新世紀エヴァンゲリオン-if-

 外伝 弐拾壱 災い転じて福来る?

 - Aパート -


 突然だが、シンジ達は使徒と戦っていた。

 突然の使徒の出現に、発令所は蜂の巣をつついたような大騒ぎになっていた。

 「全く、約束もなくいきなりやってくるなんて、ロクな男じゃないわね

 (某有馬君の事ではありません)

 「あれが男だという保証はないわよ。それに、男か女かと言うより、オスとメスと
 言った方がいいんじゃないの? どう見てもカマキリよ」

 そう、この使徒は外見上、カマキリそのものであり、見た目通りカマを使って攻撃
 してきていた。

 「そんな事よりリツコ、本当に使徒の接近に気が付かなかったの?」

 「ええ、あらゆるセンサーにも反応しなかったわ。エヴァ三体の迎撃が間に合った
 のは奇跡的ね」

 「奇跡じゃないわよ。日頃の訓練のたまものよ」

 「ええ、そうね。それよりミサト、作戦部長なんだから文句ばっかり言ってないで
 ちゃんと作戦指示したらどうなの?」

 「その必要はないわ。もうかたがついたみたいだから」

 ミサトの言うように、メインモニターには、三方向からプログナイフを突きたて
 られ、コアの光が薄くなっていく使徒が映し出されていた。

 「それにしても、思ったよりあっけなかったわね。カマでも飛ばしてくる
 のかと思ったのに……」

 「イ○スじゃあるまいし、それは無いんじゃないの?」

 特に被害も無く使徒を倒せたので、ミサト達はほっとしていた。
 そして、それは戦っていたシンジ達も同じだった。

 「ふー、やっと倒した」

 「ハッ! どーって事ないヤツだったわね。ま、この私に掛かれば使徒だって
 こんなもんよ」

 「でも、とどめさしたの綾波だよ」

 「…………」

 「うっさいわね! たまたまファーストが正面にいただけじゃない
 の! ファーストばっかりひいきしてんじゃないわよバカシンジ!」

 「そ、そんなつもりじゃ……」

 「はいはい。あなた達、良くやったわ。今回の使徒は爆発しないようだし、後は
 回収班に任せて戻ってらっしゃい」

 「手伝わなくていいんですか?」

 「ええ、それはシンジ君達の仕事じゃないわ」

 どこか和んだ雰囲気の会話が続いていたその時!

 !!

 なっ!?

 光を失いかけていたコアが、まるで消え去る前の最後の輝きのように光り出し、
 カマを大きく振りかぶった!

 目標は、正面にいる零号機!

 「綾波、危ない!!」

 三人の中で一番シンクロ率が高くなっているシンジの初号機が最も早く動いて零号機
 をかばう。しかし、使徒の動きも早く、初号機の右腕を切り落とす!

 ぐあっっ!!!

 すさまじい激痛がシンジの腕を襲う。
 初号機の腕から大量の血液が流れ出す!

 「!! 碇君!!

 レイは慌ててシンジを助けようとする。しかし、使徒の前足が初号機を蹴り飛ばし、
 初号機は兵装ビルをなぎ倒しながら、数百メートル吹っ飛ばされた!

 ぐあぁぁぁっっ!!!

 初号機のモニターが破損されたのか、シンジの映像が消える。

 「碇君! 碇君!!

 零号機はすぐに初号機のもとに駆け寄る。
 その間に、アスカが使徒にとどめをさす。

 「とっとと死ねーーーっ!!!」

 今度こそ使徒は光の柱となり、完全に消滅した。


 「碇君! しっかりして! 碇君!!

 「シンジ君!? どうしたのシンジ君!? どうなってるの!?」

 「あ、は、はい。プラグ内の状態がモニターできません。先程の衝撃でセンサーの
 一部が破損したと思われます」

 「あ、繋がりました!」

 「状況は!? シンジ君は無事なの!?」

 「脳波、心拍数ともに乱れてますが、命に別状はありません。気絶しているだけの
 ようです……あ……これは……」

 「どうしたの、マヤ?」

 「このデータ……シンジ君、右腕を骨折している模様です」

 「骨折? リツコ、どういう事? いくらエヴァとシンクロしてるからって、エヴァ
 の腕を切られたらシンジ君の腕が折れるの?」

 「いいえ、すさまじい激痛は走るだろうけど、折れる事はないはずよ」

 「だったらどうして……」

 「恐らく、さっきビルに叩きつけられた時に、プラグ内のインテリアにでもぶつけた
 んだと思うわ」

 「LCLが保護してんじゃないの?」

 「それにも限度があるわ」

 「とりあえずシンジ君の収容急いで。レイ、初号機を一番ゲートに乗せて」

 「はい」

 その後、初号機を回収し、シンジの治療が行われた。


 そして、どれくらい経った頃か、シンジはネルフ内の病院で目を覚ました。
 そこには、レイ、アスカ、ミサト、リツコが心配そうに集まっていた。

 「……ここは……痛っ!! ……くぅ……」

 「シンジ君、腕が折れてるんだから無理に動かない方がいいわ。しばらく安静に
 してなさい」

 「え、腕が……? あ、ほんとだ……折れたんだ……」

 「まったくシンジはどんくさいんだから! あれくらい避けなさいよ!」

 「まぁまぁアスカ、シンジ君がレイを助けたからってやきもち妬かないの」

 「だ、だ、誰が!」

 「碇君……ごめんなさい……私の”ため”に……」

 「あんたの”せい”よ!!」

 「ごめんなさい……ごめんなさい……」

 「いいよ綾波、そんなに気にしなくても」

 「でも……碇君、腕が折れて……ごめんなさい」

 「ほんとに気にしなくていいから、そんなに謝らないで」

 「……でも……」

 「ふふ。レイ、そういう時は、謝るよりお礼を言うものよ」

 「お礼……。ありがとう……碇君……助けてくれて……ありがとう」

 「うん、良かった、綾波が無事で」 にこ

 碇君……

 わずかに赤くなり、微笑む。

 「むーーーっ!!」 (アスカ)

 と、そこに冬月とゲンドウが入ってくる。

 「父さん?」

 「碇司令?」

 『珍しいわね、碇司令がシンジ君の見舞いなんて……やっぱり一人息子が心配
 なのかしらね』

 『父さん……綾波を助けたから褒めてくれるのかな……』

 かなり複雑な心境だが、シンジは父が褒めてくれるのではないかと期待した。

 しかし、ゲンドウの言葉は非情だった。

 「シンジ、初号機を傷つけるような戦い方をするな。
 今度このような事をすれば、初号機から降りてもらう」

 「!!」×6


 <つづく>


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