新世紀エヴァンゲリオン-if-

 外伝 弐拾四 シンジハチャメチャ! 酔いどれてプッツン

 - Fパート -


 「綾波、アスカ、帰ろ……」

 ぱたっ

 シンジはいきなり倒れてしまう。

 碇君!? どうしたの碇君!? しっかりして!」 おろおろ

 「ちょっとシンジ!? どうしたのよ急に!?」

 「シンジ君!? シンジ君! しっかりして!」

 「活動限界ね」

 「活動限界?」

 「そ。ミサトの話によれば、シンジ君、ビール四本を一気に飲んだんでしょ。今まで
 一度も飲んだ事のない十四歳がそんな飲み方をすれば、当然こうなるわよ」

 「でも今まで普通にしてたじゃない」

 「特殊な酔っぱらい方してたんでしょ」

 「大丈夫なの?」

 「あれだけ動き回ってたから だいぶんアルコール抜けただろうし……体内の
 アルコールを分解する注射を打っておくわ。後はゆっくり寝かせておけば大丈夫
 よ」

 「そうなんだ。良かった」

 「あの……葛城三佐」

 「ん? 何、レイ?」

 「私はどうすればいいんですか? 碇君が飲みに来るよう誘ってくれてるんです
 けど」

 「シンジ君がこれじゃあ今日は無理ね。また今度になさい」

 「そうですか……。あの、看病に行きましょうか?」

 「来なくていい!!」

 「へ? ……ああ、大丈夫よレイ、このまま寝かせるだけだからその必要もない
 わ。気持ちだけもらっとくわ。シンジ君にもちゃんとレイが看病しようとしてくれた
 って伝えておくから安心して」

 「そうですか。お願いします」

 「……さてと。アスカ、シンジ君を車まで運ぶの手伝って」

 「まったく世話が焼けるわね」

 「嫌なら私がやるわ」

 「あんたは触らなくていいの! 私が運ぶんだから!!」

 「いいじゃない、レイにも手伝ってもらえば。楽だし」

 「待ちたまえ、葛城君」

 「は、はい」

   『ついに来たか……』

 「な、何でしょうか? 碇司令」 ビクビク

 「六ヶ月間減俸30%、ボーナスなし、今後三年間昇給なし、及び
 ネルフ内のトイレ掃除をしてもらう。いいな?」

 「…………はい」

 『とほほほほほ~~~』

 「良かったわねミサト、その程度で済んで。私は良くてクビ、悪くすると殺される
 かと思ってたけど、よっぽど実力を認められてるのね。さっきシンジ君に言われた
 のが効いてるんでしょうね。シンジ君に感謝しなくちゃね」 ひそひそ

 「なんか複雑ね。シンジ君が暴れたから処分されてるってーのに……」

 「元はと言えばミサトの責任でしょ」

 「……反省してます」

 「レイ、シンジなど その二人(ミサトとアスカ)に任せておけば良い。こっちに
 来なさい。私と酒を飲むぞ」

 「碇君を車まで運ばないといけませんし、その後用事がありますので
 失礼します」

 がぁあああぁぁぁ~~~ん……

 「レ、レイ……」

 『シンジに誘われた時は行くと言っていたのに……なぜ私の時には来ん……用事は
 無いはずなのに……何故だ!?

 「さ、さぁレイ、アスカ、シンジ君を運ぶわよ」

 『いつまでもここにいたらまた碇司令に八つ当たりされそうだし、とっとと帰った
 方が得ね』

 思いっきりフラれたゲンドウを心の中で笑いながら、周りの職員は自分の持ち場に
 戻っていった。


 その後、ゲンドウはひたすらヤケ酒を飲み、冬月に絡みまくっていた。

 「なンだよシンジのやつ……グスングスン……私の気持ちも知らないで…… ヒック
 レイもレイだ。みんなの前であんな……グスン……私に恥をかかせなくったって……
 ううう ユイ~~~ なぜ死んだんだぁ~~~!?

 『やれやれ、こいつがこんなにも泣き上戸だったとはな。ユイ君、こいつの可愛い
 所というのは、まさかこれの事なのか? どう見ても不気味なだけだがな』

 「冬月~~~ 聞いているのか~~~?」

 「あー、聞いているとも」

 『はぁ~~~』

 冬月にとって最悪の夜は、こうして更けていった……。



 そして次の日、日曜日なのでシンジとアスカはシンクロテストのためネルフ本部に
 やってきていた。

 「痛たたたた……頭が痛くて痛くて……」

 「二日酔いに決まってるでしょ! まったくバカなんだから。布団まで運ぶの
 大変だったのよ」

 「ご、ごめん。それと、あんまり大きな声出さないで。頭に響くんだ……。それに
 しても、僕ってほんと、お酒に弱いんだな。一本飲んだだけでこんなになるなんて」

 「はぁ? 何言ってんのよあんた。自分でガバガバ飲んでたじゃないの」

 「僕が? まさか。何か夢でも見たんじゃないの?」

 「……あんたひょっとして、昨日の事 何も覚えてないの? 使徒の事とか?」

 「使徒? アスカやっぱり夢でも見たんだよ。そんなの来てないじゃないか」

 『コイツ、ホントに何も覚えてないわけ?』

 「でも何だろ。頭は痛いのに、何だか随分とすっきりした気分なんだ。
 なぜだろう?」

 『そりゃあね、あれだけ言いたい事言えば気分もすっきりするわよ』

 と、そんな二人の前にゲンドウが現れた。が、一言も話さず、シンジを睨み付ける
 と、そのまま通り過ぎていった。

 「どうしたんだろ父さん。何だか機嫌が悪そうだな」

 『そりゃそうでしょうね』

 「? ? ? 父さんは機嫌悪いみたいだけど、他の人は何だかニコニコしてるな。
 何かいい事でもあったのかな? ……ん? 何でこんな所に冷蔵庫が? 昨日まで
 無かったのに? ……しかもビールばっかり詰まってる。まさかミサトさん、僕に
 注意されたからって、ここで飲む気なんじゃ……」

 『あんたのよ、そのビールは』

 「碇君」

 「え? あ、綾波、お早う」

 「お早う、碇君」

 「これ、私が作った料理、食べて」

 『昨日何度も作り直ししたし……碇君の口に合うといいんだけど……』

 昨夜言っていた用事とは、料理の練習のようだった。

 「え? ぼ、僕に?」

 「無駄よファースト。シンジ、昨日の事 何も覚えてないんだって」

 「そうなの碇君……何も覚えてないんだ……」

 「残念だったわね、ファースト」

 『ま、確かに昨日のシンジなら結構いいセン行ってたし、強いし、私を守ってくれ
 たし……少し残念かな……。な、何考えてんのよ私は!

 「でも、そうじゃないかと思って、昨夜 赤木博士と相談しておいたの」

 『なぜかドグマに来るように言われたけど』

 「はぁ?」

 「何度かあの碇君が出てくれば、二つの性格が融合するんじゃないかって赤木博士
 は言ってた。優しい今の碇君と強い碇君が一つになれば…… 私は……」 ぽっ

 「な、何考えてんのよあんたは!」

 「碇君、これ飲んで」

 そう言って、レイは冷蔵庫からビールを一本取り出す。

 「え? で、でもこれはビール……」

 「昨日、一緒に飲もうって誘ってくれたのは碇君よ。私も飲むから、私の手料理を
 食べながら一緒に飲みましょう、ね」 にっこり

 『ああ、可愛い……。久しぶりだな、綾波の笑顔を見るのって……いいな、やっぱ
 り……』

 ガシッ!

 「え? な、何、アスカ?」

 「ファースト、今回に限り協力してあげるわ。私が押さえといてあげるから、今の
 うちにシンジに飲ませなさい。」

 『まったく、何ファーストなんかに見とれてんのよ』

 「そう……やっぱりあなたも碇君の事を……」

 「ち、違うわよ! ただ面白そうだからよ、ただそれだけよ!
 ……はっ!? って何よ、って!?」

 「碇君、無理にとは言わないし、無理に飲ませるのも嫌。碇君の意志で飲んで欲しい
 の。私のお願い」

 「綾……波……」

 手ぬるい!! レイ、もっと強引にいきなさい!」

 「葛城三佐?」

 「ミサトさん?」

 「ミサト?」

 「相手をその気にさせて飲ますのも一つの手だけど、シンジ君みたいに優柔不断な
 男の子には強引に飲ます方がいいのよ」

 「でも、碇君に無理強いはしたくありません」

 「じゃあ、強引でも相手が喜ぶ手段を使えばいいのよ」

 「? 具体的には?」

 「スバリ 口移し! これしかないわ」

 「……え?


 <つづく>


 [Gパート]を読む

 [もどる]