今回の話は本来予定に無かったのですが、続きを希望する
 意見が寄せられたので、急遽作成したものです。


 新世紀エヴァンゲリオン-if-

 第九部 追加編


 レイ、アスカ、ヒカリの三人は、お弁当を食べた後、仲良くおしゃべりに興じて
 いた。

 「あ~、なんか最近ヒマね~。使徒も来ないし~」

 「いい事じゃない。その方が平和だし、何より碇くんが苦しまないで済むわ」

 「そりゃそ~だけどさ~、毎日毎日、訓練訓練テストテスト……たまにはこう、
 ぱぁーっと実弾撃ちたいわね

 「なんだかアスカ、相田君みたいな事言ってるわね」

 「ちょっとヒカリ、あんなのと一緒にしないでよね!

 「ごめんごめん」

 「でも、相田くんってどうして碇くんに色々してくるんだろう? 友達のはずなの
 に……」

 「まぁ、あいつなりに複雑なんじゃないの? いつも一緒にいるシンジや鈴原が
 エヴァのパイロットなのに、自分一人違う事とか、シンジが私やレイと一緒に暮らし
 てる事とか……。ま、気持ちは分からなくもないけど、やっぱ実力の差ってやつよ
 ね。分をわきまえてもらわないとね~」

 「それはちょっと言い過ぎなんじゃ……。で、その相田君や碇君はどうしたの?
 さっきから姿が見えないけど……。鈴原一人だけ教室に残ってるなんて珍しいわね」

 「シンジならあそこよ」

 「え?」

 ヒカリは、レイとアスカが窓の外を見るように言うので外を見る。すると、グラウンド
 を数人の男子に追いかけ回されているシンジがいた。

 「あ、今日も追いかけっこやってんだ」

 「そ。まったく相田を始めとするうちの男どもったらしつこいんだから」

 「いいの? 助けなくて?」

 「私は助けに行きたいんだけど……」

 「でもレイ、三人で決めた事よ」

 「でも……」

 「ねぇ、何の話?」

 「実はね、前にシンジと私とレイの三人で対策を立てたのよ。私たちがかばうと
 ますますシンジの敵が増えるみたいだから、よっぽどの事が無い限り手出ししない
 って事にしたのよ」

 「でも何かあったらすぐに助けに行けるように、いつも目で追ってるの」

 「ふーん、そうだったんだ。ま、碇君とそう決めたのならそれが一番いいかもね」

 「うん。それに碇くん、おかげで足が速くなったって笑ってた」

 「そう言えば余裕で逃げ回ってるわね。なんか楽しんでるようにも見えるし……」

 「ま、本人は必死みたいだけどね。何しろ捕まったら何されるか分かんないしね。
 でも、ま、シンジは結構何でもできるし、あいつらごときには捕まらないわよ」

 アスカはまるで自分の事のように嬉しそうに言った。

 「でも、なんか前より追っかけてる人数減ったわね。気のせいかしら?」

 「ああ、それはね、前にレイが相田たちにキツい事言ったのよ」

 「きつい事?綾波さんが?何だか想像できないわね。何て言ったの?」

 「私はただ、

 ”碇くんにひどい事する人たちは嫌い

 って言っただけだけど……」

 「うわ……それ、きついわね~」

 「でしょー」

 「? そうなの?」

 「あのね、レイ、どうやら、私やレイのファンクラブがあるらしいのよ」

 「ファンクラブ?」

 「そ、そいつらどうやら、シンジから私やレイを守ろうとしてるみたいなのよ。
 なのにあんな事言うもんだから、髪の毛真っ白になってたでしょ。あいつら
 にとっては一番聞きたくないセリフなのよ」

 「でも、アスカだって同じような事言ってたし、泣きそうになってる人
 いたわよ」

 「へー、アスカもねー、へーー」

 「ち、違うのよヒカリ……あ、あれは、そのー、つまりー……う~~

 アスカは何とか言い訳を考えようとしたが、レイの言うように、シンジを守って
 数人の男子を絶望のどん底に叩き落とした事は事実なので、どう言い訳して
 いいのか分からなかった。

 「それに私、たくさんの人に優しくしてもらうより、碇くん一人に優しく
 してもらう方がずっといい

 「あのねレイ、そういう事は思ってても口にしないものなの(特にシンジの前では)
 誰かの耳に入ったらまたシンジが追いかけ回される事になるんだから。分かった
 わね、レイ」

 「……うん。でもアスカだって同じなんでしょ?

 「だ、だから~

 「ふふふ、相変わらず仲がいいわね。じゃあ、アスカや綾波さんに嫌われたくない
 から、碇君を追い回すの止めたって事ね」

 「それがねー、どうもそれだけじゃないみたいなのよ」

 「え?」

 「ほら、私は認めてないけど、シンジのファンクラブっていうのがあるでしょ」

 「ええ、なんか結構、碇君って一年生を中心に人気あるみたいね」

 「そいつらが結構勢力持ってて、男子に圧力掛けてるみたいなのよ。で、私やレイ、
 他の女子たちに嫌われるくらいなら、シンジと仲良くした方が得、とでも考えてる
 みたいね。だいいち、あんな風にシンジを追い掛け回してるって事は、自分は
 もてません、って言ってるようなもんだしね。そのうちいなくなるわよ。
 ……あれっ? シンジは?」

 「靴箱の方に入っていったから、戻ってくると思う」

 レイがそう言うと、息を切らしたシンジが入ってきた。

 「はぁ……はぁ……まったく……はぁ……毎日毎日……はぁ……飽きないな……
 ケンスケのやつ……」

 「まぁ、シンジがもて過ぎるんが悪いんじゃ自業自得やな。で、シンジ、ケンスケは
 どないしたんや?」

 「さぁ? 逃げてきたからね、良く分かんないよ」

 「あ、碇くんすごい汗。はい、ハンカチ。あ、いい、私が拭いてあげる

 「あ、綾波、ありがとう……」 真っ赤

 レイはシンジの額の汗を嬉しそうに拭き取っていった。

 シンジは赤くなりながら、どこか嬉しそうにしている。その時、ふっとジト目の
 トウジに気付く。

 「あ、しまった……」

 「シンジ、お前なー、自分で敵作ってどないするんや?

 トウジはやれやれといった感じで呆れていた。実際、シンジの体には、殺意の
 こもった視線が降り注いでいた。

 「そーよバカシンジ! 私がどれだけ苦労してると思ってんのよ!?
 レイもレイよ、そういう事は止めなさいって言ってるでしょ!!」

 「でも碇くん、汗かいてたから……」

 『あ、まずい、この展開だとアスカが……』

 「ハンカチくらい私だって持ってるわよ。シンジ! ここに座んなさい! 私が
 拭いてあげるから!!

 『ああ、やっぱり……周りの視線が……』

 「で、でもアスカ……」

 「なによバカシンジ!? 私には拭かせないってわけ?」

 「…………お願いします」

 「分かりゃいいのよ分かりゃ。ほらレイ、どきなさい。今度は私の番よ」

 「二人で拭けばいいじゃない」

 レイは一切毒気は無いようだったので、アスカはレイに張り合うようにシンジの汗を
 拭き取っていく。クラスの男子全員のこめかみがピクピクしている。

 「あ~あ、今日もまた、いつものパターンね」

 「学校でこれやさかい、家では何をしとる事やら」

 「ほんとよね~」

 「ト、トウジ~~~

 「ま、シンジ、今のがクラス全員の率直な意見やと思とって間違いないわ。ま、当分
 食後の運動には困らんな」

 「うう…………」

 クラスでいつもの光景が繰り返されている頃、ケンスケを始めとする数人の男子たち
 が、人気の無い使われていない教室に集まっていた。

 「……しかし、シンジのやつ、随分と足が速くなったな。捕まえられなくなった」

 「さすがエヴァのパイロット。ネルフでの訓練って体術も入ってんのかな」

 「単に必死で逃げてるだけだろ」

 「しかし……人数が減ったな

 「確かに。以前はこの数十倍はいたのに……」

 「裏切り者が多いからな」

 「ああ、シンジに敵対して女子に嫌われるよりは、仲良くして綾波や惣流のそばに
 いたいって奴らが大半だからな」

 「情けない。シンジを倒せばそれで済むものを……」

 「しかし、現状は我々に不利だ」

 「女子はミーハーだからな。世界を守った英雄ってのに弱いからな……」

 「ここは我々も一時解散するか?」

 「ああ、だが地下に潜るだけだ。バレンタインデーやホワイトデー、体育祭、
 文化祭、誕生日などのイベントがあれば、すぐ再結成する」

 「恐らく、そういったイベント時には同志が大勢協力してくれるはずだ。それまで
 各自、力を貯えておいてくれ。一つ言っておくが、物を隠したりするような
 陰湿なイジメは絶対にするなよ。そういうのは男のクズだからな」

 「もちろんだ。やる時は正々堂々、力でいく」

 「よし。それでは、我々が再び再結成される日まで……」

 「ああ、裏切り者には死を、だからな」

 「お互いにな」


 こうして、シンジを亡き者にする会の幹部たちは解散した。

 しかし、シンジの毎日の行動がアレなので、再結成される日はそう遠い事ではない事
 は、容易に想像できた。

 がんばれシンジ! 男子は全て君の敵だ!


 「僕が何をしたって言うんだよ~~~」


 お前が悪い!! (全ての男子の意見。読者もか?)


 <おわり>


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