 身体が痛い……何……これ……」

 シンジ、レイ、アスカの三人は、うずくまり苦しみ始めていた。ミサトはどうして
 いいか分からず、ただオロオロするだけだった。

 そして、しばらくするとシンジ達の身体の痛みは消え、何とか動けるようになって
 いた。

 「何よこれ、どうなってるのよ!?」

 「え、髪が伸びてる?

 「服がきつい……何、どうなってるの?」

 「あ、あなた達……これは一体……どういう事なの?」

 ミサトは呆然としながらシンジ達を見ていた。シンジ達はミサトの様子が
 おかしいので、お互いの姿を見てみる。

 そして……

 な゛っ!?

 三人は口をパクパクさせながら、何も言えなくなっていた。

 シンジ達は、三人とも十歳ほど歳を取っていた。
 
 ちょっとミサト! これは一体どういう事なのよ!?」

 アスカは勢い良くミサトに詰め寄った。しかし、十四歳の服に無理矢理二十四歳の
 身体が入っているようなものなので、一気に服のあちこちが破けていった。

 「き、きゃあ~~~~~~っ!!」

 アスカはその場に座り込み、必死で身体を隠していた。

 「シ、シンジ! こっち見ないでよ!!」

 「わ、分かってるよアスカ」

 「アスカ、とりあえず私の部屋に来なさい、服貸してあげるから。そんな格好じゃ
 病院にも行けないでしょ」

 「当たり前じゃないの! リツコめ~、よくも人をこんな目に逢わせてくれた
 わねー。絶対に復讐してやるんだから!

 「ええ、私も手伝ってあげるわ。レイ、あなたも来なさい、ゆっくりとね。でないと
 服破けちゃうわよ」

 「はい、分かりました」

 「シンジ君もとりあえず着替えて来なさい。大きめの服持ってたでしょ」

 「はい、そうします」

 そう言って、シンジは自分の部屋に向かった。


 「ミサト、服はいいとして、下着はどうすんのよ? 人のなんて嫌よ」

 「分かってるわよ。この前買ったとこだからそれをあげるわよ」

 「それならいいんだけど……って、ミサト、こんな派手なの付けてんの?

 「だーーーっ!! それじゃない! こっちの使いなさい」

 ミサトは慌ててアスカの手から派手な下着を取り上げ、普通の下着を手渡した。
 レイも同じように下着を受け取り、着替え始めていた。

 そして、アスカは派手なボディコン系の服を選び、レイはミサトの服にしてはかなり
 おとなしめの服を選んでいた。

 「あら、なかなか似合うじゃないの

 「でもミサト、この服、胸はいいけどウエストゆるいわよ

 「私もちょっとウエストがゆるいです

 ガキどもが~~~!!


 「ぜいたく言ってんじゃないわよ。表に出られるだけでもマシだと思いなさい。
 ほら、着替えたんだからさっさと行くわよ」

 「分かってるわよ。リツコめー、ただじゃ済まないんだから

 「碇くん、服あったのかな?」


 三人が部屋から出ると、すでにシンジが着替えて待っていた。

 持っているズボンの中で一番ウエストが大きいズボンに、ベルトを通さない状態で
 ちょうどの大きさになり、大きめのTシャツが今の身体にはピッタリだった。そして、
 長く伸びた髪はゴムで後ろでまとめていた。

 「あ、あらシンジ君、さっきは気が動転して気が付かなかったけど……結構いい
 感じね。背も随分伸びてるし、肩幅だってたくましくなってるし……。
 へ~ シンジ君てこういう風な大人になるんだ。もてるわよ、きっと

 「か、からかわないで下さいよ! ミサトさん」

 「別にからかってなんていないわよ。鏡見てご覧なさい。下手なモデルなんかより
 よっぽどいい男になってるわよ。ねぇ、二人とも」

 ……碇くん……かっこいい……」 ぽ~~~

 レイは見とれたように、シンジをじ~っと見つめている。

 「ま、まぁまぁね。結構見れるようになったじゃない。これならどこに出しても
 恥ずかしくはないわね」

 『シンジってこういう大人になるんだ……。これはミサトの言うように、寄って
 くる奴が大勢出そうね……冗談じゃないわよ、シンジに最初につばつけたのは
 私なんだから、今のうちからよその女に手を出さないように教育しておかないと
 いけないわね』

 アスカはドキドキしながらも、これからの計画を立てていた。

 「あ、そ、そうかな。ありがとう。あの……その……二人とも、に、似合ってるよ

 「ほんとに!? 碇くん、私、ほんとに似合ってる?」

 「ほんとだよ。良く似合ってるよ」

 「ありがとシンジ。でも、私が着こなしてるんだから服装が似合うのは当たり前
 よ。それ以外の評価はどうなの?」

 「え、それ以外って?」

 「碇くん、大人になった私たちを見て、どう思ってるの?

 「そうね、女の子にとってはとても大事な事だものね。ほらシンちゃん、答えて
 あげなさい

 「だ、だから……その……」

 「あ~もうじれったいわね! 今日はもう時間がないから、
 来週のこの時間にちゃんと答えなさいよ!」


 という事で


 <つづく>


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