「あ、綾波っ!」
シンジは、慌ててレイを支えた。
「ちょっとリツコ、これは一体どういう事?」
「そうね……。一度にいろんな事を考えたり思い出そうとしたから、脳に負担が
掛かったのだと思うわ。記憶喪失の人にたまに見られる症状ね」
「だ、大丈夫ですよね!?」
シンジが心配そうにリツコに聞いた。
「気を失っているだけだから心配いらないわ。念のため、目が覚めたら検査はして
おくけど」
「……とりあえず、レイをベッドに寝かさないといけないわね。シンジ君、
レイをお願いね」
「ハイ。分かりました」
三人はレイを近くの病室のベッドに寝かせた。レイは、静かな寝息をたてていた。
「大丈夫よ、シンジ君。レイはしばらくしたら目を覚ますわよ。それまで、そばに
いてあげてね。目を覚ました時、シンジ君がいれば落ち着くと思うから」
リツコはそう言って、不安そうなシンジを落ち着かせた。
「じゃ、私はまだ仕事があるから……。シンジ君、レイが目を覚ましたら連絡
してね。……ミサトはどうするの?」
「そうね……レイは大丈夫みたいだから、アスカのお見舞いにでも行ってくるわ。
……シンちゃ~ん、レイを頼むわよ。気を失ってるからって、いたずらしちゃ
ダメよ」
「し、しませんよ。そんな事!」
シンジは真っ赤になりながら否定した。ミサトとリツコは、笑いながら部屋から
出て行った。
「まったく……ミサトさんって、いっつもあーなんだから……」
文句を言いながらも、ミサトの笑顔を見るのは久しぶりだったので、怒る気には
なれなかった。
それでも、あんな事を言われたので、変に意識してしまい、レイの顔を見て真っ赤
になってしまった。
『綾波は僕の事を覚えてるって言ってくれてるし、僕の事を頼りにしてくれてるん
だな……。誰かの役に立つって、誰かに頼られるって、こんなにも気持ちのいい
事だったのか……』
『……とりあえず、今は綾波が目を覚ますまで見守っていよう。綾波がいつも
そうしてくれてたように……』
シンジはそう思い、優しい瞳でレイを見続けていた……。
ミサトは、アスカの病室の前に来た。
「アスカ、入るわよ」
そう言って病室に入ったミサトは、目を丸くした。
「アスカ! あんた何やってるの!?」
<つまずく……もとい……つづく>