新世紀エヴァンゲリオン-if-

 第九部 Cパート


 「やっぱり大人の魅力には勝てん言うこっちゃな」

 「ぬわんですってぇ~~~!?」

 アスカが切れそうになったので、慌ててシンジが止める。

 「ア、アスカ、落ちついて!」

 「こんなにバカにされて落ちつけるわけないでしょ!!」

 「だ、だからさ、ケンスケは今までアスカの写真をたくさん売ってたからさ。もう
 みんなアスカの写真を持ってるんだよ。でも、ミサトさんやリツコさんの写真は
 初めて見ただろうから、珍しかったんじゃないのかな」

 「…………言われてみれば、シンジの言う事ももっともね。どんなに綺麗なもの
 でも、毎日見てたら目が慣れるものね。かなり落ちても珍しいものに
 興味が湧く、というのも分からなくはないわね」

 アスカは、シンジの説得でようやく落ち着いたようだった。

 「なぁケンスケ、シンジのやつ、惣流の扱いが上手うなったんとちゃうか?」 ひそひそ

 「生活の知恵だろ。しかし何で僕の名前を出すんだよ。後でどんな目に遭わされるか……」

 ケンスケは恨めしそうにシンジを見た。そのシンジは、とりあえずアスカが落ち着
 いたので、ゆっくりと写真を見ている。

 すると、今度はシンジが声を上げた。

 「な、何だよこれ~~~!?」

 「どうしたの碇くん?」

 「シンジ、どうしたの?」

 別の写真を見ていたレイやアスカもどうしたのかと思い、シンジの見ていた写真を
 見る。

 その写真は、水着に着替えている写真や、タキシード姿の写真など、シンジが
 写っている写真だった。

 「あ、それか? いやー、冗談のつもりで出したんだが、これが意外と売れる
 だよ。こんな事ならもっとシンジの写真を撮っときゃ良かったよ」

 そう言いながら、ケンスケは注文表を見せる。確かに、シンジの写真はたくさん
 売れていた。その数は、クラスの女子の数以上だった。

 他のクラスの女子が買いに来たのか、考えたくはないが男子が注文したかのどちらか
 であろう。ちなみに、ケンスケやトウジの写真も売りに出ていたが、こちらはさっぱり
 売れていなかった。

 「相田君、私、この写真欲しい

 レイはそう言って、シンジの写真を指差す。ちなみに、着替えている写真ではなく、
 普通の写真である。

 「三十円」

 「え? あ、綾波?」

 「ちょっとレイ、あんた何でシンジの写真なんか欲しがるわけ? 家にパネルに入っ
 たのがあるじゃないの。それに、一緒に暮らしてんだから必要無いんじゃないの?」

 「でも、家にあるやつは大きいし……。だから、いつも持ち運べる大きさの写真
 が一つ欲しいの」

 「…………相田、私にも一枚焼き増しね」

 「三十円」

 「あんたバカぁ!? 人の写真で儲けてるくせに、この私から更に金取ろう
 ってんの?」

 「た、ただでいいよ」

 「当ったり前でしょ!」

 ケンスケは、アスカの勢いに完全に押されていた。

 「あ、それからシンジ、この写真あげるから持っときなさい。時々チェックするから
 肌身離さず持っとくのよ、いいわね?」

 そう言ってアスカは写真の中から、自分の水着姿の写真を取り出し、シンジに
 渡した。

 「あ、ありがとう、アスカ」

 「それは百円…………」

 「何か言った?」

 そう言ってアスカはケンスケを睨みつける。

 「う……。ただでいいからさ。注文取り終わるまで待ってくれよ」

 「あんたバカぁ!? 人の水着写真を売りさばかれて平気な女がどこに
 いるってーのよ。全て没収されないだけでもありがたいと思いなさい!」

 『何だよ、他のやつらに買われるのは嫌でも、シンジには持たせるくせに……』

 と思うのだが口には出さないケンスケだった。

 「碇くん、私のも持っててね、はい

 そう言ってレイも自分の水着姿の写真をシンジに手渡した。

 「ありがとう、綾波」

 『百円…………払ってくれないんだろうな、綾波も……』

 「しかしシンジ、いつの間にそんなに度胸がついたんだ?この状況でそんな事すれば
 どうなるかなんて、考えるまでもないと思うんだがな」

 「そーそー、ケンスケの言う通りや。どうなっても知らんぞ

 ケンスケとトウジが言うように、シンジの周りには殺気が膨れ上がっていた。

 シンジの顔は真っ青になっている。

 「なに人ごとみたいに言ってんだよ。そもそも、ケンスケがこんな風に堂々と売って
 るからいけないんじゃないか」

 「人ごとやからなー」

 「そうそう。それにさシンジ、こっちの写真を販売してないんだから、感謝して欲し
 いくらいだね」

 そう言って、ケンスケはポケットから数枚の写真を取り出し、シンジに見せた。

 な な なっ!?

 シンジは思いっきり動揺していた。

 「何、どうしたの碇くん?」

 「シンジ、顔色が悪いわよ、どうしたの?」

 二人はシンジの手の中にある写真を手に取ってみた。

 「あ、この写真」

 「ちょっと相田! 何考えてんのよ!? こんな写真、他のやつに
 見られたらシンジがどんな目に遭うと思ってんのよ!?」

 「まぁ、大変な騒ぎになるだろうね」

 ケンスケはそう言ってニヤニヤしていた。

 ケンスケが取り出した写真は、

  シンジに弁当や料理を食べさせているレイやアスカの写真、
  日焼け止めクリームを塗ってもらったり、塗っている写真、
  溺れそうになったシンジが抱きついている写真、
  花火に驚いてアスカに抱きつかれている写真、

 そしてとどめとして、

  シンジとレイが一緒に寝ている写真

 があった。

 「騒ぎになるのが分かっててどうして持ってくんのよ!!」

 「だから、これは一般には販売しないって言ってるだろ。シンジに買い取って
 もらおうと思ってね

 「え、僕に?」

 「そ、まぁ他ならぬシンジだからな。一枚五百円ってとこでいいよ」

 「…………ケンスケ、それって犯罪っていうんだけど…………」

 「えーそうなのか、僕は法律に疎いからな。ちっとも知らなかったよ。じゃあ、これ
 はやっぱり一般に販売する事にするよ」

 「…………相田、それも脅迫っていう犯罪よ」

 「そうなんだー、知らなかったなー」

 「相田君、どうしてそんな事するの?

 「レイ、これがもてない男のひがみっていうやつよ。そのうち、本当に犯罪に
 走りそうね」

 「う、うるさい! 僕は何も悪くない! 一人だけ幸せになろうとする
 シンジが悪いんだ!」

 「シンジはそれだけの事をしてきてんのよ! 少なくても人の写真を
 勝手に売ってるようなやつとはレベルが違うのよ!! ほら、レイも
 言ってやんなさい」

 「相田君、碇くんをいじめちゃだめ

 「ケンスケ、立場悪いぞ。その辺で止めといた方がええんと違うか?」

 「うう、なぜシンジばかり……ええい、もうどうなっても知らん!

 そう言って、ケンスケは写真をシンジ達の手から取り返し、

 ぱぁっ!とばらまいてしまった!


 「あ!」

 「ば、ばか!!」


 「お、何だ何だ? う! こ、これはっ!?

 「どうした? な、何ぃ!?

 「し、信じられん!!

 クラス中にざわめきが広がっていた。そして、

 まるでゾンビのようにゆっくりと、シンジの元へと集まってくる。


 危うしシンジ、絶対絶命!!


 <つまずく……もとい……つづく


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