新世紀エヴァンゲリオン-if-

 夜の海編 Gパート


 「……何よ、アスカったら独占欲丸出しにして……。別に、シンジ君は
 アスカのものってわけじゃないでしょ。

 「私のよ!!」

 「……え?」

 「………………」

 「ほーーー。随分とはっきりと言ったわね~」 ニヤニヤ

 「あ……い、いや、だから……今のは……言葉のあやで……」

 アスカは、つい口に出してしまい、オロオロしている。トウジやリツコ達は、興味
 深そうに見守っている。レイは、じーーーっとアスカを見、シンジは赤くなっている。

 「……アスカ」

 「な、何よレイ、何か文句あるってーの?」

 「アスカが碇くんの事好きなのは知ってる。でも、私も碇くんの事が好き
 なの。だから、『私の』じゃなくて、『私たちの』って言って欲しいんだけど」

 「あ」

 「ほー、レイもまたはっきりと言ったわね~。やるわねシンちゃん

 か、からかわないで下さいよ! 真っ赤

 『……そっか。レイは別に、今すぐシンジを独り占めしようなんて考えてないん
 だ……。今はまだ、好きな人のそばにいられれば、それで幸せっていう、小学生
 レベルなのか……。私一人、焦ってたのかな……。そーよね、私たちはまだ十四歳
 だし、シンジはずっとそばにいるんだし、そんなに慌てる事もないか。もちろん、
 チャンスがあれば狙うけど……。

 私もレイも、シンジが好き。お互いこれ以上、ライバルや邪魔者が増えるのは望ま
 ないはずよね。同じ人を好きになったんだから、協力できる所は協力しなきゃね。
 ……今はまず、この酔っぱらいを何とかしなきゃ』

 「ミサト、今の聞いたでしょ? シンジは私たちのなんだから、手ぇ出すんじゃない
 わよ。いいわね!

 「あら、いきなり同盟結んじゃったの? 同じ人を好きになった者同士の連帯感って
 やつかしら」

 「う、うるさいわね。とにかく、アル中はシンジに近づかないで」

 「何よ、私は別にアル中ってわけじゃないわよ」

 「朝から晩まで、ずーっとビール飲んでて良く言うわね」

 「私はお酒を飲んでも、お酒に飲まれたりはしないわ。だから、アル中じゃないの
 よ」

 「でもミサトさん、やっぱり飲み過ぎは身体に良くないですよ。少しは量を減らして
 下さい」

 「聞いた、アスカ? 今みたいに優しく言えないかしらね」

 「言ってる事は同じよ。だいいち、ミサトに優しく言ったって、ちっともこたえない
 じゃないのよ。だから、私みたいにきつく言うのがミサトのためなのよ。感謝して
 欲しいくらいだわ」

 「あの、ミサトさん。一つ聞いていいですか?」

 「ん、何、レイ?」

 「飲んだビール、どこに入ってるんですか? お風呂で見た時、とっても綺麗な身体
 してましたけど……」

 「んふふふふふ。それはね、ネルフの最高機密なのよ~~~」

 綺麗な身体と言われたのが余程嬉しいのか、ミサトはニコニコしている。

 「言われてみれば、確かにそうね。ミサトは大学の頃からひたすらビールを飲んでる
 のに、そんなにプロポーション崩れてないわね。これは調べてみる必要があるわね」

 「調べる必要なんてないわよ。ミサトが飲んだビールは、全部あのに詰まってる
 のよ」

 「あ、なるほどね」

 「そうだったんですか」

 「ちょっと、そこ二人! 何信じてるのよ。そんなわけないでしょ」

 「あ、すいません」

 「でも、妙に説得力があるわね

 「でしょ~」

 「アスカもアスカよ。自分のが小さいからって、ひがまないで欲しいわね」

 「な、何ですって~~~!! 私のどこが小さいって言うのよ!?
 見なさいよ! 立派なもんじゃないの!」

 そう言って、アスカは浴衣の前をはだけて、ミサトに見せる。

 「ふ~んだ。やっぱり小さいじゃないの。胸って言うのは、こういうのを言うのよ」

 そう言って、ミサトも浴衣の前をはだけて、アスカに見せる。

 シンジは真っ赤になり、うつむいてしまう。トウジとケンスケは瞳を輝かせたが、
 ヒカリが二人の前に回り込み、視界を防ぎ、ケンスケのカメラも取り上げていた。

 「でかけりゃいいってもんじゃないのよ。要はバランスの問題なのよ」

 「私のは大きい上に、バランスもいいのよ。どう、まいったかしら?」

 「うう~」

 二人が睨み合ってる所に、レイが声を掛ける。

 「アスカ、碇くんの前で裸や下着姿になっちゃいけないって言ってるのに、アスカ
 だってやってるじゃない」

 「え? ……あ、キャッ!!

 アスカは、ようやくシンジがいる事を思い出し、慌てて浴衣を着直す。

 「シンジ、見てないでしょうね?」

 「み、見てないよ」

 「本当に?」

 「ほんとだよ。ずっと下向いてたから、見てないよ」

 「アスカ、本当よ。碇くんはずっと下向いてたもの」

 「そ、そう。ならいいのよ。ヒカリ、そっちの二人は大丈夫?」

 「ええ、大丈夫よ。カメラも取り上げてるから」

 「さっすがヒカリ、頼りになるわね」

 「ミサト、あなたもいい加減にしまいなさい。子供達の前よ」

 リツコにそう言われ、ミサトも浴衣を着直した。

 「えーと、今のはその……つまり、物事には何事においても例外ってもんがある
 のよ。今のがそう。私は、傷付けられたプライドは十倍返し。それが私の生き方
 なのよ。だから、今のは真似しなくていいのよ、分かった?」

 「そう、分かったわ」

 「なら、ビールを飲むのが私の生き方よ。あれこれ言って欲しくないわね。だいたい
 胸の中にビールが詰まってるなんて発想自体、どうかしてるわよ。そんなに言うん
 だったら、アスカもビール飲んでみる? 少しは大きくなるかも知れないわよ。
 ……あ、無理か。アスカまだ子供だもんね~~~。

 「誰が子供よ誰が! ビールくらい飲めるわよ、つぎなさいよ!」

 そう言って、アスカはコップを突き出す。

 「あーら、無理しちゃって」

 『そういう所が子供だっていうのよ』

 「無理なんかしてないわよ。ドイツ育ちをなめんじゃないわよ。

 「アスカ、止めなよ。ミサトさんの挑発に乗っちゃダメだよ」

 「シンジは黙ってて! ここまで言われて引き下がれるわけないじゃないの」

 「アスカ、だめよ。私たちはまだ十四歳なのよ。ビールなんか飲んじゃいけません」

 「あら洞木さん、大丈夫よ。保護者が許可すれば、アルコール分10%までなら
 OKなのよ」

 です。お酒は二十歳になってから)

 「それやったらミサトさん、ワシもええですか?」

 「じゃあ僕も」

 「ちょ、ちょっと、二人とも……」

 「よーし、それでこそ男の子。コップ持ってらっしゃい、ついであげるわ」

 「はーい」×2

 「ほらほら洞木さん、何事も経験よ。あなたもコップ持っていらっしゃい」

 「は、はい。……それじゃあ、その、一杯だけ……」

 ヒカリは真面目だが、決して堅物というわけではなかった。ミサトがあれほど美味
 そうに飲んでいるので、どんな味なのか興味があったのである。

 そして、四人ともまんまとミサトに乗せられ、ミサトのおもちゃと化した。

 『うえー、にがー! 何でミサトはこんなもんうまそうに飲んでんのよ?』

 『これがビールちゅうもんかー』

 『うーん、この苦さが大人の味なんだな、きっと』

 『…………ヒック』

 「アスカったら苦そうな顔しちゃって。やっぱり子供には早かったかしらね~」

 「うるさいわね。どーってことないわよ、こんなもん」

 「じゃあ、もう一杯行く~?

 「う。あ、当たり前じゃないの」

 「ミサトさん、ワシもお願いします」

 「僕も」

 「……私も、ヒック」

 「んふふふふふふ」

 ミサトは、さも面白そうにアスカ達を見ていた。そんなミサトの挑発に乗らなかった
 シンジとレイはと言うと……。


 「碇くん、これ、とってもおいしいよ、はい」

 「うん、とってもおいしい」

 「良かった」


 という風に、すっかり二人だけの世界が出来上がっていた。しかし、この状況下
 で、そんな事が許されるはずもなかった。

 「いーーーかーーーりーーーくーーーん!
 あーーーやーーーなーーーみーーーさーーーん!」

 「え? 何、いいんちょ……

 振り向いたシンジが見たものは、すっかり目が座っているヒカリだった。

 「何? じゃありません。どうして二人は飲まないの? みんなが飲んでるんだか
 ら、団体行動を乱しちゃいけません。ヒック」

 「あの……洞木さん、酔ってない?」

 「どーしてお酒を飲んでない私が酔わなきゃいけないの? ヒック」

 「……酔ってるみたいだね」

 「でも洞木さん、お酒は二十歳になってからじゃ……」

 「へーきよ、へーき。さっきミサトさんが言ってたでしょ。保護者が許可すれば、
 アルコール分10%未満は大丈夫だって。ほら見て、ここ、アルコール分4.5%
 半分以下よ。何も問題もないわ。ヒック。それにほら、ペンペンだって飲んでる
 んだから、だいじょーぶよ。さー二人とも飲んで、私がついであげるから。それ
 とも何、私のビールは飲めないとでも?

 ヒカリは二人を睨み付ける。

 「綾波、ここは逆らわない方がいいみたいだね」 ヒソヒソ

 「そうみたいね」 ヒソヒソ

 二人とも酔っぱらいに逆らうとどういう目に遭うかは身に染みて知っているため、
 素直に従う事にして、ヒカリにビールをついでもらった。

 「さー飲んで飲んで」

 ついにシンジ達も酔っぱらい集団と化すのか!?


 <つづく>


 Hパートを読む

 [もどる]