新世紀エヴァンゲリオン-if-

 外伝 弐拾四 シンジハチャメチャ! 酔いどれてプッツン

 - Aパート -


 ぷはぁーーーっ!! くぅ~~~っ!! やっぱ仕事の後の
 一杯はこたえられないわね~。まさに人生この瞬間のために
 あると言っても過言じゃないわね。後はオマケみたいなもんよ
 ね~」

 「なぁ~にが仕事の後の一杯よ。そう言ってもうそれ五本目じゃないの。まったく
 アル中なんだから」

 「あ~ら、私にとってビールはみたいなもんよ。アル中じゃないわよ。シン
 ちゃ~ん、もう一本お願いねん」

 「ミサトさん、アスカの言う通り、飲み過ぎですよ。もう止めて下さいよ」

 「気にしない気にしない」

 「駄目です。こんなに飲んじゃって身体にいいわけないじゃないですか。だいいち、
 ミサトさんのビールが一杯で冷蔵庫の半分も使えないんですよ。もう少し飲む量を
 減らして下さい」

 「だ~か~ら~ こうしてせっせと飲んで冷蔵庫を空けようとしてるんじゃないの
 よん(は~と)」

 「その後また買ってくるんでしょ。結局同じですよ。とにかく、今日はもう駄目
 です。明日から飲む量を減らして下さい」

 「も~~~ シンちゃんたらそんなカタい事言わないでさ~。ね、ね、ねぇ~
 (は~と)」

 「だめです。僕はミサトさんを心配して言ってるんですよ。明日だって仕事あるん
 でしょ」

 「だ~いじょうぶよ、このくらいへーきへーき」

 「はぁ~……もうなんですから少しは控えて下さい。身体壊しちゃいますよ」

 何気なく言った言葉だが、ミサトの前では決して言ってはいけない言葉
 だった。ミサトは無言で立ち上がり、冷蔵庫を開け、ビールを取り出す。

 「あ、ミサトさん! 駄目ですよ!」

 「アスカ!!」

 「な、何よ急に?」

 「シンジ君捕まえて!」

 「へ?」

 「何言ってんのよ? ミサトやっぱり酔ってんの? やーねー酔っぱらいは」

 「早くしなさい! これは命令よ!!」

 「ミ、ミサトさん?」

 「うわ~目がすわってる……悪いわねシンジ、逆らうと何されるか分かんないから
 おとなしくしてなさいね」

 『とばっちりくっちゃたまんないもんね。ここはシンジ一人に死んでもらう事に
 決ーめたっと』

 「だ~れ~が歳だって言うのよ~? ビールの味も分からないガキ
 くせに~。そういう事はビールのうまさを理解してから言いなさい~。というわけ
 で、飲んでもらうわよ~! いいわね!

 「い、いいわねって言われても、僕まだ十四歳ですよ。ビールなんてまだ早いです
 よ……」

 「私が許可します!」

 「そ、そんな事言ったって……」

 いいから飲め!!

 「んぐっ!?」

 ミサトは嫌がるシンジの口を無理やり開け、ビールを流し込む。シンジも必死で
 抵抗する。

 「んふふふふ……飲もうとしない相手に無理やりピールを飲ませる方法はいくら
 でもあるのよ。おとなしく飲み干しなさい」

 そう言ってミサトはシンジの喉を掴む。

 「んぐーーー! んぐんぐんぐ……」

 とうとうシンジはビールを飲まされてしまった。

 ※ 危険なので良い子は絶対に真似しないで下さい

 「あ~ら、結構いい飲みっぷりじゃないの。どう、美味しかったでしょ?」

 「………………」 ぐた~

 「ちょっとミサト、やりすぎよ!」

 「へーきへーき、これくらいどうって事ないわよ」

 「でも、目は渦巻きになってるし、顔なんて真っ青よ。病院連れてった方が
 いいんじゃないの?」

 「あらアスカ、今日は随分とシンちゃんのかたを持つわね。ふ~ん、そうなんだ。
 アスカってシンちゃんの事~~~」 にや~

 「な!? ち、違うわよ! ば、バカな事言わないでよ! シンジが
 目を覚まさなきゃ誰が食器片付けるのよ! その事を心配してる
 だけよ! 私は嫌よ! ミサトが責任取って片付けるんでしょうね?」

 「私がするわけないじゃないのよ……しようがないわね、ほらシンジ君、起きて」

 思いっきり身勝手な理由でミサトはシンジを起こす。目を覚ましたシンジは、無言で
 冷蔵庫の方へ歩いていき、ビールを飲み始めた。

 「……あの……もしもし、シンジ君?

 「…………」 グビグビグビ

 「……どうすんのよミサト、あれ、絶対暴走してるわよ」

 「う~ん……再起動の後、暴走か……。初号機の癖が移ったのかしら」

 「バカな事言ってないで早く止めた方がいいんじゃないの。ほんとに病院送りに
 なるわよ」

 「そ、そうね。シンジ君、そんなに飲んじゃ身体に悪いわよ。もう止めなさい」

 「飲ませたのはミサトさんです」

 そう言ってもう一本飲み始める。

 「う。そ、そりゃそうだけど……一本くらいならどうって事ないと思ったから……。
 シンジ君、それ三本目でしょ。いきなりそんなに飲んじゃ、急性アルコール中毒に
 なっちゃうわよ。早く止めなさい、ね、ね」

 「別にいいですよ。そうなったら、ミサトさんに保護者としての能力がない
 って事が皆に知れ渡るだけですから」 ヒック

 「ううう……そりゃまずい……。ごめんなさいシンジ君、私が悪かったわ。謝る
 からもう飲むのは止めて、この通りよ」

 そう言ってミサトは手を合わせる。

 「……ミサトさん、ビールの量、減らしてくれますか」

 「え? そ、それは、その……」

 プシュ。グビグビグビ…… (四本目)

 「わ、分かったわ。一日五本以上飲まないから、もうそれ以上飲まないで。ほんとに
 入院しちゃうわよ」 オロオロ

 「……分かりました。ミサトさんがそこまで言うのなら止めます。でも、約束は
 ちゃんと守って下さいよ。一日一本以上飲んじゃだめですよ」

 「え? 私は五本って……」

 「…………」 グビグビグビ……

 「分かりました! 一本にします! だからもう止めて。それ以上はほんとに
 危険なんだから」

 「約束ですよ。いいですね、ミサトさん」

 「は、はい、分かりました……」

 『とほほほほ~~~』

 「まったく、ミサトもバカな事したわね。シンジにビールなんて飲ませるから、
 こうなるのよ。ま、でも、ミサトのためにも一日一本の方がいいんじゃないの。
 諦める事ね」

 「うう……シンジ君がこんなに酒グセが悪いとは思わなかったわ……。仕方ない、
 明日から一リットルサイズ……いや、二リットルサイズ一本にするわ」

 と、シンジに聞こえないようにつぶやく。

 「……それって飲む量増えてない?」

 「気のせいよ。シンジ君には内緒よ、また飲まれちゃたまんないもの」

 「明日になったらばれるわよ」

 「飲んでないシンジ君ならきっと平気よ」

 「ところで、シンジはどうするのよ? フラフラしてるわよ。病院連れてった方が
 いいんじゃないの?」

 「でも、そうするとシンジ君にビール飲ませたのがばれちゃうし……。うん、大丈夫
 よきっと。あはははは!

 (……何か、すごく無責任な人になってるな……いいのかな……)

 「いい加減ね。ところで、あいつ、酔った勢いで私を襲わないでしょうね?」

 「いくら酔っててもシンジ君はシンジ君よ。それはないわよ。むしろ今は、使徒が
 来ない事を祈るだけね。今来られるとちょーっとまずいもんね」

 と、その時、第三新東京市全域に避難命令が発動される。

 (お約束な展開だなぁ)

 「……マジ?」

 「どうするのよミサト? シンジ連れてくの?」

 「こんな状態で連れて行けるわけないじゃないのよ」

 「じゃあどうするのよ?」

 「う、う~ん、そうね……。急に熱出して寝てるって事にしとくわ」

 「あの司令がそんな事で許すと思う? 生きてる限り乗せろとか言いかねない
 わよ」

 「確かにあの外道なら言いかねないわね……で、今のシンジ君を連れてくって事
 は……」

 「間違いなく減俸ね」

 「ううう……」

 「ミサトさん何してるんですか、使徒でしょ? 早く本部に行かないと」 ふらふら

 「シンジはやる気みたいね。どうするのミサト?」

 「……え~い! こうなったらもうヤケよ! なるようになればいいわ。
 二人とも行くわよ!」

 ミサトはヤケになり、そう叫びながらネルフ本部へ向かった……。


 <つづく>


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