新世紀エヴァンゲリオン-if-

 第五部 ニセDパート


 ニセモノではなくホンモノを早く読みたい!


 「………………」

 「………………」

 しばらくの沈黙、そして……。


 「あ……あの……碇くん……

 「え!? な、何、綾波?」

 「わ、わたし……。や、やっぱり何でもない!

 「………………」

 「………………」

 そして再び気まずい沈黙。

 そして、気まずい雰囲気に耐えられなくなったシンジは、いったん部屋を出る事に
 した。

 「ちょ、ちょっと僕も喉が渇いたからジュース持ってくるよ」

 「あ、そんな事なら私が!」

 「いいっていいって。綾波にはさっき色々と手伝ってもらったから、今度は僕が
 やるよ。綾波はここで待ってて」

 シンジは、そう言って足早にキッチンへ向かった。レイは、シンジに言われた通り、
 素直に待つ事にした。

 シンジは、紅茶の紙パックを戸棚から出し、二セットのカップに、紙パックを乗せ
 て、ポットのお湯を注いだ。そして、トレイに二セットの紅茶の入ったカップを乗
 せ、食卓に持っていった。

 「はい、どうぞ」

 シンジは、そう言って、紅茶の入ったカップと、砂糖のスティックをレイの前に置
 いた。

 「レモンとミルク、どっちがいい?」

 シンジが話し掛ける。

 「………………」

 レイは何かしら考えている様子で、シンジの声が聞こえていない。

 「あ、あの……綾波?」

 「えっ!? な、なに、碇くん?」

 ようやくシンジの声を意識したレイは、慌ててシンジに聞きなおした。

 「レモンとミルク、どっちがいい?」

 「レ、レモン」

 レイは、可愛い声でそう答えた。あ、可愛い声はもともとだから、
 『いつも以上に可愛い声で』に変更しよう。

 「分かった。ちょっと待ってて」

 シンジはキッチンに向かい、冷蔵庫からレモンを取り出し、ペティナイフで輪切りに
 した。

 「はいどうぞ。さめないうちにね」

 シンジは、そう言いながら、小皿に入れていたレモンの輪切りを、スプーンを使って
 レイのカップに入れた。

 『ホント、主夫してるよな~』

 心の中でそう呟くが、もちろん声には出さない。

 シンジも自分のカップにレモンを入れ、砂糖のスティックの封を開け、半分程砂糖を
 入れ、スプーンでかき混ぜた。

 「……それで、さっきは僕に何を言いたかったの?」

 飲みかけのカップを皿に戻してシンジが言った。

 その言葉を聞いたレイは、手にしていたカップを置いた。しかし、無意識なのか、
 スプーンだけは手に持ち続けていた。

 「碇くん……わ、わたし……」

 必死に言葉にしようとするが、シンジを前にして、緊張してしまう。

 スプーンを持った右手が、震えている。

 そして、スプーンを皿に置き、レイは決意した。

 「わ、わたし……ニセモノを使うのは良くないと思うの!
 いつもダマされている尾崎さんの事を考えたら、心が痛いの!

 言ってしまった後、急に後悔したのか、レイは涙を落とした。

 「ごめんなさい! 迷惑だと分かっているんだけど……」

 レイがうつむいて涙を流していると、シンジがハンカチを差し出した。

 「綾波、ごめん。君がそんなに心を傷めてたなんて知らなかった」

 「でも、大丈夫だよ。これはお互い了承の上でやってるんだ!
 だから、迷惑だなんて言うなよ」

 シンジは、優しくそう言った。


 ……一方、その頃。

 ガー、ガシャン。

 玄関のドアが閉まる音が響いた。

 「ただいま!」

 アスカが帰ってきた。

 「ちょっとアンタ達!! いつまでニセパート続けるつもりよ?!
 もうみんな忘れてる-if-第二部CパートBLACK・その壱なんか引っ張り
 出してきて……。いい加減にしなさい!


 <おわり>


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