新世紀エヴァンゲリオン-if-

 外伝 弐拾七 ユイさん温泉旅行に行くの巻

 - Hパート -


 「……楽しそうですね、ミサトさん」

 「まぁね、こーんな面白い事最近なかったし、たっぷりと楽しませてもらわなく
 っちゃね。期待してるわよ、シンちゃん」

 「はぁ~~~~~~」

 大きなため息をつくシンジの元にレイとアスカが帰ってくる。そして、レイはシンジ
 とミサトの間に入り、シンジの腕にしがみつく。

 「あらあら、相変わらず仲のおよろしい事で。取ったりしないからそんな目で見ない
 でよ」

 「まーったく、すぐにそうやってくっつくんだから! この変態兄妹
 が!!」

 「まーまー、アスカもそう目くじら立てないで。じーっくりとシンちゃんの話を
 聞きましょう」

 「え? 話?」

 「そ。いくらゲームセンターの景品とはいえ、いきなり指輪をプレゼントするなんて、
 何か下心でもあるんじゃないの?」

 「ち、違いますよ」

 「どう違うのよ!!」

 「だからさっきも言っただろ。レイが欲しがったからだって。それに、その前に
 ぬいぐるみだってたくさん取ってるし」

 「ぬいぐるみ?」

 「はい。レイの部屋って何も飾りとか無いから、ぬいぐるみでも置けば少しは賑やか
 になるかと思って」

 「ほほう、つまりシンちゃんはレイの部屋に入り浸ってるというわけね」

 「は? な、何でそうなるんですか?」

 「だってそうでしょ。いくら一緒に暮らしてるからといって、女の子の部屋に入る
 なんてよっぽどの事よ。ちなみにアスカ、シンちゃんが部屋に入って来た事ある?」

 「一度だって無いわよ」

 「そうなんだ、良かった」 (レイ)

 「ほら~~~アスカの時は入らなくてレイの時は入る。この差は何
 かな~~~?」 ニヤニヤ

 「答えてもらおうじゃないのよ!」 ジロリ

 「だ、だってアスカ入って来るなって言ってたし、ふすまにも入るなって書いて
 あったじゃないか」

 「じゃあ何、ファーストはいつでも入って来いってドアを開けてる
 わけ~~~!?」

 「ええ、そうよ」

 「は?」

 「お兄ちゃんが入って来やすいように私はいつでもふすまを開けてるわ……でも
 なかなか来てくれないから、いつも私がお兄ちゃんの部屋に行ってるの」

 「なるほど。入り浸ってるのはレイの方か。で、シンちゃんの部屋で何してるの?」

 「まさか一日中今みたいにシンジの腕にしがみついてるなんて言うんじゃないで
 しょうね?」

 「そうしてるけど、何か悪いの?」

 「こ、こいつは~~~!!

 「ふふふ。ん? ……みんな静かに」

 「え? どうしたんですかミサトさん?」

 ミサトの雰囲気が変わったのでシンジも小声になる。

 「……誰かいるわ」

 「え? 別にいいんじゃないですか。ここ大浴場だし、他のお客がいても不思議じゃ
 ないですよ」

 「コソコソ隠れてこっちを伺ってるってのが気に入らないのよ」

 「ほんとにいるの? ミサトの気のせいじゃないの?」

 「いいえ、確かにいるわ……そこだ!!

 ミサトは持っていたお猪口を湯気の中に投げつける。

 ぐあっ!!

 「よっしゃ! 手応えあり!」

 「ちょ、ちょっと、ほんとに誰かいたわけ?」

 慌ててタオルを押さえるアスカを残し、ミサトは声のした方へ近づいていく。

 「この私の裸を盗み見しようなんて奴は地獄に送ってやるわ!

 「ミ、ミサトさん落ち着いて下さいよ。ここ混浴ですよ」

 「なら堂々としてればいいのよ。やましい下心があるからコソコソしてる
 のよ!

 ザバザバとお湯をかき分け、ミサトはとうとう おでこを押さえつつ逃げようとして
 いる男を見つけた。

 「入口は反対側よ。逃げられないわ。おとなしくしなさい。 !! か か
 加持ぃ!?

 「よ、よぉ葛城、相変わらず凛々しいな」

 「え? 加持さん?」

 「ええっ、加持さん!? どこどこどこ!?」

 「あ、あんた何でこんなとこにいるのよ!? いつ日本に戻ったの
 よ!?」

 「あ、ああ、つい昨日だ。任務終了と共に特別休暇+旅行をもらったんで、こうして
 温泉につかってるというわけだ」

 「ならさっさと連絡してきなさいよ!! 生きてるとは聞いてたけど、
 私がどれだけ心配したと思ってんのよ!!」

 「済まなかった。しかし、あそこまで言っておいて、実は生きてましたじゃ格好が
 つかんだろ?」

 「格好つけてどうにかなる顔じゃないでしょうが!」

 「ははは。キツいな、相変わらず」

 「とにかく、今後一切無断で私の前からいなくなるんじゃないわよ。八年前に言え
 なかった言葉とやらを私はまだ聞いてないんだから」 プイッ

 「あ……あぁ、そうだったな。せっかくこうしてまた会えたんだ。今言おうか?」

 「もうちょっと雰囲気ってもんを考えなさいよ。そういうのは二人っきりの時にする
 ものなの。一生に一度の事なんだから」

 「そうだな。じゃあまた後で改めて、という事で」

 「そうしなさい。ところで加持、あんたまさかレイとアスカの裸見てないでしょう
 ね?」 ジロリ

 「は? おいおい、俺だって命は惜しいさ。それに、俺は葛城一筋さ」

 「フン!どうだか」 プイッ

 「ミサトさんはこの人と結婚してるんですか?」

 「え?」

 「ファースト、あんたいきなり何言ってんのよ」

 「だって今の話……他の人に裸を見せたくないという事でしょ? お母さんがお父
 さんに言ってたのと同じ……。だから二人は結婚してるんじゃないかと思って……。
 違うんですか?」

 「ち、違うわよ。私と加持はまだそんな事……」

 「まだ? ではいつ結婚するんですか?」

 「いやだから……その……あは……あはははは……」

 「?」 (レイ)

 『……加持さん……やっぱりミサトの事を……ミサトも否定しない……。八年前に
 言えなかった言葉ってやっぱり……プロポーズなんだろうな……。はぁ……』

 アスカはどこか寂しそうに加持とミサトを見て、その後チラリとシンジを見る。

 『はぁ~~~私にはこんなのしか残ってないのか……』

 「お兄ちゃんは”こんなの”なんかじゃないわ。あと、残ってもないわよ。私の
 だもの」

 「んな!? あ、あんたね! いくら非常識だからって人の心
 勝手に読むんじゃないわよ!!」

 「声に出てたわよ」

 「え、嘘?  はっ!  ま、まさかシンジにも聞かれたの?」

 『やだ、どうしよう……』

 「心配しなくても大丈夫よ。お兄ちゃんにとって有害な情報は私が防ぐから」

 レイはしっかりとシンジの両耳を塞いでいた。

 ムッカ~~~!!

 「あんたねぇ! 一体何の権利があってそういう事するのよ!?」

 「聞かれたくなかったんでしょ。なぜ怒るの?」

 「そんな事はこの際どうでもいいのよ! 問題はあんたの態度よ!
 まったく気に食わないわね」

 「……あなたこそ、どうしていつも私たちのする事に文句を付けてくるの?」

 「あんたが非常識な行動を取るのがいけないのよ! 今だって勝手に
 シンジの耳を塞ぐし、何様のつもりよ?」

 「だって、お兄ちゃんと私は他人じゃないからいいの」

 「なっ!!!」

 「ほほう、意味深な発言ね」

 「シンジ君、やるじゃないか」

 「シンジ!! 一体どういう事よ!?」


 <つづく>


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