新世紀エヴァンゲリオン-if-

 外伝 弐拾四 シンジハチャメチャ! 酔いどれてプッツン

 - Bパート -


 「……え~い!こうなったらもうヤケよ!なるようになればいいわ。
 二人とも行くわよ!」

 ミサトはヤケになり、そう叫びながらネルフ本部へ向かった。


 ネルフ本部に着くと、ミサトはシンジとアスカをケージに向かわせ、発令所にやって
 来た。

 「状況は?」

 「現在、使徒は第一防衛ラインを突破。マギによる計算では約
 三十分後に第三新東京市に到着の予定です」

 「三十分……か。十分迎撃体制が整うわね」

 そうつぶやくと、ミサトは各方面に的確な指示を出す。とてもさっきまでビール
 五本を飲み、酔っぱらっていた人間とは思えなかった。この辺りはさすがプロと
 言えるだろう。もっとも、そのギャップを知らない日向君のような不幸な人物も
 生まれているのだが……。

 「葛城三佐、ケージより連絡が入ってます」

 「何?」

 「それが……シンジ君が搭乗を拒否しているようなんです

 「げ……」 『あのバカ……』

 「ミサト、どういう事よ? ここの所シンジ君、色々あったけどおとなしく乗って
 くれてたのに、どうして急にこうなるのよ?」

 「いや……その……」

 「葛城君、説明したまえ」 (ゲンドウ)

 「で……ですから……。私、ケージに行ってきます」

 『……もう、何でこうなるのよ。使徒と戦わせれば、使徒の攻撃で酔っぱらったって
 事にできたのに……。とにかく、何が何でも初号機に乗せなきゃ』

 「ミサト! ……まったく……私もケージに行くわ。マヤ、状況の変化をケージに
 知らせ……いえ、それより発令所の機能をケージに移した方が早いわね。マヤも
 来なさい」

 「はい、先輩」

 「日向君、青葉君、君達も行きたまえ。葛城君の補佐をするのが君達の役目だから
 な」 (冬月)

 「はい」×2

 発令所の主だったメンバーは全員ケージに移動する。

 (発令所が使えなくなった時を考慮して、ネルフ本部内の数か所に臨時の発令所の
 機能を代行する施設があるという事になってます)

 「シンジ君、どうしたの?」

 「どうしたもこうしたもないわよ。シンジのやつ、突然乗らないって言い出したの
 よ」

 「どういう事?」

 「こっちが聞きたいわよ」

 「シンジ君、一体どうしたの? なぜ乗らないの?」

 「あいつのために何かしてやるのが嫌になった。ただそれだけ」

 「あいつって……碇司令?」

 「そう」

 「ミサト、シンジ君酔ってるわよ! あんたまさか、ビール飲ませた
 んじゃないでしょうね!?」

 「い、今はそんな事言ってる場合じゃないでしょ! とにかく使徒を
 倒すのが先決よ。シンジ君、早く乗って! お願い!

 「い・や・で・す」

 「ううう……そこを何とか」

 「嫌です」

 「……そうだ。レイ、あなたが説得してみて。レイの言う事なら聞くかも知れない
 わ」

 「はい。 碇君、どうしたの? 出撃命令よ」

 「綾波は、命令なら迷う事なく出撃するの?」

 「ええ、そうよ。だってそれがパイロットである私の役割だもの」

 「役割……」

 「そう。与えられた役割は果たすものよ」

 「そうか、そうだよね」

 「碇君、分かってくれたのね」

 「うん、与えられた役割は果たさないといけないんだね。……ところで綾波、一つ
 聞きたいんだけど、いいかな?」

 「何?」

 「僕の父さんは、父親という役割を全く果たしていない。この事について
 どう思う?」

 「え?」

 「役割は果たさないといけないと言ったのは綾波だよ」

 「それは……その……」

 「自分は一切、父親としての役割を果たしてないくせに、僕にだけパイロットと
 しての役割を押し付ける。これっておかしいよね」

 「え? そ、そうなの……?」

 「そうだよ。人に役割を押し付けるんだったら、まず自分がちゃんと役割を果たさ
 なきゃいけないよ。それすらもできないダメ人間の言う事なんて聞く必要なんて
 ないよ。綾波もそう思うよね、ね、ね?」

 「そ、そうね……」

 「レイが言い負かされてる……」

 「強気なシンジ君に戸惑ってるようね。でも、今のって、司令の事を批判するシンジ
 君に同意したって事よね。レイが初めて司令に背いたって事か……」

 『このままシンジ君とくっつけばいいんだけど』

 「良かった、綾波に分かってもらえて嬉しいよ

 と言って、シンジはレイの手を握り、にっこり微笑む。

 「い、碇君!?

 「おおっ!」 (リツコ)

 「んなっ!?」 (アスカ)

 シンジの意外な行動にレイは珍しく動揺する。少し頬も染まっている。

 『……何、この気持ち……それに、心臓がドキドキしてる……。なぜ? ……分から
 ない……でも……』

 「くぉらバカシンジ!! 酔ってるからって何やってんのよ! ほら、
 さっさと初号機に乗りなさい! いつまでもファーストの手なんか握っ
 てんじゃないわよ!!」

 「乗りたくないって言ってるだろ」

 「この私の言う事が聞けないってーの? それとも、出撃もしないで、ここでファー
 ストの手を握ってる方がいいとでも言うわけ?」

 「うん」 きっぱり

 「え? 碇……君……?」 ぽっ

 更に頬が赤くなるレイであった。

 ムッカ~~~

 バカな事言ってないでさっさと乗れ!!!

 アスカはシンジを無理やり初号機の方へと引っ張ろうとする。

 「アスカ、止めて。碇君が嫌がってる」

 「あんたね、一体どっちの味方なのよ? さっきまでシンジに初号機に乗るように
 言ってたのはあんたよ」

 「え? あれ……私……どうして……?」

 「とにかく手を離しなさい」

 アスカはとりあえずシンジとレイを引き離す。

 「あ、あのねあなた達、痴話ゲンカは後にして、とりあえず出撃しなさい。でないと
 大変な事になっちゃうから」

 「だーれが痴話ゲンカよ!?」

 「分かりました、出撃します。碇君、戦いたくないならここにいて。私が使徒を
 倒してくるわ。手はその後にまた繋げばいいわ」

 「そうじゃないでしょ!」

 「あ、あのねレイ、シンジ君にも出撃するように説得して欲しいんだけど……」

 「碇君、嫌がってますから」

 「は?」

 「ファースト、あんたも酔ってんじゃないの? 普段と言ってる事が全然違うじゃ
 ないのよ」

 「そうね。でも酔ってはいないわ。これも私よ」

 『レイを今のうちにターミナルドグマに連れて行って全てのダミーに今のレイを
 コピーしておこうかしら……。いえ、絶対しておくべきね』 (リツコ)

 と、そこへゲンドウと冬月がやってくる。

 「何をぐずぐずしている。早く出撃させたまえ」

 「それが……シンジ君がどうしても初号機に乗らないと言って聞かないんです」

 「どういう事かね? 葛城君」

 「は、はい、実は……」

 ミサトは、先程シンジが言っていた事をゲンドウに話す。もちろん酔っている事は
 内緒である。

 「シンジ、今さら何を言っている。私はネルフの総司令だ。人類の未来の為に重要な
 仕事をしている。一人の父親などをやっている暇など無い。お前も分かっているはず
 だ。さっさと初号機に乗れ

 嫌だ! だいたい、今の言い方だとネルフの総司令をやってるから
 父親はできないって言いたいみたいだけど、それじゃあまるで総司令
 としての役割はちゃんと果たしてるみたいな言い方じゃないか!」

 「無論、果たしている」

 「何言ってんだよ! 無能のくせに!!」

 「な、何っ!?」

 「シ、シンジ君!?」


 <つづく>


 ざわざわざわざわ……


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