新世紀エヴァンゲリオン-if-

 海の完結編 Fパート


 「ちょっとレイ、あんたまさか、『時間無いんだったら、シンジも自分と
 一緒に風呂に入ればいいのに』とか考えてるんじゃないでしょうね?」
 でしょうね?」

 「え?」 (シンジ)

 「ちょっとアスカ、いくらレイだって、まさかそこまでは考えてないわよ」

 「アスカ、どうして私の考えてる事分かったの?

 「……ええっ!?」 (シンジ、ミサト)

 レイはきょとんとしている。シンジとミサトは呆然とし、アスカは、は~~~っと
 溜め息をついていた。

 「はぁ~……やっぱりそう考えてたか……。まったく、どうしていつもいつも
 そういう発想をするのよ? そういう事しちゃあいけないって何度も何度も教えた
 でしょ。まったくもー」

 「あ、そうだったわね」

 「……しかし、さすがはレイといった所ね。まさか、そんな発想をするとは……。
 それにしても、アスカは良くレイの考えてる事が分かったわね。さっきもレイの口
 塞いでたし……。どうして分かったの?」

 「それがね、最近、何となくだけど、レイの発言や行動の先が読めるようになって
 来たのよ。どういうわけだか知らないけど。その時その時において、私が考える
 最悪のパターンを必ずレイがやるのよ。ま、先が読める分、対応もしやすい
 んだけど」

 「ふーん、そうだったの。ま、確かにレイほど裏表のない人も珍しいわね。何一つ
 隠す事なく、心のままに生きてるものね」

 「そこが一番問題なのよ。私に対する嫌がらせとか、わざととか、悪意を持って
 やってんならまだいいのよ。叩き潰せばいいだけなんだから……。でも、レイの場合
 本心からそう思って行動してんのよね。悪意がないっていうのが一番やりにくい
 わ」

 「そうね。アスカはレイに色々と常識を教え込んでるみたいだけど、シンジ君が
 絡んでくると、全ての常識がリセットされちゃうものね……。アスカも大変だわ」

 「なに他人事みたいに言ってんのよ。ミサトが一番レイに悪影響を与えてん
 のよ。分かってんの?

 「あら、そ~お~? 私はほんの冗談のつもりでやってんだけどな~」

 「いくら冗談でも、言っていい事と悪い事があるのよ。それと、世の中には冗談の
 全く通じない人もいるんだから、相手を見て冗談を言いなさい」

 「はい、はい、分かったわよ」

 「それとシンジ、なに赤くなってんのよ!?

 「い、いや……その……」

 「全くもー。どいつもこいつも……。いい、レイ。改めて教えとくけど、夜は一人
 で自分の部屋で寝る事。お風呂も一人で入る事。いいわね? だいたい、中学生に
 もなって混浴してるやつなんて一人もいないわよ」

 「そうなの?」

 「そうなの!!」

 「あらアスカ、そういうあなただって、シンジ君と混浴したじゃないの」

 な、なによそれ~!? いつ私がシンジと混浴したって言う
 のよ!?」

 「そうですよミサトさん。僕はアスカと混浴なんてしてませんよ」

 「……碇くん、本当なの? 本当にアスカと一緒にお風呂に入ったの?」

 レイは悲しそうな瞳でシンジを見る。

 「ち、違うよ綾波! 僕は本当に混浴なんてしてないよ! いつか温泉に
 行った時だって、ちゃんと男湯と女湯に別れてたし。ほんとだよ綾波」

 「ほんとよレイ、私とシンジはそんな事してないんだから。ちょっとミサト!
 どういうつもりよ!? 喧嘩するなって言っときながら喧嘩のたねをまくなん
 て……。しかもそんな嘘までついて」

 「あら、別に嘘なんてついてないわよ。シンジ君とアスカは二人で弐号機に
 乗ったじゃないの」

 「それがどうして混浴になるのよ!?」

 「だって、エントリープラグという密閉した空間の中で、同じ液体に漬かってるん
 だから、十分混浴と言えるじゃない。それに、二人でシンクロしてたしね」

 「ね、じゃないわよ。紛らわしい言い方するんじゃないわよ! それに、
 あの時、ちゃんとプラグスーツ着てたじゃないのよ」

 「そうね。あの時、シンちゃんって確かアスカのプラグスーツ着てた
 のよね~。結構似合ってたわね」

 「よして下さいよ。せっかく忘れようとしてるのに……。恥ずかしかったんですよ、
 あの時」

 「碇くん、私のスーツも着てみて

 「え?」

 「ちょっとレイ! あんた何バカな事言ってんのよ!?」

 「あら、いいわね。結構似合うかも知れないわね

 「ミサトまで何言ってんのよ!?」

 「そうですよミサトさん。からかわないで下さいよ」

 「でも、実際にあの時、シンジ君とアスカのシンクロ率は過去最高を記録したのよ。
 シンジ君とレイの二人でも試してみる価値はあるわね」

 「まさか本当にレイのプラグスーツを着せるんじゃないでしょうね?」

 「まー、あの時はシンジ君のプラグスーツが無かったからアスカのを着せたんで
 しょ。今回はネルフ本部でテストするから、シンジ君は自分のスーツを着ればいい
 わね」

 「……そう……ですか……。

 レイは思いっきり残念そうにしていた。

 「あ、そーだ! いい事思い付いちゃった!」

 ミサトは不気味な笑いを浮べていた。

 「…………ちょっとシンジ、ミサトのあの顔……絶対にろくでもない事を考えてる
 わね」

 「そうだね。あの顔してる時は危険だよね」

 「私も何となくそう思う」

 「そそ、レイもやっと分かってきたみたいね」

 三人が不安そうにしているのを気にもせず、ミサトはある提案をした。

 「んふふふふふふ。確かあなた達、プラグスーツなしでシンクロテストした
 時があったわよねぇ

 「それがどうしたって言うのよ?」

 「今回はあの時と同じ状態で、二人でエントリープラグに入るという
 のは……」

 「ずぇったいに、だめ!!!

 「あはは~~~。やっぱりだめ?」

 「当ったり前じゃないの! 何考えてんのよまったく!!」

 「まぁまぁ、アスカ。ほんの冗談なんだから、そんなに青筋立てて怒んなくてもいい
 じゃないの」

 「怒りたくもなるわよ! 毎日毎日そんなバカな事ばっかり言ってるん
 だから」

 「あの……ミサトさん。……私は……その……命令なら……構いませんけど……」

 「……え?」

 レイの発言に、ミサトは目が点になっていた。もちろん、シンジとアスカもだが。

 そんな中、レイは少し恥かしそうに下を向き、自分の服を指先でもじもじと触って
 いた。そんな姿を見て、三人はますます固まってしまった。しかし、こういう反応に
 一番慣れている、自称『レイの教育係』のアスカが、いち早く復活した。

 「ミサト、今ので分かったでしょ! レイには冗談が通用しないんだ
 から、うかつな事言っちゃだめなのよ。見なさいよ、しっかり本気
 してるじゃないのよ」

 「そ、そうみたいね……。あのね、レイ、さすがに今のは冗談よ。いくら何でも
 そんな命令は出せないわよ。だいいち、シンジ君なんてきっとシンクロどころの
 騒ぎじゃないわよ。エントリープラグの中が鼻血で真っ赤に染まるのは目に見えてる
 わね。それに、モラル的にもちょっと問題あるしね」

 「ちょっとどころの騒ぎじゃないわよ! まったくもー」

 「だから、今のはナシね」

 「……そう……ですか……

 「ま、まぁ、そんなにがっかりしないで。シンジ君と二人でのシンクロテストは
 ちゃんとやらせてあげるから。それならいいでしょ?」

 「プラグスーツは?」

 「もっちろん、シンジ君にはレイのプラグスーツを着てもらうから」

 「はい、それならいいです!」

 レイはとても嬉しそうに微笑んだ。

 『……僕の意思って一体……』

 シンジは、自分の存在に関して、思いっきり悩んでしまった。

 (諦めろシンジ、女三人には勝てんさ)

 「はぁ~~~。相変わらずレイはシンジの事になるといきなり押しが強くなるん
 だから」

 アスカは呆れたようにそう言った。

 「そう?」

 「そうよ。それとシンジ! あんた何また赤くなってんのよ! まさか
 レイの裸を思い出してんじゃないでしょうね!?


 『ぎっくぅ……!』


 <つづく>


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