「おやすみ、綾波」

 シンジはそうつぶやくと、昼間の疲れからか、今度は深い眠りに落ちていった。


 そして、朝が来た。


 新世紀エヴァンゲリオン-if-

 海の完結編 Aパート


 ピカッ!


 「ん……」

 シンジは急に強い光を浴びせられたような気がして、目を覚ました。

 真っ白だった視界が晴れ、何とか目が慣れてくると、ケンスケがカメラを構えている
 のが目に入った。恐らく、今のはフラッシュなんだな、とシンジは思った。

 「何だよケンスケ朝っぱらから……もう少し寝かせてよ……」

 そう言い、目をつむろうとしたが、どうも様子がおかしかった。自分を取り囲むよう
 に全員が立っている。アスカやトウジは何か怒ってるようだし、ミサトとリツコは
 なぜかニヤニヤしている。

 「あの……どうしたの、みんな?」


 「あの……どうしたの、みんな?」

 「どうしたもこうしたもないわ! シンジ、お前一体、
 何考えとるんや!?」

 「え……? アスカ、一体どういう事なの?」

 「どういう事か聞きたいのはこっちよ! 一体どう
 いうつもりよ!!」

 シンジは何が何だかさっぱり分からないので、とりあえず身体を起こす事にした。
 しかし、左腕に何かが引っ掛かって起き上がれなかった。

 『何だろう?』

 シンジが左腕を見ると、そこにはレイの寝顔があった。

 「………………」

 シンジは、それがどういう事かしばらく分からなかった。しかし、やがて、レイが
 布団の中で腕枕して眠っているという事が理解できた。あまりの事に頭が
 真っ白になり、声を出す事もできず、ただ口をパクパクさせていた。

 「な な な 何で あ 綾波が……ぼ 
 僕のふとんに……!?」

 「それを聞きたいんはこっちや! お前ら二人で同じ
 布団で寝たんとちゃうんやろな!?」

 「僕たちに布団掛けてくれたのシンジと綾波なんだろ。二人だけ敷布団があるから、
 それくらいは分かるさ。その時、二人で同じ布団で寝たんだろ?」

 不潔よ! 不潔だわ!! 碇君がそんな人だったなんて!!」

 「ご、誤解だよ。僕はそんな事してないよ」

 「じゃ、何でレイと一緒に寝てんのよ!!」

 「知らないよー」

 シンジ自身、一体どうしてこうなったのか、まるで分からなかった。

 「シンジ君、私達は別に怒ってるわけじゃないのよ」

 「私は怒ってるわよ!!」

 「まぁまぁアスカ、落ち着いて。でもね、事が事だけに、ちゃんと本当の事を言って
 もらわないとね」

 「そうね。あなた達はまだ十四歳なんだし、帰ったらちゃんと検査しないといけない
 わね」

 「で、ですから僕は何も……」

 「じゃあ、何でこうなったのか、納得いくように説明しなさいよ!!」

 「それが、僕にも何が何だかさっぱり……」

 レイ!! あんたもいい加減に起きなさい!!」

 アスカの怒りは、未だシンジの腕枕で幸せそうに寝ているレイに向けられた。

 「ん……。あ、碇くん、おはよう」

 「お、おはよう」

 「な、何や? このいつもと変わらんような朝の挨拶は……」

 「何だか、慣れてるって感じ……」

 「アスカ、綾波さんて、いつも碇君と一緒に寝てるの?

 「んなわけないでしょ!」

 「だったら、何でこんなに落ち着いて朝の挨拶を交わせるのよ?」

 「こっちが聞きたいわよ! レイ、あんた何でシンジの布団で一緒に
 寝てんのよ!!」

 「え?」

 レイは、周りをキョロキョロ見回し、自分がシンジの布団の中にいる事に気が付き、
 真っ赤になる。

 「わ、私、碇くんと一緒に寝てたの……恥ずかしい……」

 「最初から一緒に寝てたんじゃないでしょうね? 腕枕までして!!」

 「そ、そんな、私そんな事できない……え、腕枕?」

 そう言われ、改めて自分の今の状態を確認してみる。同じ布団で一緒に寝るだけで
 はなく、腕枕までしていたとは……。レイは、目、鼻、口が分からなくなるほど赤
 くなり、身体を丸めて小さくなってしまった。

 「いーから、とっとと離れなさい!!」

 アスカはシンジの布団からレイを引っ張り出した。

 「最初から一緒に寝てたんじゃないって言うんだったら、何でシンジの布団で寝て
 んのよ! 納得いくように説明してもらおうじゃないの!

 「あの……多分、転がってきたんじゃないかと……」

 「は?」

 「私、寝相が悪くて……時々ベッドから落ちるの。それで、ここ、畳だから……」

 「つまり、レイは寝てる間にシンジ君の所まで転がってきて、布団の中に入り、腕枕
 で眠った、と言いたいのね」

 「は、はい。多分そうだと思うんですけど……」

 「何や、そういう事やったんか。ほんま人騒がせな話やな」

 「ま、シンジにそんな度胸あるわけないか」

 「そうだったんだ……。良かったわね、アスカ」

 「ちょっと待ちなさいよレイ! あんたのベッドの位置からして、転がり落ちるって
 事は左に転がるって事でしょ。だったら、なぜ右に寝てるシンジの方に転がってくる
 のよ? 逆じゃないの」

 「そ、そんな事言われても、寝てる時の事だから……自分でも分からないから……」

 「リツコ」 ヒソヒソ

 「ええ、分かってるわ。この部屋も撮影してるから、帰ったら確認しましょ」 ヒソヒソ

 「レイったら、寝てる間もシンジ君に引きつけられるのね。シンジ君から何か
 フェロモンでも出てるのかしらね」

 「調べてみようかしらね」

 二人にそう冷やかされ、シンジとレイは赤くなる。それを見て、アスカがとうとう
 キレた

 昨夜、ミサトの挑発に乗り、酔いつぶれたため、シンジ攻略計画-お泊まり編-が
 何一つ実行できなかった上、朝起きて見ると、シンジとレイが同じ布団で仲良く腕枕
 までしているのだから、機嫌がいいはずもなかった。

 「シンジ! とっとと着替えて海に出なさい! 特訓
 の再開よ!!」


 シンジの受難(?)は……


 <つづく>


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