新世紀エヴァンゲリオン-if-

 第十四部 Eパート (最終回)


 「私……裸を見せるのは碇くんだけだって決めてるんです」」

 「んなっ!?」 (アスカ)

 「あら~~~」 (ミサト)

 「あ、綾波!?」 (シンジ)

 「それなのに……他の人に……私、碇くんじゃなきゃ嫌です

 「こ、これはまた強烈ね。やるわねシンジ君、いつの間に……」

 「ち、違いますよリツコさん、何か勘違いしてます」

 「そうよ、レイはいつもこうなのよ。特にシンジとの間に何かあったってわけじゃ
 ないわよ。そうよねシンジ!!

 「う、うん」

 「何だ、そうなの……つまんないわね……。でも、そういう事なら大丈夫よレイ、
 こういう時のスタッフはみんな女性だし、全員、医者か看護婦の資格持ってるん
 だし、そう気にする事も無いわ。裸を見せる男はシンジ君一人だけとしても、同じ
 女同士なら別に問題無いでしょ」

 「……そういう事なら、いいです」

 『……でも、男の僕の場合、いくらお医者さんとはいえ、女の人に裸見られる
 のって……』 赤~

 ひたすら赤くなるシンジであった。その時の記憶が無いのがシンジにとって不幸中
 の幸いと言える。

 「いやーしかし、これもアスカの涙ぐましい教育のたまものね。何たって、あの
 レイに羞恥心持たせる事に成功したんだから。良かったわね、アスカ」

 「ううう、何か方向性が違うような気がする……」

 「ちなみにレイ、シンちゃんがレイの裸を見たいって言ってきたらどうするの?
 見せるの?」

 「はい、喜んで」

 「ええっ!?」

 「ちょ、ちょっとレイ!」

 「あはははは! 良かったわねシンちゃん、レイはいつでもOKだって」

 「ミサトさん~~~……」

 「ミサト! あんたどっちの味方なのよ!? リツコと一緒になって
 私たちをからかってる暇はないはずでしょ! 今はリツコをどうにか
 するのが先でしょうが!!」

 「あ、そ、そうだったわね。つい……」

 「ついじゃないわよ!」

 「分かってるわ。ちゃんとリツコにはきっちり責任を取らせるから、そんなに
 怒んないでよ。リツコ、覚悟しときなさいよ、今回の事はさすがに揉み消せない
 から、碇司令に報告する事になるわ。しばらく謹慎は確実ね」

 「何よミサト その言い方は? ミサトの立てるチャランポランな作戦のフォローに
 私がどれだけ苦労してるか知ってるの? 良くそんな事が言えるわね」

 「何エラそうな事言ってるのよ。リツコこそ、私がリツコの非常識な実験の数々の
 後始末にどれだけ苦労してるか知ってるの? おまけに、よく私達を実験材料に
 するし、ほんといい迷惑よ」

 「何よ、ミサトだって……」

 「リツコだって……」

 「……それで、責任の所在ははっきりしたのかね?

 「まったく、困った事をしてくれたものだ

 「い、碇司令!?」

 「副司令まで……」

 「と、父さん!?

 「碇司令?」

 「い、いつの間に……」

 「……大体の事は把握している。君達はもっと自分の立場を考えて行動してもらい
 たいものだ。

 「まったくだな。これでは安心して留守を任せる事もできん。以後謹みたまえ。
 いいな、二人共」

 「は、はい」

 「申し訳ありません」

 「……葛城三佐、並びに赤木博士、減俸三ヶ月

 「な!?」

 「ちょ、ちょっと待って下さい碇司令! 今日の事は私じゃなく
 下っぱーズ……い、いえ、部下が勝手にやった事で私は何も……」

 「リツコ、なに政治家みたいな事言ってるのよ。部下のやった事ならちゃんと責任
 取りなさいよ。それより碇司令、私は今日は非番だったんです。でもネルフが心配
 でこうしてやって来ただけです。言わば、リツコと部下の問題に巻き込まれた
 だけです。それなのに、なぜ私まで処罰されなければいけないんですか?」

 「……葛城君、ネルフにとって最も大切なものは何かね?」

 「え? ……と、それは……」

 「無論、エヴァンゲリオンとそのパイロット達だ。葛城君は作戦部長として、並び
 に保護者として、パイロットの保護を最優先に考えねばならん。なのにこの有り様
 だ。むしろ、軽い処分と言えるのではないかね?」

 「う……」

 「もし今、使徒が攻めて来たらどうするのかね。この怪我で出撃させるとでも
 言うのかね?

 「う、うう……」

 『何よ、昔は大ケガしてるレイを平気で出撃させようとしたくせに……』

 「何か言ったかね?」

 「い、いえ、何も」

 「そうか。では後程、今回の件に関しての報告書を提出したまえ」

 「は、はい、分かりました」

 「では、ゆっくり傷を治したまえ」

 そう言って、ゲンドウと冬月は部屋を出て行こうとする。

 「あ、あの……父さん」

 「何だ?」

 「あ、あの……その……部屋……変えて欲しいんだけど……」

 「なぜだ?」

 「だ、だって……包帯してるとはいえ、みんな裸なんでしょ……僕、一応男だし……
 周りみんな女の人だし……色々と問題あるんじゃないかと思って……」

 「ふむ、確かにシンジ君の言う通りだ碇。シンジ君は隣の病室に移した方がいいな」

 「いや、その必要はない

 「ん? なぜだ、碇?」

 「シンジ、照れる必要はない。葛城三佐と赤木博士が邪魔なら素直にそう言えば
 いい」

 「は?」

 「早速二人には隣の病室に移ってもらおう」

 「碇……お前、何を考えている?

 「ふっ……冬月、初孫は思ったより早く見られそうだな

 「な!?」

 「ふっ。シンジ、頑張れよ

 「な、な、何言ってんだよ父さん!?」 赤

 「孫って……」 (アスカ)

 「碇司令の孫……碇くんの子供……それって……」 (レイ)

 「問題無い」

 大ありだバカ者!! お前という男はまだそんな事を!?
 だいたいお前は……!!」

 「冬月、孫はユイに似てるかも知れんぞ」

 「う」

 「早く見たいと思わんか?」

 「うう…… はっ!  碇!! そういう問題ではない!! 来い!
 お前には再々教育が必要だ!!

 「痛たたたた……冬月、耳を引っ張るな」

 「ああ、それとシンジ君、病室の手配はしておこう、安心したまえ」

 「ありがとうございます」

 「碇くん、私も同じ部屋がいい

 「えええっ!? 綾波!?」

 「ふっ。レイ、良く言った

 「お前は黙ってろ!!」

 「レイ! 何でシンジと同じ部屋に行こうとするのよ!? 深い意味は
 無いわよね!! 無いわよね!!」

 「え? 私は碇くんと同じ所にいたいだけ。だから碇くんが隣の病室に移るのなら
 私もそうしようと思って」

 「本当でしょうね?」

 「? うん、ほんとよ。アスカも来るんでしょ?」

 「あ、当たり前じゃないの」

 「二人とも気持ちは分かるけど、それだとシンジ君が部屋を変わりたいと言った
 意味がないわよ。副司令、ここはやはり保護者として三人だけにはできないので
 パジャマを用意してもらえないでしょうか? それと、ついたてでもあればシンジ君
 も落ち着くと思うのですが」

 「ふむ……確かにそうだな。分かった、君の言う通りにしよう」

 「葛城君、余計な事はせんでいい。減俸六ヶ月

 「ええ!? そ、そんな……」

 「碇! 処分に私情を挟むな!!」

 「では、ついたての位置は

 ミサト リツコ ■ アスカ シンジ レイ

 にしろ」

 「それではついたての意味が無い。

 ミサト リツコ アスカ レイ ■ シンジ

 に決まっておる」

 「しかし、それでは初孫が……

 「まだ言うか!! いいから来い! 葛城君、後は任せた。ゆっくりと怪我を
 治したまえ」

 そう言って、冬月はゲンドウの耳を引っ張り、部屋から出て行った。

 『良かったわねミサト、シンジ君が別の病室にならなくて』 ひそひそ

 『ま、ね。私達の知らない所で進展があったらつまらないものね。……それにしても
 減俸三ヶ月……車のローンが……酒代が……とほほほほ……ああ、この怒り
 どこにぶつければいいのよ……』

 「それなら問題無いわ。下っぱーズの連中がいるじゃない」

 「確かにそうね。あの連中でウサ晴らしする事にするわ」

 「ふっふっふっ……楽しくなりそうね」

 「ええ、まったくね。ふっふっふっ……」

 怯えるシンジ達をよそに、ミサトとリツコは怪しい笑いを続けていた。
 それは、悪魔の笑い声と言っても差し障りがないほどであった。



 数日後、余程恐ろしい目にあったのか、下っぱーズの連中は全員髪の毛が真っ白
 になり、ミサトとリツコに絶対服従を誓うのだった。

 なお、人間爆弾が仕掛けられたかどうかについては、ミサトとリツコは最後まで
 ノーコメントで通したという。


 新世紀エヴァンゲリオン-if-

 第十四部 雪と白衣と男と女 

 Special Thanks! タイトル命名 伊藤(仮)さん


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