新世紀エヴァンゲリオン-if-
第一部 Eパート
「……綾波」
二人は互いの手を取り、見つめあっていた。
しかし、その静寂を破るかのように、ドアが開いた。
「ファースト、起きてる?」
シンジは慌ててドアを見た。
見ると、部屋にアスカとミサトが入ってきていた。
「ア、アスカ!? ミサトさん、アスカ動いて大丈夫なんですか?」
「いいわけないわよ。だけど、絶対ここに来るって聞かないから、仕方なく」
「ちょっとファースト! 何シンジと見つめ合ってるのよ!
手まで握っちゃって」
アスカは真っ赤になって怒っている。シンジは慌てて手を離そうとしたが、レイが
離してくれなかった。
「いい、ファースト。シンジは『私が好き』って言ったのよ」
「それは見てたわ」
「あ、あんたまで見てたの!? ……それじゃ知ってるでしょ。私とシンジは、
もう二回もキスした恋人同士なのよ」
「へ~二回目だったの。シンちゃんやるわね~。一体、いつの間に……」
ミサトは面白そうにシンジを見た。シンジは、レイとアスカを見比べ、ただオロオロ
するばかりだった。
「恋人同士?」
「そっ。だから、今更あんたがシンジの事好きって言っても、もう遅いの。分かった
かしら?」
アスカは勝ち誇ったかのように、そう言った。
一方、レイは、何かを考えていた。
「……碇くん」
えっ、とシンジが振り向くと、レイの顔が急に近づいてきた。そして、二人の唇が
重なった。
「んっ!?」
『綾波が……僕にキスしてる……』
それだけでシンジは固まってしまい、頭の中が真っ白になってしまった。
「あーーーーっ!」
「おーーーーー!」
「ちょっとファースト! 何やってるのよっ!! 離れなさいよっ!!
一体、どういうつもり?」
アスカは、レイとシンジを離して、詰め寄った。
「キスすれば、恋人同士になれるんでしょ?」
「な……」
「それとも、二回しなければいけないの?」
そう言って、もう一度シンジにキスしようとした。が、アスカに止められた。
「……キスなんてものはね、好きな人同士がするものよ」
「私は碇くんの事が好きだわ」
「だからって、無理にするもんじゃないのよ」
「アスカだって、碇くんにキスして欲しいって頼んだでしょ?」
「うっ……」 (引き)
『この女、前より更にやりにくくなったわね。……こうなったら、どちらが好きか、
シンジに決めてもらうしかないわね』
そう思って、シンジを見たが、シンジはまだボーーっとしていた。
『くっ、ダメね。優柔不断のシンジに決められるハズないし……。最悪の場合、
ファーストの事も好きと言いかねない』
一瞬でそう判断したアスカは、ミサトに言った。
「ミサト、私、今日退院する」
「何言ってんのよ!? アスカは絶対安静だって言ってるでしょ。本来、歩く事すら
許可できないのよ。……だいいち、退院してどうするの?」
「私の事は大丈夫よ。シンジが面倒見てくれるから。それに、私がシンジを見張って
ないと、この女がシンジに何するか分かったもんじゃないわ」
「ダメよ。シンジ君だっていつもアスカを見ていられるって訳にもいかないし、
使徒だっていつ来るかも分からないんだから」
そんなやり取りを見て、レイが口を開いた。
「大丈夫です、葛城三佐。私が碇くんと一緒にアスカを看病します」
「なんで、そこであんたが出てくるのよ?」
「遠慮しないでいいわよ。女でなければ困る事もあるでしょ? 碇くんに、そんな
事までさせられないわ」
レイはそう言いながら、アスカと静かに睨み合っていた。
「……とにかく、アスカの退院は認められません。退院したければ、早く身体を
治す事ね」
アスカは不満顔だったが、認めざるを得なかった。
「……仕方無いわね。シンジ、私を部屋まで連れていって」
そう言って、わざとらしくシンジにもたれ掛かった。レイの眉がピクっと動く。
『……この感じ、これが葛城三佐の言っていた嫉妬なのかな……』
そう思うと共に、シンジを取られたくない、アスカには負けたくない、といった
ような、独占欲やライバル心が沸き上がってきた。
「碇くん、私もアスカの病室に行くわ」
「どうしてファーストが来るのよ」
シンジにしがみつきながら、アスカはレイにそう言った。
「お見舞い」
「え?」
「アスカは、そんな身体で私のお見舞いに来てくれたんでしょ。だから、私もアスカ
のお見舞いに行くの」
「無理しなくていいわよ。あなたは寝てたら?」
「私は大丈夫。碇くんがずっとそばにいてくれたから」
今度は、アスカの眉が動いた。
二人の間に火花が散っていた。ミサトは、そんな二人を面白そうに見ていた。
シンジは、二人が元気になって良かったと、ただ微笑んでいた。
「ちょっとシンジ、何ニコニコしてんのよ?」
「え? い、いや二人が元通り元気になって本当に良かったなって思って」
そう言ってシンジは微笑んだ。それは、心の底から二人の事を喜んでいる、極上の
笑顔であった。
そんなシンジの笑顔を見て、アスカは何も言えなくなった。
『う……。この笑顔は犯罪的ね。何も言えなくなるわ。……まぁ、今日は私の事が
好きだとはっきり言ったんだから良しとしよう。…………それにしてもシンジって
こんなにカッコ良かったんだ』
と、赤くなりながらも、絶対レイには負けない、シンジは渡さない、と改めて誓っ
ていた。
一方、レイもまた、シンジの笑顔を見て、赤くなっていた。
『私は、碇くんの笑顔をずっと見ていたい。碇くんもいつもそばにいるって言って
くれたし、私を守るとも言ってくれた。私は、碇くんと同じ時を生き、同じ記憶を
共有したい』
二人の少女にここまで想われているとは知らず、シンジは微笑んでいた。
そんな三人を見ながら、これから始まるであろう、シンジを巡る三角関係の事を
思い、ミサトはニコニコしていた。
『私は二人の保護者だし、三人の上司なんだから、この三人の一番そばで見ていら
れるのね。この先、面白くなりそうだわ』
と、無責任に喜んでいた。
そして、そんな四人を、またしても見ている人物がいた。
「ふられたな、碇」
「…………」
<つまずく……もとい……つづく>
Fパートを一刻も早く読みたい!
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