新世紀エヴァンゲリオン-if-

 外伝 弐拾七 ユイさん温泉旅行に行くの巻

 - Eパート -


 シンジ達は様々なセキュリティを抜け、大きなホテルのロビーにいた。
 そこは、シンジ達のいた宿とは違い、大勢の人で賑わっていた。

 「賑やかだな……。レイ、どこから行こうか?」

 「私、こういう所は良く分からないから、お兄ちゃんが決めて」

 「んー じゃあ、とりあえずゲームコーナーにでも行ってみようか?」

 「うん」


 ゲームコーナーには様々なゲームが並んでいる。あまりゲームセンターに行かない
 シンジとレイには分からないが、山の中にあるホテルとは思えないほど最新のゲーム
 が並んでいた。

 『……どれにしようかな……でもこんなにお金があるし……使い切れるのかな……』

 「レイ、どれがやりたい?」

 「良く分からない。お兄ちゃんが決めて」

 「そうだな……」

 辺りを見回すと、クレーンゲーム機のコーナーが目に入った。

 『あれなら一回のゲーム時間が短いし、二人で楽しめるかな』

 「じゃあ、クレーンゲームでもやってみようか?」

 「クレーンゲーム?」

 「うん、人形やカプセルに入った小物なんかを取るゲームだよ。結構面白いよ」

 「やり方教えて。私、やった事ないから」

 「うん、いいよ。でも、僕もあんまり上手くはないんだけどね」

 こうして二人はクレーンゲームを始めた。レイは初めてだったが、なかなか気に
 入ったようで、何度も挑戦していた。あまり上手くない二人ではあるが、軍資金が
 山ほどあるので、幾つかのぬいぐるみを取る事ができた。

 「結構取れたね」

 「うん、面白いね、お兄ちゃん」

 「でもぬいぐるみは荷物になるからこれ位で止めておこうか。次はもっと小さな物
 狙おうかな」

 「小さな物?」

 「うん、カプセルに入ったアクセサリーとかを狙ってみようよ」

 「アクセサリー……これ?」

 レイが指さす先には、カラフルな色使いのアクセサリーが入った丸いカプセルが
 たくさんあった。

 「そうだね、これがいいね。さっきと同じように、このクレーンを動かして取るん
 だよ」

 「綺麗……」

 「気に入った? どれがいい? 取ってあげるよ」

 「うん、お願い。あれがいい」

 レイの欲しがっているカプセルを目指し、クレーンを動かす。丸いカプセルがコロ
 コロと転がり、なかなかうまく取れないが、何度目かの挑戦でようやく取る事が
 できた。

 「ふー、やっと取れた。はい、レイ。これだろ?」

 「ありがとう! お兄ちゃん!」 うるうるうる

 「え……と、そんなに喜ばれるとかえって気が引けるな……。おもちゃだし……」

 「ううん、そんな事は関係ないの! お兄ちゃんが何かプレゼント
 してくれるのがとっても嬉しいの!」 にっこり

 「そ、そう。レイが喜んでくれて良かった」

 「うん!」

 レイは嬉しそうにカプセルを開ける。中身は指輪だったので、レイは早速はめて
 みる。迷う事なく左手の薬指に……。

 「え!? レ、レイ、ど、どうしてその……その指に……?」

 いきなりの行動にシンジは慌てる。

 「え? 私はただ、お母さんがこの指に指輪をはめてるから、指輪はこの指にする
 ものだと思って……違うの?」

 「え……と、その……ま、まぁいいけど……」

 『レイは別に何も考えてないみたいだし、別にいいか』

 「そう……。あの、お兄ちゃん……似合うかな……?

 少し恥ずかしそうに、シンジの前に左手を出す。期待と不安の入り交じった目で
 シンジを見る。

 『ああ、やっぱり可愛いな……』

 シンジはすっかり見とれてしまう。

 おもちゃの指輪とはいえ、レイの白い指に良く似合っていた。ただ、もし本物の
 宝石を付けたとしても、より一層レイの指を引き立てるだけで、決して宝石に負ける
 事はないであろう。もっとも、レイにとっては、さっきも言ったようにおもちゃか
 本物か、安いか高いかなどには全く興味がなく、ただ純粋にシンジからのプレゼント
 が嬉しいようであった。

 「 ……お兄ちゃん?」

 「え? あ、ああ、ごめん。うん、良く似合ってるよ

 「ほんと!? 良かった!」

 そう言ってシンジの腕に抱きつく。

 すっかり二人だけの世界ができあがっている時、シンジは周りの視線に気付く。
 その視線には、嫉妬、羨望、やっかみ、殺意……など、様々な物が入っているよう
 に感じられた。まぁ、これだけ人の多い所でここまでいちゃつかれたら、周りの人間
 にとっては面白くないのは当然である。しかも、レイは誰もが振り返るほどの美人で
 ある。

 はっきり言って、他の男達にとってシンジとは、殺意を向けるべき存在以外の
 何物でもなかった。

 レイと二人でいると、こういう視線を感じる事が多い(つまり普段からいちゃついて
 いる)ので、シンジも少しは周りの視線に敏感になってきているので、慌ててこの場
 から離れようとする。

 「あのさ、レイ、このホテル随分と大きいし、他の所も色々と回ってみようよ。
 どこか他に行きたい所とかあるかな?」

 「他の所? ……お風呂に行きたい」

 「え? 風呂?」

 「うん。お母さん、このホテルには大きなお風呂があるって言ってた。私、そこに
 行ってみたい」

 「うん、そうだね。レイはお風呂好きだしね。じゃあ、行こうか」

 「うん! お兄ちゃん、また一緒に入ろうね!」 にっこり

 「う……」

 周りの視線に一斉に殺意がこもる。

 「い、いや……こ、ここはきっと別々だと思うよ」

 「え……そうなの……」 がっかり

 「と、とりあえず早く行こう」

 一刻も早くこの場から離れたいシンジは、がっかりしているレイの手を取り、足早に
 立ち去る。一緒に入れないと知ってがっかりしていたレイだったが、シンジの方から
 手を繋いでくれた事が余程嬉しいのか、すぐにニコニコと微笑んでいた。

 後に取り残されたゲーマー達は、モヤモヤとした思いをどうする事もできず、熱い
 バトル(ゲームの中で)を繰り返していた。

 なお余談だが、自分のパンチ力を測るゲームにゲーマーが殺到し、前代未聞の記録
 達成者が続々と出現したという……。



 「……えーと、大浴場は……と……」

 ホテル内の見取り図を見ながら大浴場を探す。このホテルには様々なタイプの風呂が
 用意されているので、目的の場所がなかなか分からなかったかが、ようやく見つける
 事ができ、二人でそこまで歩いていく。

 「じゃあレイ、僕こっちだから」

 「……一緒に行っちゃダメ?」

 「だ、駄目だよ。こっちは男湯だから。レイは女湯に入らなきゃ」

 「……そう……」

 「え、えーと、それじゃあ先に出た方がさっきのロビーで待ってるって事でいい
 かな?」

 「うん、分かった」

 「じゃあレイ、ゆっくり入ってればいいよ。僕もそうするから」

 「うん、じゃあまた後で」

 こうして二人は、それぞれ扉を開ける。

 『うわ……広いや。さすが大浴場というだけあるな。脱衣所だけでこんなに大きい
 なんて……。でも、どうしたんだろ? 誰もいない……。掃除中って事はないだろう
 し……。みんな他のお風呂に入ってて、偶然すいてるだけなのかな……。まぁ、
 混雑してるよりはよっぽどいいや』

 てな事を考えながら服を脱ぎ、扉を開け、風呂場に行く。

 「うわ……さすがに広いや……」

 そこには、見渡す限りの大露天風呂が広がっている。大小様々な自然の岩が配置
 され、落ち着いた感じを醸し出していた。

 「すごいや……湯気で奥が見えない……どの位広いんだろ……」

 と、その時。

 「あ、お兄ちゃん!

 「え!? こ、ここって……混浴!?

 慌てて声のした方を見ると、レイが嬉しそうに駆け寄ってくるのが目に入った。
 ……全裸で。

 ぐはっ!!

 慌てて下を向き、しゃがみこむシンジであった。

 「あ! お兄ちゃんどうしたの?どこか具合でも悪いの?」 おろおろ

 レイは心配そうにシンジの目の前でしゃがみこみ、顔を覗き込む。だが、そんな事を
 されればシンジは目のやり場に困ってしまう。

 「え、え~と……ぼ、僕は大丈夫だよ。そ、それよりレイ、あの……タ、タオルは
 どうしたの?」

 何とか目を逸らし、レイの身体を見ないように必死になりつつも、その疑問を口に
 する。

 「タオル?」

 「うん、さっきは巻いてたのに、どうして今してないの?」

 「女湯だと思ったからいらないと思って」

 「でも、ほら、ここ混浴みたいだし……その……」

 「うん! またお兄ちゃんと一緒に入れる。嬉しい!」 にっこり

 「あ、いや……その……あ、そうだ、こういう時どうするかとか、母さんから何か
 聞いてない?」

 「お母さんから……」

 「うん。ほら、温泉のルールとか」

 「あ、そういえば……」

 「やっぱり聞いてた?」

 「うん。他の人がいるかも知れない所で裸になるとお兄ちゃんが嫌がるから、
 二人きりの時にしなさいって言われた」

 「んなっ!?」

 「他の人いないみたいだけど……。うん、私はお兄ちゃんだけに見て欲しいし、
 お兄ちゃんが嫌がるのは私も嫌だからタオル巻いてくるね。待っててね!」

 そう言って嬉しそうに脱衣所に入っていく。

 『か、母さん……一体レイに何教えてんだよ……ま、まぁ今回は助かったけど……。
 でも、レイって相変わらず羞恥心ないな……これじゃあこっちがたまらないよ……。
 でも、ま、たまたま他の人がいなくて良かった。レイも何か変に理解してるよう
 だけど、タオルは巻いてくれるようだし……。やっぱり他の人(男)にはレイの裸を
 見せたくないものな……。

 はっ!? ぼ、僕は何を考えてるんだ……』

 結構独占欲の強いシンジであった。

 やがて、レイがタオルを巻いて戻ってくる。その頃にはシンジもようやく落ち着けた
 ようであった。

 「レイ、女性用の脱衣所、他の人いた?」

 「ううん、いなかった」

 「そうなんだ、こっちも誰もいないんだよ。どうしたんだろう? こんなに大きな
 お風呂なのに……」

 「偶然じゃないのかな。それに、私はお兄ちゃんと二人きりの方が嬉しいから、
 誰もいない今の方がいい!

 そう言ってシンジの腕に抱きつく。

 「。そ、そ、そうだね。静かでいいね。のんびりできるし」

 「うん」

 その時、風が吹き、湯気が晴れていく。

 「ん? 誰かいるのかな?」

 「あ!」


 ここで時間を少し遡る。


 「ぷはぁ~~~くぅ~~~っ! いや~~~雪景色を見ながら
 のんびりと温泉につかり、酒を飲む。まさにこの世の極楽ね!
 あ~ぁ、酒が美味しいわぁ~~~!」

 「何言ってんのよ! さっきは美味しい料理とビールが最高だって
 言ってたじゃないのよ!」


 この声に ピンと来たら はい次回(笑)


 <つづく>


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