新世紀エヴァンゲリオン-if- 他所投稿作品集 弐

 レイ、告白大作戦!

 - 後 編 -


 「ちょっとレイ! 待ちな  プス  うっ……」 ぱた

 「 どうしたの急に? こんな所で寝ると風邪ひくわよ」

 「あらあら。アスカったら余程疲れてたのね、こんな所で寝るなんて。しょうがない
 わね。医務室まで運んであげるわ」

 「赤木博士? どうしてここに?」

 「たまたま通り掛かっただけよ、気にしなくていいわ。それよりレイ、シンジ君は今
 更衣室にいるわ。(出られないようにドアをロックして閉じ込めてるから) 行って
 想いを遂げなさい。頑張るのよレイ、私が全力で応援してあげるから」

 『これであのロリコン親父は私一人のもの……』

 「はい、ありがとうございます」

 「ちょっとリツコ、あんたアスカに何したのよ!?」

 「葛城三佐まで?」

 「私も通り掛かっただけよ、気にしなくていいわ。で、リツコ、何したのよ?」

 「ちょっと眠ってもらっただけよ。レイの邪魔しそうだったでしょ。だからこの吹き
 矢でプスッとね。大丈夫よ、何の後遺症も残らないし二時間もすれば目を覚ますわ」

 「……なるほど……リツコの狩りの道具って訳ね」

 「あら何の事かしら? さ、レイ、早くシンジ君の所へ」

 「はい」

 「ちょっとレイ待ちなさい。リツコ、アスカの気持ちも分からないうちにどちらか
 一人に肩入れするのは関心しないわね」

 『まぁ、気持ちは分からないでもないけどね。あんなの(ゲンドウ)のどこがいいの
 か理解できないけど……』

 「アスカの気持ち? アスカは別にシンジ君の事、何とも思ってないんでしょ」

 「だったら別にレイに突っかかったりしないはずよ。ここはまずアスカが起きるのを
 待って、アスカの気持ちを聞くべきよ。シンジ君の事を何とも思ってないのなら私も
 レイの事を応援してあげるけど、そうじゃない場合はもっとフェアにいかなきゃね」

 「だったら目を覚ますまで待つ必要は無いわ。この自白剤を投与すればいいんだ
 から」

 「あんた何でそんなもん持ち歩いてんのよ! だいたい、アスカは
 寝てるのよ。寝てる相手にどうやって話させるのよ!」

 「ふっふっふっ……ミサト、分かってないわね。この自白剤はさっきの睡眠剤と
 セットで開発したからその点は問題無いわ。むしろ寝てる方が心のガードが薄くて
 本音が聞き取りやすいのよ。他人の本音を聞くのって、とっても楽しいのよね。
 うふふ、とっても楽しみ……」

 「…………」 『この女は……』

 「さてと。アスカ、私の声が聞こえるわね」

 《……はい……》

 「へぇ、ほんとにちゃんと返事してる」

 「当たり前じゃないの。私が作ったんだから

 「アスカ、シンジ君の事、好き?」

 《…………》

 「何よ、答えないじゃないの。やっぱり失敗?」

 「やっぱりってどういう事よ? でもおかしいわね。こちらの問いかけには答えてる
 のに、質問には答えないなんて……。仕方ない、少し危険だけどもう一本投与して
 みましょう」

 「少し危険って?」

 「ちょっと廃人になるかも知れないだけよ」

 十分危険よ!! 何考えてんのよ!!

 「わ、分かったわよ。でもどうして答えないのかしら……。そうだ、質問変えて
 みましょう。アスカ、ミサトの事どう思ってる?」

 《……がさつ、味覚崩壊者、三十路前、加持さんをたぶらかしてる、あの胸は絶対
 に垂れる……》


 等々、無限に喋りだす。

 「確かに本音を喋ってるわね。やっぱり薬は効いてるようね。……それとミサト、
 ただの寝言なんだから、そのしまいなさい」

 「分かったわよ。じゃあアスカ、リツコの事どう思ってる?」

 《……三十路過ぎてまだ独身の売れ残り、マッドサイエンティスト、頭染めてる変
 な奴、ヒステリー……》


 等々、無限に喋りだす。

 「確かに本音を喋ってるわね。リツコの薬もたまには成功するようね。……それと
 リツコ、ただの寝言なんだからその怪しい注射器しまいなさい」

 「くっ、分かったわよ。でも薬は効いてるはずなのにどうして喋らないのかしら?」

 「う~ん……謎ね」

 「あなたは碇君の事、どう思ってるの?」 (レイ)

 《……軟弱、気弱、内罰的、情けない、ファーストばかり気に掛ける……》

 「あ、答えてる」

 「しかし……相変わらず容赦ない答えね」

 《……でも……優しい……》

 「…………」 (レイ)
 「…………」 (ミサト)

 「……今のが本音のようね。優しい……か。最後に持ってくるという事は、マイ
 ナスイメージを全て取り払う、プラスイメージなのね」

 「どういう事、リツコ?」

 「つまりね……そうね、例えて言うなら……
 『ミサトはネルフの重要な部署を任されているが、大酒飲みだ』というのと、
 『ミサトは大酒飲みだが、ネルフの重要な部署を任されている』
 というのでは使ってる言葉は殆ど同じなのにイメージが随分と変わるでしょ。
 だから、文章の最後に持ってくる言葉が一番大事って事よ。アスカにとってシンジ君
 は、色々と情けない所があるけど優しい人間として評価してるって事よ」

 「なるほど……。例えは何か腹立つけどリツコの言う通りのようね」

 「あなたは碇君の事、好きなの?」 (またレイ)

 《…………》

 「あ、また黙っちゃった」

 「私の薬に抵抗するとはいい根性ね。やっぱりもう一本投与しようかしら」

 「だからそれは止めろって言ってるでしょ。だいたい、ここまで頑固に喋らないって
 事は、逆に考えればシンジ君の事を好きな気持ちを知られたくないって強く思ってる
 って事じゃないの?」

 「そうね、そう取れない事もないわね」

 「あなたは碇君の事、嫌い?」 (やっぱりレイ)

 《……嫌いじゃないわ……》

 「ほらやっぱり。ま、アスカ本人が自分の気持ちを認めたくないって思ってるのかも
 知れないけどね」

 「…………」

 「あらレイ、どこに行くの?」

 「碇君の所」

 「告白に行くの?」

 「はい」

 「レイ、ちょっと待ちなさい。今アスカは眠ってるわ。それに薬の力を使って心の中
 を聞いてしまったでしょ。今シンジ君の所に行くのはフェアじゃないわ。レイももし
 逆の立場だったら嫌でしょ。私の言う事、分かってくれるわよね」

 「……はい」

 「うん、レイはいい娘ね。明日学校で、アスカのいる所で告白しなさい。それなら何
 の問題も無いわ」

 「はい……でも……」

 「でも?」

 「弐号機パイロットが……私より早く碇君に……」

 「大丈夫よレイ、私に任せなさい。ミサト、アスカは多分夕食頃に目を覚ますわ。
 だから、アスカの料理にこの薬を入れておいて。そうすれば朝まで目を覚まさない
 からレイより先に告白する事は無いわ。どこの家庭だって朝は慌ただしいから、学校
 に行くまで告白する暇なんてきっと無いわよ」

 「葛城三佐、よろしくお願いします」

 「お願いしますったって……そこまでしなくても大丈夫よ。さっきも言ったように
 アスカは自分の気持ちを認めてない……気付いてない状態よ。仮に自覚したって、
 すぐに告白できるような性格してないわよ。アスカって意地っ張りだから。だから、
 今日明日中にどうこうって事は無いわ。安心しなさい」

 『もっとも、レイの行動次第ではアスカも告白するかも知れないけどね』

 「……はい、分かりました。では、明日学校で告白します」

 「そうしなさい。頑張ってね、レイ」

 「応援してるわよ」

 「ありがとうございます。では失礼します」

 レイは一礼してその場を去っていった。

 「しっかし、レイがシンジ君に告白とは……意外ね」

 「そうね、ちょっと前のレイからは想像もつかないわね」

 「学校で告白か……恋愛の王道ね。しかし学校じゃさすがに覗きに行く訳にはいか
 ないわね……仕事もあるし……。よし、保安部の連中にあらゆる角度から撮影
 するように命令しとこっと」

 「あら、いい考えね。技術部としても全面的に協力するわよ」

 「ほんとは生で見たかったんだけどね」

 「ミサトが邪魔しなきゃ今頃生で見れてたわよ」

 「でも、アスカの気持ちを考えるとね……。後が怖いし……。さてと、アスカを
 車まで運ぶわよ。リツコ、当然手伝うわよね。リツコが眠らせたんだから」

 「分かってるわよ。じゃあミサト、そっちお願い。私こっち持つから」

 「分かったわ。しかし、これってどう見ても、薬を使ってアスカを拉致監禁しようと
 してるようにしか見えないわね」

 「大袈裟ね」

 「リツコは慣れてるみたいだけど、私はどうもね……」

 「……人を犯罪者みたいに言わないでくれる」

 「違うの?」

 「違うわよ! そんな事よりミサト、レイに告白されたらシンジ君、どういう
 反応するかしらね?」

 「話を逸らしたわね……ま、いいわ。私はそれより、その場にいるであろうアスカ
 の反応の方が楽しみだわ。レイに対抗して告白ってパターンもあり得るもの」

 「シンジ君も大変ね。どっちを選ぶのかしらね?」

 「う~ん、難しいわね。シンジ君って優柔不断だから、どっちも選べないんじゃない
 のかしらね」

 「そうね……でも、心の奥じゃどっちかを選んでるんじゃないの?(にやり)」

 「え? ……リツコ、あんたまさか……」

 「んふふふふふ……薬は幾らでもあるのよ。シンジ君の本心聞き出してくるわ」

 「悪趣味ね」

 「あら、ミサトは知りたくないの? ま、無理にとは言わないわ。私一人で行って
 くるから」  『チャーンス』

 「意識を無くしたシンジ君にリツコが悪戯しないように見張らないといけないから
 私も行くわ。その際、シンジ君が寝言で何かを喋り、偶然私がそれを聞いたとして
 も、それはそれで仕方のない事よね」

 「ちっ……」  『鋭いわね、さすがミサト』

 「……何よリツコ、今の舌打ち……」

 「さてと、善は急げよ。早速行きましょう」

 「まったくこの女は……。あ、こら待ちなさい! いいリツコ、聞き出すだけよ。
 分かってんでしょうね、悪戯しちゃ駄目よ! いいわね! ちょっと聞いてるの!」

 「んふふふふ……楽しみ」


 こうして二人の女性は、シンジが閉じ込められている更衣室に向かった。


 危うしシンジ! 本心を聞かれてしまうのか! 悪戯されてしまうの
 か!?


 事態は風雲急を告げようとしていますが、残念ながら活動限界が来てしまいまし
 た。それではこの辺で!


 新世紀エヴァンゲリオン-if- 他所投稿作品集・弐

 レイ、告白大作戦! <完>


 ・ ・ ・


 -if-原稿担当、加藤喜一(仮名)氏による、後書き


 どうも皆さんお久しぶりです、作者の加藤です。今回、昔の原稿の修正チェックと
 後書きを書けとゆさくから脅し……あ、いや、依頼があったので何か書いてみよう
 と思います。

 しかし……机に座って愕然。筆記用具を持つのなんて何カ月……下手したら年
 単位で文字を書いてない……大丈夫なのか自分? 日本語忘れてないか?
 しかし、心配は杞憂だった。さすが自分、ひらがなは覚えている。相変わらず後で
 読み返しても読めない字だが……まぁいいだろう。そこはゆさくが何とか、この
 ひらがなしか使ってない、下手するとひらがなですら無い謎の暗号文を読みやすく
 漢字がきちんと入った文章に翻訳する事だろう。なかなか大したものである。
 時々微妙に表現のニュアンスが変わっている事はあるが、余程でない限り指摘もしな
 いし、頑張ってもらおう。

 さて本題、後書きと内容チェックのためにこの話を読み返してみると……

 ああっ! 恥ずかしい!

 某マンガ家、炎○燃の気持ちが何となく分かった気がする。ああ、穴があったら入り
 たい。墓穴でもいいから入りたい……。

 で、内容。シンジのセリフが一言も無い、というか出ていない。少しくらい喋らせて
 も良かったかな? とも思うけど、女性達がメインの話だからいいかな。シンジが
 出ないのは良くある事だし。
 あと、この話がこの後どうなったかですが、これは皆さんの頭の中で好きに発展させ
 て下さい。

 話変わって、リニューアルされるエヴァのDVD、どうなるんでしょうね。完全に記憶
 している内容をもう一度やるより、設定は同じで新作を期待したいです。幾らお約束
 の展開と言われても、やはり王道の展開はそれでありだと思います。シンジがしっか
 りとレイやアスカを守り、きっちりと娯楽作品に仕上げてもらいたいです。
 期待してますよ! ガイナの旦那!

 と、こんなもんでいいでしょうか? 久しぶりにシャーペン持ったので手がつって
 しまって……。ああ、駄目人間爆走中。いいのか自分?
 明日はどっちだ?


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