新世紀エヴァンゲリオン-if-

 海の完結編 Eパート


 「な、何よミサト、そのいやらしい笑い方は?」

 「別にぃぃぃ。ただ、シンちゃんと寝た感想はどうかな~~~
 って思ってね~~~」

 「な、な、な、何よそれ!?

 「あら? だってシンちゃんと一緒のベッドで寝てたんでしょ?」

 「だったら最初からそう言いなさいよ!! 『一緒に寝た』
 『一緒のベッドで寝た』じゃ意味がまるで違うんだから!」

 「アスカ、どう違うの?

 「う……だ、だから、その……」

 「ほらほらアスカ、レイの教育係なんだから、ちゃんと答えてあげなさいよ」

 「何言ってんのよ。ミサトが保護者としての役割を放棄してるから、この私がわざわざ
 こんな面倒くさい事してんじゃないのよ。もういい歳なんだから、もっとしゃんと
 しなさいよ、しゃんと」

 私はまだ若いわよ。そんなに言うんだったら、私がレイの教育をしてあげましょう
 か? そもそも、アスカが自分でレイの教育をすると言い出したんじゃないのよ」

 「当たり前じゃないのよ! ミサトに任せてたら、レイの人生めちゃめちゃ
 になっちゃうじゃないの」

 「ふんだ。そう言うアスカだって、シンちゃんと一緒に寝てたじゃないのよ。人の事
 とやかく言えないじゃないの」

 「うるさいわね。大体、何でミサトがその事知ってるのよ? まさかまた覗いてた
 の?」

 「失礼ね。私は覗いた事なんて一度も無いわよ」

 「何言ってんのよ。ネルフの病室で覗いてたじゃないの。それに、海でも松林でも
 覗いてたし」

 え? あの時、ミサトさん見てたの?

 シンジは一気に赤くなる。

 「そうなのよ。ほんとに趣味悪いんだから……」

 「松林って何の事?」

 「え? あ……そ、その……レイは気にしなくていいのよ。それより、今はミサトの
 追求が先よ」

 「そ、そうだね」

 「?」

 「だから、あれはアスカの事が心配だったからモニターしただけじゃないの。そした
 ら、シンジ君とアスカがたまたまキスしてただけじゃないの。海の事だって、シンジ
 君を拉致したアスカを探してて偶然見つけたのよ。 (本当はリツコのおかげだけ
 ど……)
 
 「じゃあ、何で私がシンジのベッドで寝てたって知ってるのよ? 説明しなさいよ」

 「だって、アスカをシンジ君のベッドに寝かせたの、だもの」

 「は?」 (アスカ)

 「え?」 (シンジ)

 「ミサトさんが?」 (レイ)

 三人とも、特にアスカの目は点になっていた。

 い、い、い、な、な、な!?

 「『一体何を考えてるのよ?』でしょ、アスカ?」

 と、レイがさりげなくフォローを入れる。

 「そう、それよ。一体何を考えてるのよ!? 年頃の乙女を男のベッド
 に放り込むなんて! 何かあったらどうするつもりなのよ!!」

 「あら。それこそアスカの望むところじゃないの?」

 「そ、そんな訳ないじゃないのよ!! 私をどういう目で見てんのよ、
 全く!」

 「冗談よ、冗談。その辺はちゃんと考えてるわよ」

 「何をどう考えてるって言うのよ!?」

 「だって、二人とも疲れきってたみたいだから、何かする元気なんてないだろうし、
 もしシンジ君が目を覚まして隣にアスカが寝てるのに気が付いたとしても、問題は
 ないと思ったのよ。シンジ君が寝てる女の子に何かするような男の子じゃない事は
 アスカも知ってるでしょ。ま、それでも不安なんだったら、リツコにでも言って検査
 してもらえばいいわ。……あ、しまった

 「え!? な、何ですかミサトさん!? 何かあったんですか?」

 「いや~、アスカが先に目を覚ましてシンジ君を襲うっていう可能性を
 忘れてたのよ」

 「何よそれ~!?」

 「碇くん、大丈夫?」

 「う、うん」

 「ちょっとレイ、何言ってんのよ!? だいたい、そういう事は女の
 私に聞くもんでしょ!? なんでシンジに聞くのよ!?」

 「だって、ミサトさんが言うように、碇くんは寝てる女の人に何かするような人じゃ
 ないから」

 「私だって寝てる男に何かするような危ない女じゃないわよ!
 実際、何もしてないわよ!!

 「あらアスカ、そこまではっきり言い切れるって事は……一度目を覚ましたの
 かな~~~?

 「あ!」

 アスカはしまったと思い、手を口でふさいだ。しかし、ミサトはこう言う事に関して
 は異様に鋭かった。既にアスカの行動を見破ったようだった。

 「なるほどねー。シンちゃんの隣で寝てるのに気付いたのに、その
 まま寝てたって事か~~~」

 「え、と、アスカ。そ、そうなの?」

 「だ、だからシンジ……それはつまり……」

 「……アスカ、さっき言ってた事と違う

 レイがじーーーっとアスカを見つめる。

 「べ、別に違わないわよ。ミサトが私を勝手にシンジのベッドで寝かせたんだから。
 私の意思でシンジの部屋に行ったわけじゃないのよ」

 「でも、シンちゃんのベッドから出なかったのは、アスカの意思
 よね~~~」

 「う、うう……

 じ~~~~~~

 レイはずーっとアスカを見つめていた。

 『ううう……やだな、この視線……。ひょっとして、ずっと続くのかしら……』

 「まぁまぁレイ、そんなにアスカを責めないであげて。アスカはレイの事が羨まし
 かったのよ」

 「え? アスカが私の事を……羨ましい? ……どうして?」

 「だって、レイは偶然とは言え、シンちゃんと一緒に寝てたでしょ。あの時、アスカ
 は怒ってたけど、ほんとはレイの事が羨ましかったのよ。自分も同じようにしたいと
 思ったのよ」

 『……私の事を羨ましがってたの? アスカが……。碇くんと二回キスしてるアスカ
 を、私が羨ましく思ってたように……?』

 「だから、優しいお姉さんがアスカの望みを叶えてあげたってわけよ。実際に、
 あのままじゃぁ、三人の仲がぎくしゃくしちゃう可能性があったでしょ。特に、レイ
 とアスカがけんかしちゃうかも知れないし。レイとアスカがけんかしてたら、私や
 シンジ君だって暗い気持ちになっちゃうから、今のうちに二人の立場を同じ
 して、けんかの原因を無くしちゃおうと思ったのよ」

 「だからって、やる事が無茶苦茶なのよ。もっと他にやり方がなかったの?」

 「あら、迷惑だったかしら? でも、迷惑なら目を覚ました時に自分の部屋へ帰る
 はずよね~。そうしなかったんだから、説得力ないわね。ひょっとして、何か起きる
 事を期待してたとか……」

 アスカは真っ赤になり、ただうつむいているだけだった。

 「ふふふ……。ま、とにかく、これでレイもアスカも貸し借りなし。対等な立場なん
 だから、けんかなんかしちゃだめよ」

 「はい」

 「分かってるわよ」

 「それと、今回の事は保護者の私が特に認めた特例なんだから、これからはシンジ
 君の部屋で寝ちゃだめよ。ちゃんと自分の部屋で一人で寝るのよ。いいわね、二人
 とも」

 「はい、分かりました」

 「それはさっき私もレイに言ったわよ」

 「それから、シンジ君も二人の部屋に夜這いなんてしちゃだめよ。まだ中学生
 なんだから」

 「し、しませんよ、そんな事……」

 「そういうミサトこそ、シンジに手ぇ出すんじゃないわよ、いいわね!」

 「失礼ね、私は子供に手ぇ出すような趣味は持ってないわよ」

 「何言ってんのよ。海でシンジに日焼け止めクリームを無理矢理塗ってた時の目つき
 なんて、危なかったわよ」

 うんうん、とレイもうなずく。

 「何よ、私よりリツコの方がよっぽど危ない目をしてたじゃないのよ」

 「確かに、今後はリツコの監視がいるわね。あのマッドサイエンティストはミサト
 よりさらに危ない性格してそうだし……。レイもしっかりとシンジを見張るのよ。
 いいわね?」

 「分かってる、任せて。ずっと碇くんのそばにいるから」

 「そ、それもちょっと問題あるわね……」

 「そう?」

 『ま、私もそばにいるからいいか』

 『ふ~。やっと矛先がリツコにそれたか……』

 「じゃあ、とりあえずこの話はこれでおしまいね。……そうだ! あなた達、帰って
 からずっと寝てたから随分と寝汗をかいてるんじゃないの? お風呂に入ってきな
 さい。髪だってぼさぼさじゃないの。そんなんじゃ学校行けないでしょ」

 「確かにそうね。すぐ入らなきゃ……」

 「シンジ君だって入るだろうし、あんまり時間無いんだから、早くしなさいよ。
 アスカのお風呂長いんだから」

 「分かってるわよ。ちょっとレイ、あんたまさか、『時間無いんだったら、シンジ
 も自分と一緒に風呂に入ればいいのに』とか考えてるんじゃない
 でしょうね?」

 「え? どうして私の考えてる事が分かったの?」

 「…………え?」 (シンジ)


 <つづく>


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