新世紀エヴァンゲリオン-if-

 外伝 弐拾弐 裁縫具0・1・2

 -前 編-


 2年A組、シンジ達のクラスは家庭科(今何て言うの?)の授業のため、
 専門教室に移っていた。

 教師がまだ来ない事をいい事に、男子達は裁縫道具でふざけたりして騒いでいるし、
 女子達は友達と楽しそうにおしゃべりをしていた。

 当然、ヒカリは機嫌が悪い。

 「ちょっとあなた達、今は授業中よ!! 静かにしなさい!!」

 「せやけどなーイインチョ、いつまでたっても来んやないか」

 「そうそう、これは自習になったとみるのが自然だね、ラッキー」

 「だからって騒いでていいってわけじゃないでしょ。私、職員室に行って聞いて
 来る」

 そう言ってヒカリが教室から出ようとすると、家庭科の教師ではない教師が入って
 来た。


 「あの、先生……」

 「あー今から説明するから、席に着いて」

 「はい」

 「えー皆さん、家庭科の先生が急に体調を崩され、帰られたので
 自習とします」

 「やったー!!」

 「おおーっ!!」

 「ちょっと!! 静かにしなさい!!!」

 「あー自習と言っても遊んではいけませんよ。ちゃんと課題が出てますから」

 「課題?」

 「えー確か、カバンに付けられるくらいのマスコットを各自作るようにと言われて
 います。この部屋の材料は自由に使って構いません。自分の好きな物を作って
 下さい。ちゃんと点数を付けるみたいですから、遊んでちゃいけませんよ。
 それでは私はこれで……」

 連絡事項を告げると、教師は部屋から出ていった。

 「ん~~~自分の好きな物か……僕だったら……やっぱり戦闘機かな……。
 トウジはどうするんだ? やっぱりジャージか?」

 「アホ! ワシは……そーやな……バスケットボールにするわ。丸いもん作れば
 ええだけやから簡単そうやしな。で、センセはどないするんや?」

 「うん、僕はやっぱり初号機でも作る事にするよ」

 「そーかー。しかしセンセはこーゆーの得意やろーし、有利やなぁ」

 「別に好きで得意になったわけじゃないけどね」

 「シンジの生活環境は特殊だからな。仕方なく身に付いたってやつか。ま、何にしろ
 技術は持っていて損にはならないさ。分からない所やうまくいかない所は教えて
 くれるよな?」

 「あ、ワシもよろしゅう」

 「うん、いいよ。じゃあとりあえずできる所まで自分でやってみて」

 「よっしゃー」

 そう言ってシンジ達は作業に入る。


 一方、アスカは……


 「まったく、何で女だからってこんな事しなきゃなんないのよ。これだから日本は
 遅れてるって言われるのよ……」 ぶつぶつぶつぶつ……

 「まぁまぁアスカ、男子だってやってるんだからいいじゃない。それより、分から
 ない所があれば私が教えてあげるから。一緒に作ろ」

 「はぁ~……ヒカリはこういうの得意だもんね~……。私にとっては最も苦手と
 する分野ね。ま、しようがないか。パッパと作ってさっさと終わらせよーっと」

 そう言ってアスカ達も作り始める。


 その後、クラスの中では針を指に刺したり、ふざけて人の背中を針でつついたり
 (危険なので絶対にやらないように!) の悲鳴がこだましていた。


 「ふ~ やっとできた我ながらなかなか良く出来たわね。ね、ヒカリ、これどう?
 結構良く出来たでしょ?」

 「え? あ、そうね、初めて作ったにしては良く出来てるわね。さすがアスカね」

 「でしょー」

 「でも、アスカって随分と日本的なマスコットを作ったわね」

 「え?」

 「だって、これ赤オニでしょ。良く出来てるわ」

 「…………弐号機なんだけど…………」

 「え? …………ご、ごめんアスカ。で、でもほらっ、私って弐号機っての見た事
 無いから……その……本当にごめんなさい」

 「……しようがないわね。見た事無いんじゃ分からないか……」

 「ごめんね」

 「いいわ、気にしてないから。よーし、弐号機の事を良く知ってるシンジに見せて
 来る。もし間違ったらどうしてくれようか……」

 そう言ってシンジの所までやって来る。……いいのか、今自習中だぞ。


 「シンジ?」

 「ん、何、アスカ?」

 「あんた何作ったの……って、どうせ初号機なんでしょ」

 「うん、これ」

 「ふ~ん、相変わらずシンジってこういうのだけはうまいわね。女の子に生まれて
 来た方が良かったんじゃないの?」

 「確かに」

 「言い得て妙だな」

 「何だよもう! 二人とも!!」

 「すまんすまんシンジ、気ぃ悪ぅせんといてくれ」

 「いや~つい……でもシンジが女だったら、結構もてるんじゃないかな」

 「ケンスケ!!」

 「あ、悪い悪い」

 「じゃあ、これからはシンちゃんって呼ぼうかしらね~」

 「アスカ、いい加減にしてよ。それより、アスカは何作ったんだよ?」

 「ふふ~ん、これよ」

 「何や、赤オニか?」

 「赤オニだね。自分をモデルにしたんだなきっと。ぴったりだよ」

 「なんですってーーー!?」

 『……赤オニ……でもアスカがそんな物作るわけないし……やっぱり弐号機
 かな……』

 「えっと……弐号機だよね。良く出来てるよ」

 「ふっ、さすがはシンジ、いい目をしてるわね。このバカ共とは違うようね」

 「何やてー!?」

 「図星突かれたからって僕たちに当たるなよ」

 「二人とも止めようよ、アスカもわざわざそんな事言わなくてもいいだろ」

 「アスカ、とりあえず今授業中だから、もう少し静かにしてて」

 「まぁここはシンジの顔を立てて、おとなしゅうしといたる」

 「そうだね、今は自分の作品を仕上げるのが先だね」

 「命拾いしたわねーあんた達、ヒカリに感謝するのね」

 見かねたヒカリが仲裁に入った事で、ようやく事態は収まった。

 『ふ~、助かったよ委員長』

 『碇君も大変ね』


 アスカはとりあえずシンジ達の元から離れたが、自分の作品ができているため、
 暇なのかブラブラと他の人の作品を見て回っていた。……いいのか、自習(略)

 『ん……ファーストはやっぱり零号機か……人の事は言えないけど、代わり映え
 しないわね……。ん? もう一つ作ってるの?』

 「さっすが優等生! 二つも作るとは、そんなにいい点が欲しいのかしら
 ねぇ……。

 !!!

 ちょ、ちょっとファースト、何よこれ!?


 <つづく>


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