新世紀エヴァンゲリオン-if-

 第十六部 Bパート


 「う。苦い……」

 「え? 苦い?」

 「まさか?」

 「うん、とっても苦い。二人とも、ほんとにこれ美味しかったの?」

 「ちょっと貸してみて」 ごく

 「甘いじゃないの」  『ふっ。間接キスね』

 「あ、アスカずるい。私も」 ごく

 「うん、ちゃんと甘いよ、碇くん」

 「え? おかしいな?」

 「まだ残ってるからもう一度飲んでみて」

 「うん」 ごくん

 「やっぱり苦いや……。僕の舌おかしいのかな?」

 「そんな事よりシンちゃん。いつから間接キス 平気になったの?」

 「え……あっ!!」 真っ赤~っ

 「どうしたの碇くん?」 きょとん

 「まあ、何度かキスしてんだし、今さら間接キスの一つや二つ、どうって事無い
 わよね~。でも、どういう事かしら? シンちゃんの舌がおかしいって事も考え
 られないし……」

 と、その時。シンジが苦しみだす。

 うっ!! う……ぐ……ぐ……」

 「ど、どうしたの碇くん!? すごい汗!」

 「ちょ、ちょっとシンジ! 一体どうしたのよ!?」

 「シンジ君!? ど、とういう事? 私達は何ともないのに……」

 「ミサトさん! 碇くんが……碇くんが……。大丈夫だって言ったじゃないです
 か……。なのにどうしてこんな事に……」

 「そうよミサト! どうしてくれるのよ!? 私、シンジに薦めちゃっ
 たじゃないのよ!!」

 「そ、そんな事言われても……。まさか男にとっては有害なの? だからシンジ君
 一人が苦いと感じたの?」

 「ぐ……あ……あ……頭が……」

 「碇くんしっかりして! 大丈夫!? 頭がどうしたの? 痛いの?
 しっかりして!」

 「頭が……かゆい!

 シンジがそう言うと、物凄い勢いで髪の毛が伸び始める。

 「な!?」

 「何よこれー!?」

 「い、碇くん!?

 「な、何だこれ!? 何で髪が!?」

 「ひょっとして、男が飲むとホルモンバランスが崩れるとか? まさか大人になる
 の? でも身体は変化無いわね。髪が伸びる程度で済めばいいんだけど……」

 「ぐ……身体が……痛い……」 ゴキ ゴキ

 「治まんないじゃないのよミサト! どうするのよ!?」

 「と、とにかくネルフに行かなくちゃ」

 ぐあぁぁぁーーー!!

 「い、碇くん……そ……それ……」

 「え? …… !! ……ま、まさか……。む、胸が……。
 な、何で???」

 「どういう事よミサト!!!」

 「ど、どういう事って言われても……」

 「ぐ……ま、また身体が……い、痛い……」 ゴキ ゴキ ゴキ

 「ま、まさか……この流れでいくと……次は……」

 「そんな。碇くんが……碇くんが……」

 「ぐ……っ。 はぁ……はぁ……やっと……治まった……」

 「シ、シンジ……あんた……」

 「え?」

 「シンジ君、急いでお風呂行って身体見てきなさい」

 「は、はい」 ドタドタドタ……

 そして……


 どぅわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!


 「やっぱり……。悪い予感って当たるもんね……」

 シンジは真っ青な顔で風呂から出てくる。

 「碇くん、どうしたの!? 碇くん!?」

 「シンジ、まさかとは思うけど……ひょっとして……女になったとか言わない
 わよ……ね……?」

 「…………女に…………なって…………る」

 「あンの腐れ外道がぁ!! ミサト! リツコんとこ行くわよ!!」

 「ええ、もちろんよ。それとレイ、気持ちは分かるけど、その包丁は置いて来な
 さい」

 「でも……」

 「レイ、あんなのと引き替えに自分の人生捨てるのは損よ。死なない程度に痛め
 付ければいいのよ」

 「……分かった……そうする……」

 と、その時、ミサトの携帯に電話が入る。

 「誰よ、この忙しい時に……。はい、葛城です」

 「あ、ミサト。あの薬、絶対シンジ君に飲ませたら駄目よ」

 「もう遅いわよ! 知ってたんなら最初からそう言いなさいよ!!」

 「私だって知らなかったのよ。たった今分かった事なのよ」

 「どうやって?」

 「…………司令と副司令が飲んだのよ……」

 「………………

 (真っ白)

 ……………… い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!

 「叫びたいのはこっちよ。とにかく、シンジ君を急いで連れてきて」

 「もちろんそのつもりよ。それとリツコ、一言忠告しておくわ。防弾チョッキの
 二~三枚着といた方がいいわよ。レイとアスカに何されるか分からないわよ」

 「お、おどかさないでよ」

 「脅しじゃないわよ。レイなんて包丁持って行こうとしてたんだから」

 「……ミサト、今回はほんとに私も知らなかったのよ。決して悪気があった
 わけじゃないのよ。まさか男が飲むと女になるなんて……。実際、ミサトだって
 元気になったでしょ。その辺をレイに説明しといて。お願い、ミサト」


 「ま、一応やってみるけど、期待はしないでよね。それより、ちゃんと元に戻し
 なさいよ。いいわね」

 「最大限努力するわ。じゃあ、シンジ君連れて来てね」 プツ

 「ふぅ……さて、じゃあネルフに行くわよ

 「はい」×3



 そしてリツコの研究室。


 「リツコーーー!」×2

 「赤木博士!」

 「リツコさん!」

 シンジ達が部屋に飛び込むと……そこは先客がいた。

 ユイーーーーーーっ!!」 だきっ

 うわっ!? な な な!? と、父さん!?

 「ユイーーー!! ユイーーー!!」

 「碇! 落ち着け! それはシンジ君のようだ。どうやら我々と同じく、女に
 なってしまったようだ」

 「何? お前、シンジなのか?」

 「と、父さん!?」 クラクラクラ

 「碇……司令……」 くらっ

 「こ、こらレイ、なに先に気絶してんのよ! 私が気絶するから
 支えなさいよ!」

 「リ、リ、リツコ!! さっさと元に戻しなさい! ああ~~~鳥肌
 が……」

 「私だってこんなの見たくないわよ」

 二人とも決してゲンドウの方を見ようとはしない。

 「やれやれ、えらい言われようだな。我々は被害者なのだよ」

 「赤木君。この前の大人になる薬、シンジに投与したまえ。今すぐにだ」

 「はぁ?」

 ゴツン!!

 「正気に戻ったか、碇?」

 「は。私は一体何を……。赤木君、治るのだろうな?」

 「は、はい。全力で元に戻る方法を研究中です」

 そう言って、隣の部屋で様々な分析を続ける下っ端ーズを指差す。


 「さすがは赤木博士だ」

 「やはりこうでなくてはな」

 「やっと目が覚めてくれたのか。この日をどんなに待った事か」

 「久々に血が燃えるな」

 「我々の赤木博士に戻ってきたな」

 「マッドの血が騒ぐぜ!」

 「ああ~もうどこまでも赤木博士について行きます!!

 「我々ももっと精進しなくては!」


 「…………役に立つのかね…………?」

 「…………多分…………」


 <つづく>


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