新世紀エヴァンゲリオン-if-
第二部 Cパート (BLACK その伍)
「レ……レイ」
「いかり……くん……」
すっかりいい雰囲気になった二人は、お互いにじっと見つめ合っていた。
その時!
「な、何してるのアンタたちっ!!」
この現場を目撃したアスカは、思いっきり叫んだ。
「アスカ!」「惣流さん!」
「ファースト! なんであんたがここにいるのよ!」
なおも叫ぶアスカ。
「アスカ!」
止めに入ろうとするシンジ。
「何よシンジ! あんたまでこの女の味方すんの!?」
「アスカ、聞いてくれ! これには、深いわけがあるんだ!」
「ごめんなさい碇くん! 私がいると迷惑がかかるって分かってたのに、
碇くんに甘えてしまって……」
レイはそう言ってうつむき、涙を流した。
「さよなら……」
レイは、玄関の方に走って行った。シンジは止めようとしたが、アスカに腕を掴まれ
たので、レイを止める事ができなかった。
「アスカ、聞いてくれ! レイは昨日から僕らの家族になったんだ!」
シンジが心なしか強い声でアスカに声をかけた。
「家族ですって? どういう事よ! まさかあんた!」
「誤解するなよアスカ! これは、ミサトさんとも相談して決まった事
なんだ!」
「じゃ、私も家族じゃない! 私の意見も聞かずに勝手に決めるなんて!
あんた、ファーストが好きだから、一緒に暮らしたいんでしょ!
私の事なんて、どうでもいいんでしょ!」
アスカは頭を振りながら叫んだ。
「違うよアスカ! 確かに綾波を気にしているのは事実だけど、そんな
理由で綾波を家族にしたんじゃないんだ! 信じてくれ!」
「レイは、あの部屋で一人で暮らしているのが、辛くなったんだよ! アスカだって、
あの部屋で一人で暮らしたら、きっとレイの気持ちが分かるよ! もう誰にもそんな
思いをさせたくない! だから、みんなで暮らすんだ!」
シンジはアスカの肩を抱き、そう言った。
「ホントなのね!? 私を捨ててあの女を選んだ訳じゃないのね! ……解ったわ。
認めてあげる……そのかわり」
アスカは頬を上気させた。
「……キスして」
アスカの声が室内を反響したかのように、シンジには聞こえた。
「解ったよ! それでアスカが納得してくれるのなら!」
シンジはそっとアスカの肩を抱き寄せた。
アスカは頬を赤らめていた。そして、ゆっくりと目を閉じた。
やっとアスカの唇から離れたシンジは、
「ごめん、アスカ! レイを探してくる!」
言うやいなや、シンジは家を飛び出して行った。
ギーコ ギーコ
シンジ達の家と、綾波が住んでいた住宅との中間点にある公園のブランコに、レイは
乗っていた。ずっと下を向いたまま……。
ポタ ポタ
ときおり流す涙が、乾いた地面に吸い込まれて行く。
「碇くん……ごめんなさい」
何度も何度もつぶやき、そして自分の住んでいた住宅の方に顔を向けた。
「だけど、もうあの家には、帰りたくない……。碇くんの家にも行けない。
……私、どうしたらいいの?」
そして再びうつむこうとした時、走ってくるシンジの姿が見えた。
「碇くん!」
上を向いたレイの顔に、涙の筋がくっきりと付いていた。
「あやなみ……いや、レイ! 家に帰ろう!」
シンジが片手を差し出した。
「けど惣流さんが……」
また下を向くレイ。
「アスカも納得してくれたよ! だから、家に帰ろう!」
シンジが微笑みながら言った。
「碇くん!」
レイは感極まってシンジに抱きついた。
「レ、レイ。お願いがあるんだ」
「何? 碇くん」
「その……家族になった事だし……僕の事を碇くんじゃなくて、シンジ
と呼んで欲しいんだ!」
シンジは照れながらも、レイの方を向いて言った。
「うん! シンジ君!」「レイ!」
陽光に包まれた二人は、輝いて見えた。
「アスカ、戻ったよ」
シンジ達はそう言って食卓の方に行った。食卓ではアスカがピザトーストを頬張って
いた。
「おかえりなふぁい」
アスカは、少し照れくさそうにしながら、シンジとレイに声をかけた。
(食べ物を口にしたまま、しゃべってはいけません)
「ちょっと待ってね、レイ。今、温め直すから」
シンジは、そう言って、トースターのスイッチを入れた。
……チーン
「さぁ出来たよ」
温まったピサを皿に乗せ、レイの前に置いた。
「オレンジでいいかな?」
シンジは、冷蔵庫からジュースを取り出し、三つのコップに入れ、アスカとレイの前
に置いた。
「あの……シンジ君の分は?」
心配そうにレイが尋ねた。
「大丈夫だよレイ! ちゃんと三人分作ってたから!」
アスカは、シンジとレイが名前で呼び合っているのを見て少し嫉妬した。
「どう、アスカ。おいしい?」
「うん、おいしいわよ! シンジ!」
アスカは、嫉妬していた自分を恥じた。
シンジは冷蔵庫に入れていた、ラップされたピザトーストの材料を取り出し、トース
ターに入れた。
アスカは内心ほっとしていた。なぜなら、シンジの分を当てつけがましく食べたつも
りだったからだ。
「冷めたらいけないから先に食べててよ」
シンジは満面の笑みで微笑んだ。
その後、アスカもレイの引越しを手伝った事もあり、夕暮れの迫る頃には、引越しが
完了していた。
「あぁー、疲れた! お昼がアレだったから、もうおなかも空いたわよ!」
アスカが食卓の椅子に座り、テーブルにうつ伏せになっていた。
「すぐ用意するよ!」
シンジはスーパーで買って来た材料を取り出し、準備を始めた。
「あの……アスカさん。ありがとうございました」
レイがアスカに声を掛けた。
「いいって事よ! それと、アスカでいいわよ!」
アスカが顔を上げて言った。そして、隣に座ったレイを引き寄せて耳打ちした。
「……いい。抜け駆けはナシだからね」
アスカが顔を赤らめて言った。
この時、ジオンと連邦の間で、終戦協定が結ばれた……。
「「それは番組が違うわよっ!」」
アスカとレイがユニゾンでツッコミを入れた。
「……いい。抜け駆けはナシだからね」
「わかった。じゃ、昨夜は私がシンジ君と寝たから、今晩はアスカが
寝たらいいわ。これでおあいこでしょ!」
そう言って、レイは微笑んだ。
アスカはそれを聞き、まるで身体中の血液が顔に集まったかのように真っ赤になった。
「くぉら、このバカシンジ! それ本当なのっ!?」
アスカは席を立った。その時、椅子が倒れたが気にも止めなかった。
「ん? どうしたのアスカ!」
料理していたシンジは、手を止めて振り返った。そこには、アスカが仁王様の表情
で、その名の通り仁王立ちしていた。
「昨晩、レイと寝たってホントなの、シンジっ!?」
「え? ……あ……その……うん。」
うつむくシンジ。
「なんですってぇー!!」
シンジに掴み掛かるアスカ。身の危険を感じたシンジは、
三十六計逃げるに如かず
を実践していた。
「そーりゅー、寝たのは事実だけんど、オラ何もしてねぇだぁー」
(なぜこんな言い方をする!? シンジ)
「そんなら、なんで逃げるのよぉーーっ! やましい事があるからでしょうが!」
家の前を逃げ回るシンジをひたすら追いかけるアスカを見て、レイは思った。
『私、何かいけない事言ったかしら……』
アスカが納得したのは、それから三十分後の事だった。
「ふっ……平和だな。この平和を続けるためにも、我々はもっと努力しなければ
ならんな……」
ゲンドウは、報告書を読み終えた後、そうつぶやいた。
あんたが余計な事しなかったら、ずっと平和は続くよ!
新世紀エヴァンゲリオン-if-
Cパート (BLACK) 完
通常のCパートを読む
通常のBパートを読み直す
[もどる]