新世紀エヴァンゲリオン-if-

 夜の海編 Eパート


 「それじゃあ、今回の旅行がみんなにとって楽しい旅行である事を
 願って、かんぱ~~~い!!

 かんぱーーい!!

 ミサトとリツコはビール、シンジ達はジュースで乾杯をし、早速食べ始めた。

 「こ、これはっ……うーまーいーぞーー!!

 トウジは口から怪しい光を放ち、巨大化しながら、うまさを全身で表していた。

 「ぬう……。このまったりとしてそれでいて少しもしつこくない
 口当たりと言ったら……」

 ケンスケも、どこかで聞いたような事を言い、料理を堪能していた。

 「ほんとにおいしい。私もこんな風な料理を作れるようになりたいな……」

 『そうすれば鈴原ももっと喜んでくれるかな……』

 「ぷはーーーっ! くぅーーーっ! やっぱりビールには海の幸が
 良く合うわね~。何杯でもいけるわ」

 「そうね。でもさすがネルフね。いい料理人を揃えてるわ。なかなかこの味は出ない
 わよ」

 「碇くん、ほんとにおいしいね」

 「うん。スーパーとかで売ってる物とは全然違うね」

 「ドイツでもここまでおいしい物はなかなかないわね。でも、ミサトん家では見ない
 もんばかりね」

 「仕方ないよ。この料理は高いんだよ。そう気軽に家で食べられるようなもんじゃ
 ないからね」

 「ま、ここまでおいしいんだから、高いのも無理ないわね」

 「そうね」

 シンジ達は、口々に料理の感想を延べ、食事を続ける。だが、あまりにおいしい
 食事は、人を無口にさせる。その後、シンジ達は「ムウ」とか「これは」とか
 言いながら、黙々と食事を続けていた。

 そんな時、アスカは横目でシンジを見る。

 『……どうしようかなー。シンジに食べさせてあげようかな……。でも、おにぎり
 と違って、私のお箸で食べさせてあげるって事は……か、間接キス前提って事に
 なっちゃうし……。でも、私がやらなくても、絶対にレイがシンジに食べさそうと
 するだろうし……。リニアトレインでは出し抜かれちゃったから、今度は私が
 主導権取りたいし……。べ、別にいいわよね。シンジとはもう二度もキスしたん
 だし、今さら間接キスの一つや二つ……うん、何の問題も無いわよ』

 アスカは色々と悩んでいたが、ついに決心したようだった。

 「ほら、シンジ。私が食べさせてあげるから、こっち向きなさいよ」

 「え? あ、ありがとう、アスカ」

 「碇くん、私のも食べてね」

 「う、うん。ありがとう、綾波」

 「何やシンジ、リニアトレインの続きをここで始めるんか?」

 「第二ラウンド開始って奴か?」

 「ち、違うよ。僕は別にそんなつもりじゃ……」

 「ほらシンジ! 外野は放っときなさいよ、はい」

 「あ、い、いただきます」 ぱく

 「どう?」

 「うん、おいしいよ、アスカ」

 シンジは、食べさせてもらうのは二度目なので、少しはゆとりもでき、料理を味わう
 事ができた。

 『んふふふふふ。なんかいいわね、こういうのって。恋人同士って感じ……。
 新婚旅行ってこんな感じなのかな?

 アスカは、先ほどウェディングドレスを着たせいか、妄想が一気に飛び、赤くなって
 いた。

 つんつん

 「え、何、綾波?」

 「碇くん、これ、食べてね、はい」

 「うん、ありがとう綾波、いただくよ」 ぱく

 自分の箸から料理を食べるシンジを、レイは嬉しそうに見つめている。

 つんつん

 「え、何、アスカ?」

 「シンジ、あ~ん

 アスカは口を開けて待っていた

 「え、と。どれがいいかな?」

 「どれでもいいわよ。シンジが選んで」

 「う、うん」

 シンジは戸惑いながらも、アスカの口に料理を運ぶ。アスカは極上の笑み
 をシンジに向ける。

 つんつん

 「え?」

 「碇くん、私も」

 レイも口を開けて、シンジに食べさせてもらうのを待っていた。

 「こ、これでいいかな?」

 「うん。碇くんの選んでくれた物ならどれでもいい。お肉でも我慢するから」

 「大丈夫だよ綾波、この料理に肉は入ってないよ。それに、綾波が嫌いな物を
 選んだりしないよ」

 「碇くん……ありがとう

 シンジ達三人は、その後も食べさせたり、食べさせてもらったりを繰り返し、
 三人だけの世界を作り上げていた。

 そんなシンジ達の方から流れてくる、ハートマークを手で叩き落とし
 ながら、トウジ達は黙々と食事を続けていた。

 「……なぁケンスケ、ワシはあの三人の事からかうんが、なんかアホらしゅうなって
 きたわ」

 「確かに……。あれだけ堂々と三人だけの世界を作られると、冷やかすのが
 かえって虚しくなるよ。シンジの奴、一体何があったんだ?」

 「ワシはもう知らん。あの三人の事より、今は腹一杯食うんが先や」

 「同感だね。この先、こんなに豪華なもん、いつ食えるか分からないからね。今は
 食事を優先させるべきだね」

 そう言って、二人はヤケ食いに突入した。

 『アスカや綾波さん、とっても嬉しそうね。碇君もあんなに嬉しそうにして……。
 鈴原も私があんな風にしたら喜ぶかな……。でも、やっぱり私にはまだ、あぁは
 できないわね。今はお弁当食べてくれるようになっただけで十分。月曜からまた
 食べてくれるかな?』

 そう思い、ヒカリはトウジを見る。トウジは、ケンスケと二人でヤケ食いモードに
 突入しているので、ヒカリの視線にも気付かずにいた。

 その時、ヒカリはトウジのコップが空になっているのを見つけた。

 「あ、鈴原、ジュースついであげる」

 「お、スマンなーイインチョ」

 トウジは少し照れながらも、コップを差し出し、ヒカリについでもらっていた。

 「何だ、こっちでもラブラブか?」
 
 ケンスケがうんざりしたようにつぶやく。

 「な、何やケンスケ、その言い方は?」

 「そ、そうよ相田君! 私はただ、ジュースをついであげただけじゃないの」

 「あ、僕の事なら別に気にしなくていいよ。邪魔なら邪魔とはっきり言ってくれ
 れば、ヨソに行くからさ。二人に怨まれたくないし……」

 「せやから、違う言うとるやろ」

 「相田君、絶対誤解してる。そんなんじゃないんだから。ほ、ほら、相田君
 もコップ出して。そんな風に言わないで、ね」

 『……そんなにムキになって否定する事も無いのに。一目見りゃ分かるよ……。
 でも、トウジと委員長はまだ、シンジ達のようにはいかないか。かえって二人っきり
 だと緊張して何も喋れなくなるタイプだな。……しょうがない、僕がいる事で二人が
 普通に話せるのなら、ここにいるとするか。少し居心地は悪いけど……』

 三バカの中で、一番大人びた考え方をするケンスケなりに気を使っているようで
 ある。おお、ケンスケ、見直したぞ

 『おおおーーっ!! こんな役は嫌だーーっ!! 書き直し
 要求するーーーっ!!

 ええーいっ! お前はダークシュナイダーか!? 誉めるとすぐこれだ。
 今回はプラグスーツも着れた事だし、我慢しろ。大体、普段目立たんキャラが
 いきなり目立つとロクな事がないのは歴史が証明している。


 ……おおっと。話がずれた。元に戻そう。


 シンジやトウジ達の様子を見ながら、ミサトは嬉しそうにビールを飲む。

 「いやー、海の幸もいいけど、やっぱりビールの肴にはこれが一番ね」

 と、面白そうにシンジ達を見ているミサトと違って、リツコは、信じられない物を
 見るような目でシンジ達を見ていた。

 「……ねぇミサト、お弁当の時も驚いたけど、あの子達、家でもいつもこうなの?」

 「さすがに、家ではここまではしてないわよ。三人とも、ネルフを離れて海に来てる
 から、開放的になってるんでしょうね。大体、家で毎日こんなの見せつけられたら、
 こっちがたまらないわよ」

 「ま、確かに……。それにしてもまぁ、アスカってすっかりかわいくなっちゃって。
 初めて日本に来た時と比べると、殆ど別人ね。好きな人ができただけで、ここまで
 変わるものなのかしらねー。ドイツの両親が見たら、さぞ驚くでしょうね」

 「そりゃあね、どうしてあぁなったかを知ってる私たちですら驚いてるんだから、
 腰抜かすんじゃないかしら」

 「アスカがここまで変わった原因がシンジ君にあると分かったら、絶対に何か
 あったと誤解するわね」

 「まぁ、実際に色々あったのは確かだけど、間違いなく誤解するわね」

 「『娘をここまで変えたんだから、責任取れっ!!』とか言って、ドイツ
 まで無理矢理シンジ君を連れてったりしてね」

 「今のアスカなら反対しないかも知れないわね」

 「でも、その場合、レイはどうするのかしらね。黙って見てるって事は無いだろう
 し……」

 「そうね、レイはあれで結構行動力あるし。一途で世間知らずな分、怖いもの知らず
 で突っ走る所があるから……。シンジ君と既成事実を作っちゃうかもね。
 最低でも、ドイツまで追いかけて行くでしょうね」

 「だけど、ネルフにとってあの子達はなくてはならない存在だから、ドイツに行く
 っていうのはないわね。それに……」

 「それに、シンジ君争奪戦は、私たちの目の前でやってもらわないと、でしょ?」

 「そういう事」

 「ああー! しかし、ああいうのを見ると無性に冷やかしたくなるわね。
 ちょっと冷やかして来る

 「馬に蹴られないようにしなさいよ」

 注意はするが、止めようとはしないリツコだった。

 「大丈夫よ、私は国際A級冷やかしライセンスを持ってるんだから」

 「便利なライセンスだ事……」

 「じゃ、行ってくる」


 すっかりラブラブモードの三人に、ミサトの魔の手が迫る!?


 <つづく>


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