新世紀エヴァンゲリオン-if-

 外伝 拾六 どんどん・ドタバタ大騒動 ~ユイと愉快な仲間たち~

 - Bパート -


 しばらくして、ミサト達はシンジの住む家の前にやって来た。


 「確かここがシンジ君の新しい家のはずよ」


 ピンポ~ン♪


 「は~~~い」×2


 「どなたですか?」

 そう言って、シンジとレイが仲良く顔を出す。

 「あ、アスカ、ミサトさん、トウジ、ケンスケ、委員長も。帰ってきたんだ」

 「シンジ、元気そうやな、安心したわ」

 「両親も一緒に暮らしてるんだって? 良かったじゃないか」

 「おめでとう、碇君」

 「ありがとう。みんなも元気そうで良かった。ほんとに良かったよ」

 「シンジ君もご両親と暮らせて嬉しそうね。ところで、お父さんとお母さんいる
 かしら? 挨拶に来たんだけど……」

 「あ、父さんと母さんなら今買い物に行ってます。でも、もう帰ってくる頃だと思い
 ますから、上がって待っててください」

 「なんやシンジ? 両親が留守なんをええ事に綾波連れ込んどったんかい
 な、結構やるやないか

 「全くだね。僕達と連絡取れなかったから仕方ないとはいえ、僕達より先に綾波を
 招待するなんて……。所詮、男の友情なんてそんなものなのか……」

 「そうよ碇君。綾波さんを誘ってあげるのはいい事なんだけど、一緒に暮らしてた
 アスカですら家に呼んでないのに、それは酷いんじゃないの?アスカがかわいそう
 よ」

 「い、いや、あの……その……これには……」

 「それとも何か? 惣流から綾波に乗り換えたんか?

 「そうか。惣流と破局を迎えたから家を出て、綾波を呼んだ訳か」

 「だ、だからそうじゃなくて……」

 「あんた達なにバカな事言ってんのよ!? だいたい、どこに綾波
 いるって言うのよ!?」

 「はぁ? 何言うとんのや、惣流?」

 「どうしたのアスカ? アスカらしくないわよ」

 「惣流、いくら綾波と仲が悪いからって、目の前にいるのに無視する事ないだろ。
 陰険だぞ」

 「ふん! あんた達の目の前にいるのは、綾波レイじゃなく、碇レイ
 よ!!」

 「え?」

 「碇……」

 「……レイ……」

 「…………」

 んなぁーにぃぃぃ!? シ、シンジ!! そ、そりゃあどういう
 こっちゃ!?」

 「ま、まさかもう籍入れてたのか……同棲じゃなく……結婚……。
 まだ十四歳なのに……」

 「ふ、不潔だわ!! 碇君、私達まだ中学生なのよ! そ、それ
 なのに、それなのに……」

 「だ、だから違うんだよ。ね、ね、委員長、お願いだから話を聞いてよ……」

 「それやったらシンジ、何がどう違うのか、納得のいく説明をしてもらおや
 ないか」

 「そーそー」

 三人に問い詰められたシンジがどう言い訳するのかを、ミサトは楽しそうに見て
 いる。その横で、アスカはやたらと不機嫌になっていた。

 と、その時……。

 「ふふふ。それは私が説明しましょう」

 不意にトウジ達の後ろから声がした。

 「あ、母さん、お帰り」

 「お帰りなさい、お母さん」

 「はい、ただいま。お友達?」

 「うん。この街に帰って来たからって、遊びに来てくれたんだ」

 「お、おいシンジ……まさか、このお姉さんが……」

 「う、嘘だよな、シンジ……」

 「あ、申し遅れました。私がシンジとレイちゃんの母親の、碇ユイ
 です。よろしくお願いね (はぁと)

 「どぅえぇぇえええ!?」

 「ほ、ほんまにぃぃい!?」

 「い、碇君。お父さん、再婚されたの!?」

 「いや、そうじゃなくて、ほんとに僕の母さんなんだ」

 「そ、そんな……いくらなんでも若すぎるんじゃ……」

 「とても十四歳の子持ちとは思えん……」

 「全くだね。どう見てもお姉さんって感じだ……」

 「あら~。何て良い子達なのかしら。ゆっくりしてってね。うんとおいしい夕食を
 作るから」

 「は、はぁ……お構いなく」

 「あ、あの~ユイさん……」

 「あら、あなたは確か……」

 「はぃ、葛城ミサトと言います。ご挨拶が遅れてしまって申し訳ありませんでした」

 「いいんですよ、そんな事。それより、随分とシンジがお世話になったようで。本当
 にありがとうございます」

 「いえ、こちらこそシンジ君には迷惑ばかりかけて……。特に使徒との戦いに巻き
 込んでしまって……何とお詫びをしていいか……」

 「葛城さん、その事は仕方のない事です。誰かがやらねば人類全てが滅んでいたの
 ですから。シンジもきっと分かってくれています。だから、そんなに自分を責め
 ないでください」

 「はい……ありがとう……ございます」

 『ふ~ん……。ミサトってまともな事も言えるんだ……。普段のガサツさからは
 想像できないわね。二重人格だったりして……。それにしても、シンジの母さん
 ほんっとに若いわね……それに綺麗だし……優しそうだし……。いいな……シンジ
 のやつ……』

 『良かった……ユイさんが優しい人で……。碇司令を制御できる唯一の人物って
 副司令から聞いてたから恐い人だと思ってたけど、取り越し苦労だったみたいね。
 ……それにしても……嫌んなるくらい若いわね。ほんとに三十八歳なのかしら?
 エヴァに取り込まれると若いままなのかしら……。リツコに頼んで私も取り込んで
 もらおうかしら……』

 ミサトは半分本気でそんな事を考えていたが、リツコは完全に本気でその事を研究
 していた。

 「と、ところで……あの……碇司令……。そ、その……ぺ、ペアルックですか……
 お、お似合いですよ……」

 ミサトは笑顔を引きつらせながらも、ゲンドウの服装を誉めた。

 「…………」

 「あなた! せっかく誉めて頂いているのに、その態度は何ですか!
 それにいつも言ってるでしょ。『組織のトップに立つのなら、力で人を押さえる
 のではなく、信頼される人間にならねばならない』って、忘れたんですか」

 「……あぁ、分かっている」

 「まったく、しょうがないんだから……。それに葛城さんの言うように、似合って
 るんですから、もっと自信を持ってください!

 「ああ」

 「ごめんなさいね葛城さん。うちの人、照れ屋だから」

 「は、はぁ……」

 『あの碇司令に対して一方的に……。さすがだわ……

 「それじゃあ皆さん、中に入ってください。すぐにお茶を入れますから。その時に
 詳しく説明させて頂きます」

 「あ、どうぞお構いなく」

 「母さん、荷物持つよ」 「あ、私も」

 「ありがとう、シンジ、レイちゃん。でもせっかくお友達が来てくれてるんだから、
 ゆっくりお話してなさい」

 「う、うん、じゃあそうするよ」 「はい、分かりました」

 「ねぇあなた、二人ともほんとに良い子で、私たち幸せ者ね」

 「ああ」

 「じゃあ、みんな入って」

 「お邪魔します」

 シンジとレイに案内され、ミサト達はリビングルームまでやって来る。

 「……でシンジ、綾な……じゃなく……えーと、碇って呼べばいいのかな?」

 「今の私は碇レイ。そう呼んでくれる方が嬉しい」

 「じゃあそう呼ぶよ。シンジ、碇が妹になったって一体どういう事なんだ?」

 「だ、だからその事は母さんが話すって言ってたろ。その時に聞いてよ」

 「ふ~ん、母さんね。ところでシンジ、年上のお姉さんと同い年の女の子と暮らし
 てた次は、血の繋がらない妹か? なんかますますヤバい設定になってない
 か?」

 「な、何だよそれ?」

 「だってさ。シンジは知らないかもしれないけど、世の中には妹を本気で欲しがって
 る奴って結構多いんだぞ。そして、その妹といい仲になりたいって奴も……。
 セカンドインパクトの二十年前にそういうビデオが流行ったって言うし……」

 「ちょっとぶぁかシンジ!! あんたそんな危ないヤツだった
 わけ~!?」

 「そんな訳ないだろ! ケンスケが無茶苦茶言ってるだけだよ!」

 「ほー、すると自分はあくまでノーマルだと言い張るんだな」

 「言い張るも何も、僕はノーマルだよ。ケンスケこそそんな事知ってるんだから、
 危ないヤツなんじゃないの?」

 「僕は知識として知ってるだけだよ。……それじゃあシンジ、今からシンジが
 ノーマルかどうか調べるけど、文句はないよな」

 「そ、そりゃいいけど、どうやって調べるのさ?

 「なーに、簡単な事さ。綾な……じゃなく、碇の協力があればすぐ
 分かるさ

 「え、私の?」

 「そ。ちょっと手伝ってもらえるかな」

 「別にいいけど……どうすればいいの?」

 「おっと。時間だな、残念ながら今日は教えられないよ。続きは
 来週のこの時間にね」


 という事で……


 <つづく>


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