新世紀エヴァンゲリオン-if-

 外伝 拾六 どんどん・ドタバタ大騒動 ~ユイと愉快な仲間たち~

 - Cパート -


 「それじゃあシンジ、今からシンジがノーマルかどうか調べるけど、文句はない
 よな」

 「そ、そりゃいいけど、どうやって調べるのさ?」

 「なーに、簡単な事さ。綾な……じゃなく、碇の協力があればすぐ分かるさ」

 「え、私の?」

 「そ、ちょっと手伝ってもらえるかな」

 「別にいいけど……どうすればいいの?」

 「簡単さ。まず両手を軽く握って、口元に揃えるんだ。そして、微笑みながら、
 シンジに向かって『お兄ちゃん』って言えばいいんだよ。それでシンジがどんな
 反応するか見ればいいだけだからね。簡単だろ?」

 ケンスケはシンジに聞こえないように、そうレイに伝えた。

 「それくらいならできるけど……」

 「じゃあ僕が合図したら今言った事を実行に移して欲しいんだ。すぐカメラ用意する
 から」

 ケンスケはそう言うと、いつも持ち歩いているカメラを取り出した。しかし、シンジ
 を撮影するはずなのに、なぜかカメラはレイの方を向いている。

 「じゃあ行くよ、よ~い  スタート!!



 にこっ

 お・に・い・ちゃん♥



 レイはケンスケに言われた通り……いや、それ以上に愛情を込めて
 シンジに微笑んだ。

 うっ くらくらくら~

 シンジは思わずめまいを起こしてしまった。シンジだけではなく、トウジや、
 撮影していたケンスケも同様だった。

 バカシンジ! あんたやっぱり相田の言うように危ないヤツ
 だったのね! 相手に何考えてんのよ!!」

 「ち、違うって。僕はそんなんじゃないよ」

 「じゃあなんでめまい起こしてんのよ!? 説明しなさいよっ!」

 「だ……だって、レイがあんまり可愛かったから……

 「え、お兄ちゃん……」 ぽっ

 「ええ~いっ! そんなバカな事を言ってんのはこの口か!
 この口か! この口か!! だいたい、いつからファーストの事
 呼び捨てにするようになったのよ!?」

 「いひゃい いひゃい いひゃい、やめへよアフファ、いひゃいよ」

 「あ、止めてアスカ! お兄ちゃんをいじめないで。それに、お兄ちゃんが妹の
 事呼び捨てにするのは普通なんでしょ? その方が私も嬉しいし……」 ぽっ

 「うっさいわね! だいたい、あんたもいちいち赤くなってんじゃ
 ないわよ!」

 「だって……」

 「だってじゃない!」


 「いや~しかし、ケンスケの言うような奴がおるんも分かる気がするわ。今のは
 めまいしたもんな~……いててて! な、何するんやイインチョ!?

 すーずーはーらぁー! なにバカな事言ってんのよ!!
 だいいち、鈴原は妹いるじゃないのよ!!」

 「せ、せやけどイインチョ、ワシの妹はまだ小学生やし……いてててて……


 『こ、これほどまでに強力だったとは……しかし、これはいい物が手に入った。
 プリントアウトすれば一枚数百円で……映像データなら数千円で……』

 「ケンスケ、そのディスク回収するからな」

 「なっ!? み、見逃せシンジ! な、な。そうだシンジ、新しいSDAT
 欲しがってたろ? あれプレゼントしてやるから今回は見逃してくれよ」

 「ダメ。やっぱり売るつもりだったんだ」

 「しかもSDAT買うてやるって……アレって結構高いもんなんやろ? ケンスケ、
 いくら儲けるつもりやったんや?」

 「とにかく、どんな条件出したってダメだからね」

 「……なんだよシンジ、そんなに妹の笑顔を一人占めしたいのか? やっぱり
 危ないヤツじゃないか」

 「な、何言ってんだよ!?」

 「お兄ちゃん……」 ぽっ


 ムッカ~~~


 「くぅぉら ぶぅわぁかシンジィ! あんた私の写真が売られてる
 時は何も言わなかったのに、なんでファーストの写真は嫌がる
 のよ!?」

 「で、でも、レイは妹だから……」

 「じゃあ何? 妹の写真は売られるのは嫌でも、同棲相手の写真が売られるのは
 平気なわけ? それって差別じゃないのよ」

 「ど、同棲!?」

 「何よ? 違うってーの!?」

 「いや……その……そういう言い方もできなくはないけど……」

 「そうとしか言わないのよ!! 分かった!? バカシンジ!!」

 「う、うん……」

 「分かりゃいいのよ、分かりゃ」

 「…………」 (レイ)

 「なぁケンスケ、惣流のやつどないしたんや? 前にワシらが『シンジと同棲しと
 る』言うたら、『ただの同居』や言うて怒っとったのに、自分から同棲と言い切る
 やなんて……」

 「う~ん……多分、今の自分の立場に危機感を感じてんじゃないのかな?」

 「危機感?」

 「うん。どうも僕たちの知らないうちに二人のバランスに変化があったみたいだね。
 だから惣流のやつ焦ってんだよ、多分」

 「そう言う事か……ま、おもろなりそうやな」

 「だね」

 「そこ二人! 何か言ったかしら!?」

 「いやー別に何も。な、トウジ」

 「ああ、何も言うとらへん」

 「……フン。シンジ、私の写真も売らないようにあのバカどもに良く言っときな
 さい」

 「う、うん。あのさケンスケ、なんかアスカの機嫌悪いみたいだし、もう売るのは
 止めた方がいいよ。殺されちゃうよ」

 「ああ、その方が身のためのようだね。分かったよ、もう売らないよ」

 『惣流の目の届く所ではもう売らない方がいいな……』

 「シンジ、何よその言い方は? 全然誠意がこもってないじゃないのよ。ファースト
 と差別する気? もっと私に対して独占欲持ちなさいよ」

 『ほー、アスカもやっと素直になったのかな?』 (ミサト)

 「え、えーと……」

 「……あなたは何が言いたいの? どうしてお兄ちゃんを困らせるの?」

 「別に困らせてなんかないわよ。それよりファースト、あんた自分の立場分かってん
 でしょうね?」

 「え、私の立場?」

 「そうよ、ファーストが今ここにいるのは、あくまでシンジの妹としてなのよ。
 シンジがファーストの写真を売るなって言うのは、単に兄としての行動なのよ。
 特別な感情があるなんて勘違いするんじゃないわよ。単に兄として、妹の写真が
 売られるのが嫌、というだけなんだから、そこんとこ間違えるんじゃないわよ。
 いいわね!?

 「ア、アスカ……そんな言い方しなくても……

 「シンジは黙ってて! 今ファーストと大事な話してるんだから!」

 アスカのあまりの迫力に、シンジはそれ以上何も言えなくなってしまった。シンジ
 だけではなく、他の者も何も口出しできるような状況ではなかった。

 『アスカ、私は何もレイとケンカしろって言ったわけじゃないのよ……レイだって
 やっと手にした家族なんだし……』 (ミサト)

 全員がハラハラして見守る中、レイとアスカは真正面から睨み合っていた。


 「……ええ、分かってるわ。私、お兄ちゃんの妹として今ここにいるの」

 「あら、随分と物分かりがいいのね。なら、妹以上の行動するんじゃないわよ。
 ただの妹なんだから

 「でも、お母さんが言ってくれた。私とお兄ちゃんは血の繋がりはないから、
 結婚するのに何の問題も無いって、そう言ってくれた」 ぽっ

 「んなっ!?」 (アスカ)

 「レ、レイ」 (シンジ)

 「おおおおお~~~!!」 (その他)

 「な、な、な。ちょっとミサト! この乱れた関係を何とか言って
 やんなさいよ!!」

 「う~ん……確かに問題発言ね。でもねアスカ、シンジ君が私やアスカと一緒に
 一緒に暮らしてた時は、レイが一人で寂しい思いしてたのよ。今アスカが寂しい
 からってレイばかり責めるわけにもいかないのよ……」

 「だ、誰が寂しがってるってのよ!?」

 「な~にアスカ、まだそんな事言ってるの? ちょっとこっち来なさい」

 「ちょっとミサト! 耳引っ張んないでよ、痛いじゃないのよ!」

 ミサトはアスカの抗議を無視し、耳を引っ張り、耳元で話し掛ける。アスカだけに
 聞こえるように……。

 「アスカ、さっきは『もっと自分を独占しろ』って言ってたじゃないの。どうして
 また意地を張るの?」

 「あ、あれは……言葉のあやで……」

 「いいアスカ? 今そんな事言ってる場合じゃないでしょ。さっきのレイの態度見た
 でしょ? レイは本気よ」

 「…………」

 「いいのアスカ? このままじゃシンジ君取られちゃうわよ。それでいいの?」

 「……良くない。でも、どうすればいいのか分かんないのよ……」

 「……しょうがないわね。じゃあ、そんなアスカにピッタリの、魔法の呪文
 教えてあげるわ」

 「魔法の呪文?」

 「そ」


 ミサトの言う『魔法の呪文』とは何なのか!?

 完全に対立した二人に、ユイさんはどういう行動に出るのか!?

 そして、相変わらず板挟み状態のシンジの運命は!?


 碇家のドタバタ大騒動は……


 <つづく>


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